5話
髭面の大男は斧で縦切りをはなった。それを凄まじい速度でかわす和明。和明は大男の後ろに立ち剣先を大男の背中に軽く当てた。
「オッサン、まだやるかい?」
「ちっ! わかったよ」
剣を下に向ける和明。髭面の大男はその隙を逃さず斧を振るった。焦る和明。
「あ、やべ!」
鉄と鉄のぶつかり合う音が響いた。大男の斧を絡まれていた美少女が体格に似合わない大剣で防いでいた。
美少女は言った。
「……油断大敵」
髭面の大男は言った。
「二対一か……不利な戦いはごめんだ」
そういうと街中を走って逃げて行った。
ここは宿屋。二階建ての建物で内装は綺麗に掃除されている。埃一つない。入口近くのレジで和明は一日泊めて欲しいと頼んでいた。
「って、なんでお前までいるんだ!?」
後ろを見て怒鳴る和明。そこには髭面の男に絡まれていた小柄で髪が背中辺りまである美しい容姿の女の子がいた。
「……行くとこない」
ため息をつく和明。しかたなく店員にもう一部屋借りる手続きをする。
宿屋の部屋には光りを燈すランプ、柔らかいベットと机と椅子が置かれていた。
「だからなんでこの部屋にいるんだ!?」
「……話がある」
ベットに座った和明は学ランを脱ぎ椅子にかけた。
「話って?」
「……ついていっていい?」
「うーん。他にあてはないのか?」
「……ない」
腕を組んで考えこむ和明。
「わかった。いいよ」
和明に抱き着く女の子。和明は慌てる。
「お、俺は和明っていうんだ。お前名前は?」
「……ルナ」
「そうか。じゃあもう晩いから寝よ」
そういうと和明はルナを部屋から出し鍵を閉めた。そしてランプの火を消し布団を被った。
翌日の朝寝苦しさに和明は目を覚ました。(なんか重い……)
和明は視線を下に向けると布団を被ったルナが和明の上に乗っていた。
「っておい! なんで乗ってんだ!」
和明の大きな声にルナは目を覚ました。彼女は目を擦りながら眠たそうな顔をしている。和明はルナを持ち上げるとベットから下ろした。
「ルナ、どうやって入って来たんだ?」
ルナはドアを指差す。そこには無残に壊れた扉があった。二人は宿屋の店員に扉を壊したことでこってり怒られ、弁償金を払って宿屋を後にした。
{つづく}