54話
和明達は埃一つ無い瀟洒な客間に案内された。横長なソファーとテーブルが中心を陣取り河原の風景画が額縁に入れられ壁に飾られている。部屋の角には花瓶に注された赤い花が置かれ部屋の雰囲気を明るくしている。和明達はソファーに腰を落ち着けた。高級なソファーなようでとても柔らかく座り心地が良い。「コンコン」とノックする音が聞こえた。
「はい」
と和明。すると扉は開け老人が杖をつきながら入って来た。長い銀髪と腹まで伸びた銀色の髭を生やした人物だった。
「はじめまして、お待たせしてすみませんね」
「いえいえ。こちらこそいきなり押しかけてすみませんでした」
賢者と呼ばれる老人ムーフラの謝辞にミルキーが言葉を返す。ムーフラは和明達の向かいのソファーにゆっくり着席した。今回は古今東西の広い見識を持つと噂されるムーフラにあることを尋ねに来たのだ。和明は早速本題をきりだした。
「異世界について伺いたいんですが」
ムーフラは「ふむ」と言いながら顎髭をさすり
「私に答えられる知識があるかどうか……」
「そうおっしゃらずに教えてください。異世界へ行く方法を知りたいんです」
和明の真剣な口調にムーフラはうなづき話し始めた。
「ああ、それなら聞いた事がある。魔族が住む地、魔境にあるルーノの森の秘境に不思議な扉があるという……その扉はなんでも異世界に通じているとか」
和明は喜び「やった!」と言ったがルナとミルキーは複雑な顔をしていた。
{つづく}