16話
魔族のルークは槍を持っていない手で指を鳴らしながら喋った。
「我がしもべ達よ本性を顕せ!」
すると魔族を目にいれて騒ぎ逃げ惑う観客の内堂々と座っていた者達が変化し始めた。背中から黒い翼が生え顔は虎のように変わり手足が毛深くなった。まるで虎に羽を生やしたようなモンスター達だった。八匹いる。モンスター達は観客達を襲撃し始めた。兵士達が騒ぎを聞き付けコロシアム内に入って来た。血を流し倒れ伏す観客。それらを助けようと各々魔魂を取り出し決闘する兵士達。ルークはその様子を楽しそうに見ながら言った。
「今日この国を手に入れる。邪魔だてする奴はなぶり殺す」
剣がルークの首筋を一線する。ルークは槍で止める。
「俺がそんなことはさせない! 勝負だ!」
和明は言葉を荒げると細い剣で何度も突きを放つ。ルークは前後左右に体を動かし突きをさばく。
「和明! 腕を上げたな」
ルークは嬉々とした表情を浮かべると槍を横なぎに払った。受け止める和明。ルークの怪力に吹っ飛ぶ和明。和明は慌てて地面から起き上がろうとする。しかしルークが槍の先で突いてきた。和明は地面を転がりながらかわす。立ち上がった和明は反撃に出る。二つの足と剣を握る手に魔力を集中しルークに突進し一撃を放った。ルークは槍で受け止める。僅かにルークの槍にひびが入るが弾かれた。ルークの背後からシュナイダーが上から下に切り付けた。シュナイダーの腕も赤く光っていた。強化魔法だろう。ルークは反転し槍でさばく。また槍に負担がかかりひびが酷くなる。シュナイダーと和明は強化した攻撃を繰り返した。シュナイダーの横切りに和明の左斜め上からの袈裟切り。防戦一方に回るルーク。ルークの頬を和明の剣が僅かに裂いた。青い血がスーと流血した。その血を見たルークは逆上した。ルークの槍先が燃えだした。そして両先に刃が顕れた。ルークは和明に突きを穿ちもう反対の先の刃でシュナイダーに切り下ろした。和明は剣の腹で受け止めシュナイダーは右に跳んで避けようとしたが腹を軽く切られた。うずくまるシュナイダー。和明は汗を流しながら残った最後の力を振り絞り右手に魔力を集約し渾身の一撃を放った。それを槍で阻止するルーク。幾度にもわたる攻防の末和明の剣は真ん中から折れ、ルークの槍も二つに割れた。和明は意識を失い石畳の上に倒れた。ルークは頭を抱え言った。
「人間等に魔魂を砕かれるとわ。和明を今のうちに殺しておかなければ魔族にとって災いになるやもしれん」
ルークは俯せに倒れた和明を砕かれた槍の半分で殺そうとするも魔魂を壊されたためふらついた。
「ククク。俺をここまで追い詰めるとわ。たいした人間だ……」
†
「ウワッ!」
和明は跳ね起きた。そこは白いベットの上だった。
「ここわ?」 目を摩りながら眠そうなミルキーが話し出した。
「病院よ。和明、三日間も目を覚まさないんだもの、心配したわよ」
「そうか、ごめん」
ルナは丸椅子に座り上半身を和明のベットに寄り掛かりらして眠っていた。和明は無意識にルナの頭を撫でた。
「ところでルークと魔物達はどうなったんだ?」
ミルキーは欠伸をしながら答えた。
「ルーークわぁ逃げたわ。魔物達は私達や兵士達で倒したわ。安心した?」
和明はホッとした顔で
「ああ、もちろん」
{つづく}