1話
今の季節は秋。清涼感たっぷりの風が吹いている。
大橋和明は中肉中背の割と顔のパーツが整った美男子である。
和明は高校へ登校途中に道の真ん中に扉を見つけた。しかし、この扉は他の通勤途中のサラリーマンや通学中の学生には見えていないようで他の人は興味を示さない。しかもその扉にぶつかった人々はまるで扉をすりぬけるように歩いていく。
和明は辺りをキョロキョロしながら古く大きな扉を押し開き中に入っていく。
眼前に広がっていたのは中世ヨーロッパ風の建物や歩く人々達だった。
辺りの景色にほうけていると和明がくぐった扉は姿を消していた。
「な!」
焦った和明は辺りをくまなく探したが何も見当たらなかった。
気をおとしがっくりうなだれている和明の肩が叩かれた。
和明が振り返ると西洋風の鎧に身を包んだ立派な体格の男が立っていた。その男は言った。
「セブラス王子を見つけたぞ!」
和明は言った。
「え、だれ?」
男がそういうと三人の男達が寄って来た。彼等も鎧に身をつつんでいた。寄って来た男達は和明をねぶみするようにながめ、皆口々に言った。
「確かにセブラス王子だ。しかし珍しい服を着ているな」
和明はこの時学ランを着ていた。
「裏切り者のセブラス王子がまだ城下町にいたとは驚きだ。連行しよう」
すると体格の良い兵士が和明の両手に手錠をかけ手錠と繋がっている鎖を引っ張っていく。
暴れる和明は言った。
「俺は和明だ! セブラスなんかじゃねえ」
和明を引き連れ四人の騎士は街中を歩いていく。街の娘達が話し声が聞こえてきた。
「セブラス王子は戦争の真っ只中なのに城から逃げたしたんでしょう?」
「そうらしいわよ」
十分程歩いた和明と四人の騎士は城門まで来た。一人の騎士は言った。
「開けてくれ! 王子を捕まえた」
すると城門の橋が下ろされ門が開いた。
{つづく}