12話
涼しい風が肌に気持ちいい午後。ルーブ国の広場に和明達三人の姿があった。
「ルナちゃんいいわよ! その調子!」
今日はミルキーに魔法を教わっていた。午前中からの練習がこうをそうし和明とルナは強化魔法を体得した。和明は右手を赤く光らせ剣を縦に振るう。ブンという凄まじい音がした。広場にいた犬を散歩する女性が空を見て叫んだ。
「赤い肌! 魔族よ!」
広場にいた人々は空を見上げた。腕を胸の前で組んだ赤い肌の男が徐々に降りてきた。
「私はルーク。皆の者、力比べをしようぞ」
騒ぎを聞き付けた三人の巡回兵が青い顔で魔魂は取り出し立ち向かう。一人目の兵士は黄色い槍をルークに向け突いた。ルークは目をつむり右に体の重心をずらしかわす。ルークは言った。
「私に一度でも目を開かせたら殺戮は止めてやろう」
そして二人目の兵士は緑色の弓で光りの矢を放った。ルークはまだ目をつむったまま矢を右手で掴んだ。槍を何度もかわしながら。三人目の兵士は日本刀みたいな刀で切り掛かった。またあっさり避ける。ルークは
「つまらん」
と言うと槍を持つ兵士を蹴りで吹っ飛ばし弓で矢を放っていた兵士に瞬時に近づくと首を右手で絞めた。そこへ刀で突きを放った兵士の刀を左手で折った。刀を折られた兵士は気を失い倒れた。弓を持つ兵士は泡を噴いた。和明はルークに向かい駆け出した。和明は重力を無視し高速でルークの後ろに回りこむと横に剣を振った。ルークは兵士を離し一瞬で和明に振り向くと胸元から黒い龍の柄が施された槍を引き抜き和明の会心の一撃を防いだ。和明はニヤリとして言った。
「目を開けたらなんだって?」
ルークは自分の行動に驚いた顔をし喋った。
「まさか、これほどの使い手がいるとわ。目を開いたうえに魔魂を使う羽目になるとわ。ハハハ、よかろう! お前に免じて今回は退いてやろう。そなたは名を何と言う」
「和明だ。ルーク」
和明は中段に剣を構え神経を集中している。ルークは「ククク」と笑うと魔魂をしまった。
「和明とやら、良い余興であった。褒めてつかわすぞ。今度は真剣に戦おうぞ。さらばだ」
ルークは翻し回転すると姿を消した。和明はそれを見ると片膝をついた。援護しようとしていたルナとミルキーが和明に近づき声をかけた。
「和明大丈夫?」
「……怪我は?」
「大丈夫だ。ただ奴の殺気に気圧されただけだ」
和明は立ち上がった。和明の額には大量の汗が滲んでいた。とそこへ数百人の兵士がやって来た。一足遅い到着だった。ミルキーが今あった出来事を説明していた。後で聞いた話だが魔族は一人、一人が一騎当千の強わ者ぞろいだとのこと。魔族はこのアルド大陸の西の上半分を支配下においているとのこと。
{つづく}