58話
火龍を倒し気分が高揚していた和明は泉に近づき足を踏み入れようとした時、耳元で囁かれた。
「動くと殺すぞ」
和明は瞬間移動で距離をとった。泉の前には赤い肌をしていて白い角の生えた魔族が立っていた。手には突剣が握られている。
「誰だ?」
和明は尋ねた。魔族は「ククク」と笑うと
「我はクリスタルの番人、上級魔族ノーマス。お前は知っているぞブードゥーを倒した男だな。ブードゥーは旧知の仲だった。今日はそのともらいをしよう」
ノーマスは駆け和明に五度突きを放った。全てかわした和明は最後の突きをバックステップで避けた。それを見たノーマスは「解魂」と言った。すると突剣が伸びた。和明の服に触れたと同時に瞬間移動した。ノーマスの背後に回った和明は右斜め上からの袈裟切りを放つ。しかしノーマスはそれに反応し受け止める。ノーマスのスピードが徐々に上がっていく。和明は幾度も瞬間移動を織り交ぜながら攻撃したがまるで和明の行動をよんでいるかのように反応された。動揺する和明。ルナが解魂しノーマスを切り付けるがサイドステップで避ける。ミルキーのノーマスを狙った一撃も空振りに終わった。
「お前達は魔気を知らないようだな。お前らは神気と呼ぶらしいが」
「神気ってなんだ」
和明は息切れ切れに質問した。和明の背後に回ったノーマスは和明の首をチョップした。「ゲフ」
和明は吐血し意識を失いそうになりながらも剣を杖にして立ち上がった。
「神気と魔気は同じものさ。私のペットの火龍の仕返しをさせてもらうよ」
和明は絶対的な実力さを痛感した。今のままでは勝てない。和明はルナとミルキーに
「一旦退こう」
ノーマスは高笑いをしながら和明の心臓を突剣で貫いた……と思いきやワープしてかわしルナとミルキーを連れ瞬間移動でその場を後にした。
{つづく}