9話
「俺達が逃げたらこの村の人達があぶない。だから逃げない。ルナは逃げてもいいぞ」
和明はベリアルの放つ桁外れの殺気に額から濁流のような汗を流す。ルナは無表情に言った。
「……私も戦う」
ベリアルは二メートルをゆうにこす体で四本足で突進してきた。避ける二人。ベリアルは二階建ての建物にぶちあたった。倒壊するその建物。ベリアル平然と立ち上がると和明に接近し右腕を振り下ろした。剣で受け止める和明。あまりの威力に和明の足が地面に軽くめり込んだ。
「っ!」
足をとられ動き遅れた和明に左手を左から右にはらうベリアル。その左手をルナが大剣で防いだ。しかしベリアルの強大な力に吹っ飛ぶルナ。
「……う!」
その隙に和明は足を地面から抜き、剣でベリアルを五回切った。しかしあまりの皮膚の硬さに剣が弾かれた。
ベリアルは右手の爪で和明を突いてきた。横っ跳びでさける和明。
ルナがジャンプしてベリアルに大剣で切りつけた。少しだけくいこんで少量の血がでる。
和明はルナの大剣の腹を足場にしジャンプした。そしてベリアルに近づき剣をベリアルの目に突き刺した。叫び声を上げるベリアル。両手を振り回し暴れるベリアル。
「ちったあ効いたか?」
和明はさらにベリアルの開いた口深くまで剣を刺した。血を吐き出すベリアル。ついには膝をつき倒れた。
夕日が眩しい時間帯。村長に依頼書にサインをもらう和明。村長は真剣な声で言った。
「ありがとう。君達のおかげで村は救われた」
依頼書をしまいながら和明は答えた。
「それはよかった。ただ予想外のこともあったがね」
{つづく}