56話
和明達は前回の同じ客室でもてなされた。紅茶のような飲料を飲みながら和明はムーフラに聞いた。
「魔族が多くて魔境に潜入出来ないのですが何か策はないですか?」
ムーフラは顔をしかめた後
「方法が一つある。とても危険を伴うかもしれんが……」
和明はソファーから身を乗り出し尋ねた。
「どんな方法ですか?」
「聖地の中心部にムルーの泉がある。そこの泉には魔源の石と呼ばれるクリスタルがあるのじゃ。その石を破壊したなら魔族の大半は消え去り魔界に戻ろう。魔族の殆どはあのクリスタルのお陰でこの世界に存在しておるのじゃ」
和明は首を傾げながら
「魔族の大半?」
「そうじゃ魔族の王ルミエラ以外はじゃ」
和明はさらに質問する。
「なぜ?」
「ルミエラは強大過ぎる自身の魔力を持って最初にこの世界に現れた魔族なのじゃ。そののちクリスタルを作り同胞を呼び寄せたのじゃ」
和明は立ち上がり
「ありがとうな、ムーフラ。聖地のムルーの泉に行ってみるよ」
「しかし、用心することじゃ。大切な物を隠しているぐらいじゃから何者かが守っておるじゃろう」
ムーフラは警戒するよう訴えた。和明達はムーフラの豪奢な館を出て聖地へ向かった。
{つづく}