52話
和明の腹をラーズグリズリーの鋭い三本の爪が襲う。ルナが剣でそれを遮った。
「……大丈夫?」
「ありがとう、助かった」
その隙にミルキーがハンマーでラーズグリズリーの頭部を強打した。ルナは解魂していたらしくバチバチとラーズグリズリーを雷が帯びた。ラーズグリズリーの動きが鈍くなる。
「和明、ルナちゃん好機よ」
和明はラーズグリズリーの胸に剣を深く突き刺しルナはラーズグリズリーを十文字に切った。しかしラーズグリズリーの負傷した部分はみるみるうちに回復していく。並大抵の相手ではなかった。さすがにAランクの依頼だけはあった。そんな時ラーズグリズリーの背後の部屋から声がした。「モストロ……もういいわ。その人間達を通しなさい……」
モストロと呼ばれたモンスターは体を隅に寄せ道を開けた。和明達はモストロが守備していた扉を潜った。そこには大きなてんがい付きのベットに仰向けに寝ているラーズグリズリーがいた。
「私を討伐に来たのね。モストロは私の分身なの……だから不死なの……でもわ、私は死ぬ寸前なの……うぐっ」とラーズグリズリー。
「病気なのか?」
と和明はベットに近づきながら尋ねた。窓は砕け地面や壁は崩れたり亀裂が入っている。広い部屋だ。辺りからは獣の臭いがする。ラーズグリズリーは苦しみながら
「不治の病よ……。うぐぐ。ぐわああ! うぐ」
とそこでラーズグリズリーは目をカッと見開き痙攣すると動かなくなった。享年三十歳だった。帰り道にモストロの姿は無かった。本体が死んだ為消えたのだろう。
{つづく}