14話
和明が一人控室で瞑想しているとドアがノックされた。
「和明さん、第二回戦が始まります。おいでください」
「ああ、わかった」
和明は立ち上がるとコロシアムのフィールドに向かった。通路を歩いていると担架に切り傷だらけの男が乗って運ばれてきた。その男は苦しそうに「グク」と唸っていた。
コロシアムの中心には鼻が高く美しい顔立ちの男が立っていた。その男は観客席に投げキッスを送っていた。すると観客の女達が奇声をあげ喜んだ。その男に向き合う和明。とそこへ審判がやって来て言った。
「第二回戦の第一試合を行う。セクール対和明。試合開始!」
審判は小走りで二人から距離をとった。セクールは観客に視線をやりながら喋った。
「僕は人を傷つけるのは好きじゃないんだ。潔く降参してくれたまえ……カズカキ君」
和明はムッとして言い返した。
「そっちこそ、俺に負けましたって言えよ! セクハラ野郎!」
セクールの眉間に怒りのマークが現れた。
「今なんと言ったかね」
「何度でも言ってやる! セクハラ野郎!」
セクールはそれを聞くと形相を鬼のように変え和明に接近してきた。
「僕は紳士だ! セクハラ等行うものか!」
そして右手をピストルの形にした。すると人差し指から十センチメートル程の火の玉が和明に向け発射された。和明は間一髪のところで魔魂を出し防ぐ。セクールは和明の周りをぐるぐる走りながら次々に両手から炎弾を放つ。和明は火の玉をかわしながら徐々にセクールとの距離をつめていく。
「セクハラ野郎、お前魔法使いだったんだな」
「だとしたらなんだと言うんだい」
ついに和明の間合いに入った。和明は剣のはらでセクールの頭をしばき気絶させようとした。するとセクールは胸元から金属性の棒を取り出し発現させ剣を受け止める。和明は上段から切り下ろした。棒で受け止めるセクール。その隙に和明はセクールの背後をとった。セクールは言った。
「伸びろ!」
セクールの棒が伸び和明の剣撃を止める。
「便利な棒だな、セクハラ野郎!」
セクールは和明に向き直り棒で三度突いてきた。全て避ける和明は魔力を両手に集めた。赤く発光する和明の手。和明は右上から袈裟切りを行った。棒で防ごうとしたセクールだったが強化魔法の一撃のためその棒が両断された。セクールは意識が途切れバタリと倒れた。魔魂は魂の一部であるため壊されると精神的にも肉体的にもダメージを受ける。セクールの棒がカランカランと音をさせ転がった。土煙りが僅かに舞い上がる。
{つづく}