2話
ここは豪華な造りの王の謁見の間。大きなシャンデリアが幾つもあり天井を華やかにしている。
何段か高い所にある椅子に腰掛けたルーブラ王は言った。
「セブラスよ、なぜこんな大事な時期に城から逃げ出したのか? 士気にかかわるではないか!」
後ろ手に手錠をされ、膝をついた和明は言った。
「だから、俺はセブラスなんかじゃねえ! 和明だ!」
王は怒った口調で言った。
「わしにまでそんな低俗な嘘をつくのか!」
「だから、違うもんは違うんだ!」
「ええい不愉快じゃ。お前のようなやつは我が子でもなんでもない! お前に死刑を言い渡す。処刑日は三日後じゃ! それまで牢屋に入れておけシュナイダー!」
「はっ!」
立派な体格の兵士は和明の手錠と繋いだ鎖を引っ張り和明を謁見の間から引っ張り出した。
和明は言った。
「痛いってば!」
シュナイダーは言った。
「なぜ、勇敢だったあなたは国を捨てられたのですか?」
「だから俺は王子じゃないっての!」
シュナイダーは悲しそうに言った。
「もう、そのような言い訳は聞きたくありません」
和明はシュナイダーに引き攣られ豪華な城の内部を階段を下り下へと進んでいく。地下にくると粗雑な造りに変わった。ランプの光だけのため薄暗い。地下を少し歩くと牢番がいた。 シュナイダーは言った。
「カルツ、王子のことは頼んだぞ」
「はい! シュナイダーさん」
カルツに連れられ一番手前の牢屋に和明は入れられ手錠を外された。牢番から嫌な臭いが立ち込めていた。牢屋にあったのは便器とボロボロのベットの二つだけであった。
和明は自分の不幸を呪っていた。あの時、不思議な扉をくぐらなければ死刑にならなくてすんだのにと。
和明はベットに座り頭を抱えた。
そんな時牢屋の小さな隙間から何かが差し入れられた。
「セブラス様、昼食です。こんなものしかありませんが召し上がってください」
和明が目をやると牢番のカルツが昼食を差し入れていた。盆の上には一枚の食パンと冷めたスープがのっていた。
とても食べる気になれない和明はぼろいベットに横になり涙を流した。
{つづく}