終話
和明は膝元までの浅いムルーの泉に入り赤いクリスタルを拾った。クリスタルはなぜか温かった。地面に魔源の石を置き剣を振り上げた石が自分の危機を悟ったのかぶるぶると奮えだした。そこでルナとミルキーがクリスタルの端を押さえた。和明は剣を振り下ろした。「バキ!」と音がしたかと思うと悲鳴に似た叫び声が一瞬聞こえた。
「よし、後はルーノの森に行くだけだ」
†
「確かに魔族が一人も居ないな」
和明達は魔境に入り一人の魔族とも出会う事なくルーノの森にやって来た。和明達は草木を掻き分け不思議な扉を探す。三十分ぐらいで森の奥深くに入り込むと和明は忘れられない扉を見つけた。この異世界にやって来た扉だった。
「あれだ!」
駆け寄ろうとした和明だったが。
「待て」
と扉の後ろから赤い肌をした女が言いながら現れた。整った顔立ちでグラマーな体型の持ち主で鉄製の胸当てを着けている。
「魔族はルミエラ以外魔界に消えうせたはず……つまりお前は……」と和明。
「そうルミエラだ。よくも我が同胞を消してくれたな。ノーマスも敗れたらしいな。この扉を潜りたければ我を倒すのだな」
そう言ったルミエラは和明目掛けて走った。手には両刃の剣が握られている。和明に切り付けるルミエラ。和明は瞳を閉じてルミエラの攻撃をかわし反撃に横切りを放つ。ルミエラはその一撃を防御しルミエラに迫っていたミルキーに突きを穿つ。ミルキーはハンマーでそれをガードする。ルミエラは
「解魂」
ルミエラの剣先を炎が包む。ミルキーがハンマーでルミエラの剣をを打つ。
「くっ!」
ルミエラの体にまで電流が流れたのだろう動きが鈍くなった。ルナがルミエラの左腕を切り飛ばした。
「ぐわー!」
血をほとぼらせ沈痛な悲鳴を上げるルミエラ。彼女の胸を和明の剣が鎧ごと貫いた。
「ぐはっ!」
ルミエラは血を大量に吐くと仰向けに倒れ絶命した。和明はルミエラの胸から剣を抜き胸の中にしまい懐かしい扉に近づきドアノブを回し開いた。和明の眼前に広がっていたのはサラリーマンと思える人々が行き交う歩道だった。ルナが
「……和明は行っちゃうんだよね」
「ああ」
和明は頭を掻きながら答えた。
「……だったら私も行く。こっちの世界には身内は一人もいないもの」
「ルナちゃんが行くなら私もついていくわ。三年前に私の最後の血縁者の母も死んじゃたしね」
ルナとミルキーはそれぞれ意思を示した。和明を先頭に三人は不思議な扉を潜っていく。そしてその扉は閉められた。
{おしまい}