10話
和明とルナは眠気を誘う温かさのなかコースの森を闊歩していた。生い茂った木々や膝もとまで生えた草や植物が邪魔で歩きづらい。だがかれこれ一時間歩いているため二人は慣れてきて歩速が上がってきていた。
「ルナ、ガジュマルの木はあったか?」
「……まだ無い」
今回はギルドの依頼でガジュマルの実の採取に来ていた。青々とした森はどこまでも続いているように見えた。和明は木々を掻き分け進む。その後ろをルナが追う。すると開けた空間に出た。その空間は木は無く円形に草原が広がっていた。するとルナは指差し言った。
「……赤くて星型の実がある」
和明も視線を上げ星の形をした実を視界に入れた。二人は草原を走り一メートルくらいの高さの木に近づいた。そしてルナが星をもした実に手を伸ばした。その瞬間細長い枝がルナの腕に絡み付いた。そして軽々とルナを持ち上げた。
「……うわ?」
危険を察知した和明は自身の胸元から魔魂を引き出した。キラリと陽光を浴びて和明の細身の刀身が光った。和明はジャンプしながらルナの手足を縛っている枝を裁断した。支えを無くし落下するルナを和明はお姫様抱っこの形でキャッチした。ガジュマルの木には顔と口があり
「グゲゲ!」
と唸った。和明はガジュマルの木から一メートルぐらい幅をおくとルナを地べたへ下ろす。なぜかルナの頬が桃色に染まっていた。ルナは和明には聞こえない程微かな声で
「……エッチ」
和明はガジュマルの木に横切りを放った。木はバターのようにすっぱり切れた。倒れふすガジュマルの木。安心したのもつかの間、辺り一面からモンスターの叫び声がこだました。他の生息していたガジュマルの木が仲間を殺され怒ったようだ。二十本ぐらいのガジュマルの木は枝を伸ばしながら接近して来る。ルナも魔魂である大剣をひきづりながらガジュマルの木々に突進していく。枝がルナの顔を打とうと迫る。僅かに右に体を傾けかわすルナ。そして片手で大剣を振り上げ右斜め上から袈裟切りを仕掛ける。両断されるガジュマルの木。断末魔をあげる。
「グゲゲ」
和明達は十分程ガジュマルの木と乱戦した。生き残った二本のガジュマルの木はあわてふためき逃げ出した。ルナは倒れているガジュマルの木から実を引きちぎり言った。
「……依頼完了」
和明もガジュマルの実をむしり取り匂いを嗅ぐ甘いほのかな香りがした。和明は星型の尖った実の部分を一かじりした。メロンに少し塩を塗した味わいだった。和明とルナは背負っていた革の袋にガジュマルの実を入るだけ詰め込んだ。
{つづく}