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4話

 今は昼過ぎ。

 和明が投獄された国は戦の勝利でどこもかしこもパーティーがひらかれていた。そんな騒がしい街を和明は歩いていた。


「あったここが魔魂屋か」


 魔魂屋と書かれた看板を見つけた。なぜ、この世界の文字が読めたり言葉を理解できるのか和明は疑問に思った。和明は魔魂屋の玄関に近づいた。そしてドアノブを回し中に入ると中は薄暗く、机と二つの椅子と水晶玉が机に置いてあるだけの店だった。


「へい、いらっしゃい」


 怪しげな雰囲気の店員が和明に話しかけてきた。


「魔魂を開化させたいんだけど……」


「じゃあ、椅子に座ってこの水晶玉に両手で触れてくれ」


 和明は椅子に腰掛け両手で水晶玉に触れた。店員は反対側の椅子に座った。水晶玉は青色から金色に変わり金色に輝き始めた。薄暗かった室内が金色に染まる。


 店員は言った。


「後は己の魂に打ち勝つだけだ」


「魂に? 勝つ……」


 そこで和明は意識を失いテーブルに突っ伏した。


 次に和明が見たものは数百メートルかくの白い箱型の部屋だった。辺り一面白い。和明は立ち上がると人が居ることに気付いた。その後ろ姿は見覚えがあった。


「もう一人の俺?」


 後ろ姿の人物は振り反った。その人物の容姿はどこから見ても和明だった。


「やっと会えたね」


「お前がもう一人の俺?」

「そうだよ。これを渡しておくよ」


 もう一人の和明は剣を自身の胸から引き抜き和明に向かって細身の剣を投げてきた。慌ててかわす和明。剣は地面に突き刺さった。和明は白い地面から剣を抜きもう一人の和明に剣先を向けた。もう一人の和明は言った。


「戦うんだね僕たち……」


「魔魂を手にするためにはお前を倒さなくちゃならない」


 そういうと和明はもう一人の和明に全力で近づき横切りをはなった。かわすもう一人の和明。和明は自身の身の軽さに驚いた、まるで自分の重さが一枚の鳥の羽のように軽い。もう一人の和明は髪をかきあげながら言った。


「驚いたようだね」


「どうなっているんだ」

 和明は自分の身の軽さに驚いていた。


「それはその魔魂の能力さ。重力を無視できるんだ」


 和明は剣を中段に構えながら言った。


「重力を無視?」


 もう一人の和明は胸に右手を持っていきまた何かを引き抜いた。それは黒い細身の剣だった。


「条件は同じだよ」


 そういうともう一人の和明は一瞬で和明との距離をつめ剣を下から切り上げた。切り結ぶ和明。力は拮抗していた。和明は右斜め上からの袈裟切りをしかけた。それを黒い剣で受け止めるもう一人の和明。それから幾重にも切り結んだが決着はつかず、二人は距離をとった。もう一人の和明は言った。


「力も能力もなにもかも同じなら勝負はつかないよ」「どうやってこんなやつ倒せっていうんだ? お前はもう一人の俺なんだよな?」


「そうだよ」


 和明は左手を前にだし剣を突きたてた。


「くっ!」


 和明はもう一人の和明を見た。するともう一人の和明も左手から出血していた。


「自殺行為だよ、イテテ」


 和明は剣先を自身の腹に向けた。そして、勢いをつけ突き刺そう――


「待った、僕の負けだ」


 もう一人の和明は剣を白い地面に置き両手を挙げていた。


「やっと……勝ったぜ」


「機会があったらまた会おう」


 和明ははめまいがして膝を着いた。剣を落とす。そして意識を失った。


 目を覚ますとそこは薄暗くこ汚い魔魂屋の中だった。

 店員が言った。


「あんた、あんまり長いこと意識を失ってたから心配したよ。魔物は倒せたのかい?」


「魔物? 戦ったのはもう一人の自分だったよ」


 店員は驚いた口調で言った。


「もう一人の自分? そんな人初めてだ」


「そうなのか?」


「うん。料金は金貨一枚だよ」


 和明は料金の金貨一枚を店員に払って店を出た。外は夕日が辺り照らし一日の終わりを示していた。相変わらず街中はタイザス国に勝利したことでもちきりのようであった。酒屋からは騒がしい話声が聞こえてきた。


 宿屋の看板を探し和明は街中を歩いていた。すると武器屋の前で人だかりを見つけた。


「お嬢ちゃん! 人にぶつかっておいて謝りもしないのか?」


 鎧を着た髭面の大男が肩に斧を置き小柄な女の子にすごみをきかせていた。女の子は小柄で端整な顔だち、赤い瞳を持ちスレンダーな体型をしていた。


 和明はは人垣をかきわけ大男の前に立ちはだかった。


「それぐらいにしとけよ。オッサン」


 和明を見た大男は不機嫌そうに言った。


「邪魔するきか小僧!」


 大男は斧を横なぎにはらった。和明はしゃがんで斧をかわしながら胸に右手を持って行き細身の剣を引き抜いた。



{つづく}

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