推し活の邪魔をしないでください!話しかけるなと言った婚約者が、推し色の私に恋をしたようです
ヒルデブラント侯爵家の長女・ビアンカは、家訓である『質実剛健』を地で行く令嬢だった。黒髪をひっつめ髪にし、分厚い瓶底眼鏡をかけ、歴史書を読み漁ることを楽しみにし、ドレスや宝石に全く関心を抱かなかった。
そんな彼女にも、貴族令嬢らしく婚約者がいた。お相手はレーヴェンタール侯爵家のユリウス。同じ家格で同い年。ヒルデブラント侯爵家とレーヴェンタール侯爵家が共同事業を立ち上げるために結ばれた、いわゆる政略結婚である。
婚約者のユリウスはとても美しい青年だ。流れるような長い金髪に、エメラルドのように澄んだ緑色の瞳。
幼い頃は一緒に遊んで、仲も良かったが、ビアンカの視力が悪くなるにつれ、ユリウスも口が悪くなった。お茶会で会う度に、ビアンカのことを地味だの、風変わりだのと言って、罵るようになった。ビアンカはその彼の子どもじみた態度に呆れ、半ば諦めていたが、学園に入る直前のお茶会で、決定的な事件が起こった。
「王宮で開かれたガーデンパーティーで、我々を見た友人が何て言ったと思う?」
「さあ? 想像もつきませんわ」
「ガーデンパーティーに『家庭教師』を連れてきたのかと、言われたんだよ。せっかく俺の瞳の色に合わせたドレスだって贈ったのに。いい加減、その眼鏡にその髪型、何とかならないのか?」
「しかし、極度の近視で眼鏡をかけないと何も見えません。元々、髪も地味な色合いなので……」
「君は他に何と言われているか知っているのか? 『化石令嬢』だぞ! 歴史書ばかり読んでいないで、もっと今、世の中で起きていることに興味を持ったらどうだ」
「歴史は人類の成功と失敗が紡ぎ出した、叡智です。馬鹿にしないでください」
「悔しくないのか? どうして変わる気がないんだ!」
「逆にどうして変わらないといけないんですか?」
「それは、貴族にとって『体裁』が大事だからだ! ああ、もう君の考えはよく分かった。この婚約は政略だ。お互いの家に利益があるから結婚はするが、学園では話しかけないでくれ。社交に差し支える」
「分かりましたわ。では、このお茶会もしばらくなしということで」
「……分かった。好きにしろ」
それから、婚約者同士だというのに、ユリウスとの交流は途絶えた。
この国の貴族は、十五になると王都の貴族学校に通うのが通例だ。ビアンカは婚約者にエスコートされることなく、一人その門をくぐった。
たまに見かけるユリウスは男女問わず、たくさんの友だちに囲まれて楽しそうだ。『化石』から離れて、彼の言う社交は大成功ということだろう。
何故かすれ違うと睨みつけられるので、話しかけるつもりはございませんよという意味を込めて、ビアンカは軽く会釈した。
ただ学園は広い。地味なビアンカにも『親友』と呼べる友だちができた。彼女の名はグレーテ、子爵令嬢だ。祖父の代まで平民だった新興貴族だが、彼女の家は商会で財を成した家で、手広く商売をしている。
彼女との出会いは図書館だった。
「その本、もしかして……!」
突然興奮気味のグレーテに話しかけられ、ビアンカは戸惑った。たまたまその時読んでいた歴史書が、下町で上演されている舞台『シュラハト戦記』のモデルになっているらしい。
「あの……、もしよければ今度一緒に舞台を観に行きませんか? 庶民の劇なので、なかなかお誘いできる方がいなくて」
「ええ、私も好きな史実なので、ぜひご一緒したいです」
「まあ、本当に! うれしいですわ」
そして、この観劇がビアンカの『日常』を大きく変えることになった。
観劇当日、待ち合わせ場所に現れたグレーテは学園で見る制服姿の彼女とは全くの別人だった。茶色の髪に緑色のリボンをつけ、緑と白のチェックを基調としたフリルたっぷりのワンピースを身に纏っていたのだ。
「か、かわいらしいお洋服ですね」
「これは、私の『推し』のディートハルト様のテーマカラーなんです!」
グレーテは緑のリボンを指差しながら言った。
今日の劇は、新進気鋭のシュヴァルツ歌劇団による公演だった。劇団員は美男揃いらしく、メインキャストにはそれぞれファンがついている。グレーテは、その主演のディートハルトの大ファンだそうだ。
「……『推し』ですか。グレーテ様は案外面食いなのですね」
「面食い!? いいですか、ビアンカ様。『推し』とは信仰の対象です。恋愛とは違うんです。私は彼と同じ時代に生きて、舞台上の彼を応援できることを神に感謝しています」
ビアンカは少し大げさじゃないかと思ったが、劇場の前には、色とりどりの髪飾りをつけた乙女たちが、グレーテと同じ熱量で開演を待っていた。
劇場に入り、しばらくすると開演を知らせるブザーが鳴った。幕が上がるとそこに、古い甲冑姿の翠眼のイケメンが、美しい金髪をなびかせ、立っていた。
「ディートハルト様~!!」
グレーテが叫んだ。
――この人がグレーテの『推し』か。
確かに美男だが、どことなくユリウスに似ている。ビアンカは冷めた目で、緑のリボンの乙女たちの熱狂を見ていた。
劇は面白かった。史実からはだいぶ脚色されているが、その解釈がビアンカの目には新鮮に映った。炎に水しぶき、派手な演出に観客席が湧く。食い入るように舞台を見つめた。
「シュラハト、行け! ここは俺が守る」
黒髪の青年が舞台上に作られた砦の上で叫ぶ。主人公・シュラハトの盟友、シックザールだ。彼は史実どおり、砦の上で無念の死を遂げた。ビアンカはその迫真の演技に心を奪われ、涙した。
「シ、シックザール……」
涙が止まらず、頬を伝う。ビアンカがおいおい泣いていると、隣にいたグレーテがハンカチを貸してくれた。
「シックザール役のラファエル様は、歌劇団の若手エースなんです! まさに名演技ですよね」
「……あの方は、ラファエル様というんですか?」
「ええ。テーマカラーはディープブルー。彼の瞳の色に因んでいます」
幕が下りて、劇団員が舞台上に並ぶ。シックザール役のラファエルも客席に向かって手を振る。――二階席のビアンカとも目が合った。そして彼の微笑が、まっすぐ彼女のハートを射抜いた。
――この瞬間、ビアンカの『推し活』が始まった。
初めのうちは、グレーテと一緒に劇場に通うだけだった。けれど、少しずつ彼女の真似をして、ビアンカも髪飾りやドレスに『推し色』を身に着けるようになった。推しを応援したかったのだ。
ヒルデブラント侯爵家も、歴史好きのビアンカが、今をときめく歌劇団にハマったということで、ちょっとした騒ぎになった。専属侍女のフィーネは、彼女の推し活を手取り足取りサポートしてくれた。
「この青いリボン、可愛くないですか? お嬢様」
「推し色のワンピース、買い揃えておきました」
「今度グレーテ様との観劇に持って行ってください。推し扇子です!」
使用人にあるまじき言動もあるが、フィーネはビアンカにとって、少し年が離れたお姉さん的存在だ。彼女が一緒に推し活を楽しんでくれることに、ビアンカは感謝した。
一方でビアンカの両親は、どう説明しても、『推し活』のことがよく分からないようだった。ただ幅広く商売を行うグレーテの家は彼らにとって良い取引先だった。彼女と仲良くなったことを、良縁として喜んだ。
ビアンカは演目が変わっても劇場に通い続けた。ラファエルと目が合う度、手を振ってもらう度、ビアンカは控えめな自分の容姿を情けなく思った。少しずつ美容やドレスにも興味を持ち、ヘアスタイルにもこだわるようになった。ただ観劇の日は目いっぱいのおしゃれをしても、『推し』がいない学園では変わらず『化石令嬢』のままだった。
まさか『化石令嬢』が下町の真ん中にある劇場で黄色い歓声を上げているとは誰も思わないだろうと、ビアンカ自身が苦笑いをした。
そんなある日、今まで頑なに学園内で話しかけてこなかった婚約者のユリウスがビアンカを呼び留めた。
「おい」
「これはこれは、レーヴェンタール侯爵令息。ごきげんよう。私の名は『おい』ではなく、ビアンカ・ヒルデブラントです。以後お見知りおきを」
ユリウスの美しい顔が苦々しく歪んだ。
「――また嫌味か。君が下町に出入りしているという噂を聞いた。あそこは娼館や賭博場もあって治安が悪い。変な噂が立っては、お互いの家に迷惑がかかる。何の用があるのか知らんが、平民ごっこはよせ」
確かに、下町は治安がいいとは言えない。でもそれは平民が生活する場だからこそであり、棲み分けはされている。区画を間違えなければ、危ない目に遭うということはまずない。
「ご心配ありがとうございます。でもどなたかの見間違いではなくて? 失礼しますわ、レーヴェンタール侯爵令息」
「おい待て! 話はまだ……」
「学園で話しかけるなと言ったのは、あなたでしょう?」
「うぐっ!」
まだ何か言いたげなユリウスを残し、ビアンカは足早にその場を後にした。
家でフィーネにユリウスのことを相談すると、彼女は少し考えてから答えた。
「そうですね。もしかすると、下町に貴族の馬車が停まっているのが、目立つのかも知れません。次は五番街の端に馬車を停めて、少し歩かれたらいかがですか? あとお嬢様の場合、その眼鏡がどうしても目立つので……」
フィーネの言うとおり、この瓶底眼鏡は『化石令嬢』の悪しきトレードマークと化している。だがビアンカには考えがあった。
「実はね、グレーテ様のお父様の商会で、今度新しく隣国の魔法薬を扱うようになったの。とてもいいお薬を試供品として頂いたわ」
「とてもいいお薬ですか? お嬢様」
「ええ、早速次の公演の時、試してみようと思って」
週末、ビアンカは身支度を始める前に、引き出しから紫色の小瓶を取り出した。
「フィーネ、これよ。視力回復薬! これを一滴、瞳に垂らせば半日は裸眼で過ごせるの! すごいでしょう? 遂にラファエル様の名演技をこの目に直接焼き付けることができるわ!」
「隣国にはそんなお薬があるんですね! まさかお嬢様が瓶底眼鏡を卒業する日が来るなんて」
ビアンカは早速、青い瞳に一滴ずつ目薬を差した。世界が輪郭を帯びて、はっきりくっきり見えることに感動した。
「眼鏡がないのに見える! 見えるわ! フィーネ!」
眼鏡を外したビアンカが、待ち合わせ場所に行くと、グレーテは初め、気づかなかった。ビアンカが声をかけると、グレーテは本当に驚いた様子で、サファイアを埋め込んだようなきれいな瞳だと褒めてくれた。
点眼薬は隣国からの輸入品で、とてもとても普段使いにはできない。だが、ビアンカのお小遣いで買えない値段ではなかった。目薬を差して劇場に通うようになると、出待ちでラファエルが「ビアンカちゃん、眼鏡やめたんだ! いつも応援ありがとう」と声をかけてくれた。ビアンカはそれがうれしくてたまらなかった。
「ビアンカ様、推しに名前を呼んでもらうなんて、前世でどんな徳を積んだんですか?」
五番街に停めた馬車に戻る途中、グレーテがからかうように言った。
「この前、家名を伏せて楽屋に差し入れを届けさせたの。それで名前を覚えてもらったのかも」
ビアンカとて侯爵令嬢だ。両親から、貴族令嬢の社交費として十分な額の小遣いをもらっている。しかし婚約者との社交がない彼女は、与えられた小遣いを歴史書にしか使ってこなかった。
有り余る小遣いを推しのために使いたい。ビアンカは小遣いを、自分の身なりを整えるだけではなく、楽屋への差し入れ、劇団への寄付、グッズの購入に充てた。
「なるほど。私もビアンカ様のように寄付をしたいのですが、父が別の歌劇団の支配人なので、なかなか手配が難しいんですよね。あ、父の劇団は、劇団員が全員女性で、男性の役も女性がこなすんです。今度そちらにも行ってみませんか?」
「まあ、おもしろそうですわね」
ビアンカたちがキャッキャしながら歩いていると、何やら緑色のリボンの乙女たちが、金髪の男性を取り囲んでいるのが目に入った。
「ディートハルト様~!」
「握手してください」
「先程の公演を観ました。サインください」
「なんなんだ、君たちは! 離れてくれ!!」
本物のディートハルトなら、さっき他の劇団員と馬車に乗って別の方角へと帰っていった。おそらく人違いだろう。隣のグレーテも眉間にしわを寄せ、この状況を訝しんでいる。
男性の顔は乙女たちに囲まれてよく見えないが、一見して仕立ての良さそうな上着を羽織っていた。おそらく貴族のお忍びだろう。
「好ましくない状況ですわね、ビアンカ様」
「ええ」
このような劇の上演は王都の風紀を乱すとして、しばしば貴族社会で問題になる。平民が貴族に不敬を働いたとあっては大変だ。ビアンカたちは意を決して、その乙女たちに声をかけた。
「あの、皆さま。少しよろしいでしょうか。本物のディートハルト様なら、先刻馬車に乗り、東町の方に帰られましたよ」
「え? うそ」
「確かに、よく見たら、この方ディートハルト様ではないわ!」
「も、申し訳ございませんでした!!」
緑のリボンの乙女たちは、蜘蛛の子を散らしたように去っていった。
「君たち、助けてくれてありがとう。今のは一体……」
金髪の男性が、顔を上げ、こちらを見た。そして、ビアンカは固まった。
――なんで、ユリウスがこんなところにいるのよ!!
ユリウスも硬直している。そのまま時が止まったように、ビアンカとユリウスは見つめ合った。
やがてその重い沈黙を破るように、ユリウスがぼそりとつぶやいた。
「……美しい。女神か」
何を言っているんだ、この男は? まさかの反応にビアンカは目を見開いた。もしかして彼は、目の前にいる青リボンの乙女を、自分の婚約者だと気づいていないのか……?
今までビアンカに嫌味と皮肉しか言ってこなかったユリウスが、顔を紅色に染め、ビアンカのことを「美しい」と言っている。本心のようだが、ビアンカは内心とても複雑だった。
「ありがとう、助かった。この礼はなんと……」
「当たり前のことをしたまでです。お礼はいりません。失礼します」
「待って! 邸まで送る」
「いいえ、結構です。迎えがおりますから!」
婚約者が貴族令嬢らしからぬ格好で、『推し活』してましたなんて……。後で、堅物のユリウスになんと罵倒されるか、分からない。グレーテの手を引いて、一目散にその場から逃げ出した。
ユリウスは次の週も、劇が終わると、ビアンカのことを待っていた。しかも「お礼がしたい」「危ないから家まで送りたい」と言って、しつこい。撒くのが大変だった。それから馬車を置く場所を変え、劇場から帰る道も変えてみたが、何故かいつも彼はビアンカを待っていた。
「『女神』の正体が、学園では話しかけるなと言った婚約者だと知ったら卒倒するでしょうね」
「うふふ。ビアンカ様ったら。これを機に仲直りなさったら?」
「難しいと思いますわ。昨日も魔法実習で、水槍を的から大きく外して花壇に命中させたところを、ユリウスに睨まれましたもの」
「でも学園の庭師は水やりの手間が省けたって喜んでましたわよ」
ユリウスの学園でのビアンカへの態度は相変わらずだった。ただ前よりも、人の失敗をよく見ているというか、何かに失敗した時に限って、ユリウスと視線が合った。粗探しの上手いユリウスらしいとビアンカは思った。
ある日、出待ちをしていると、劇場のスタッフに声をかけられた。
「ビアンカ様ですよね……? あの、実はうちのラファエルがあなたに会ってお礼を言いたいと」
もしかして、この前の寄付のことか。新公演が始まるたびに、まとまった額を劇団に寄付している。もちろん目立ち過ぎるのもよくないから、大金ではないが。
グレーテはディートハルトに渡したいものがあるから、このまま外で待っているという。ビアンカは一人、薄暗い廊下を案内され、劇場の奥の楽屋に向かった。
「ビアンカちゃん~! いつも寄付ありがとう。この前、差し入れてくれたクッキーも美味しかったよ!」
「喜んで頂けてうれしいです。あれ、友だちの家のお菓子なんです」
さすがグレーテの親の商会が経営する人気パティスリーの菓子だ。お持たせには最適と定評がある。
「今日は……ビアンカちゃんに折り入って頼みたいことがあって」
「私に、頼みたいことですか……?」
「俺、親を幼い頃に亡くして、弟と二人孤児として生きてきたんだ」
ラファエルが俯きながら言った。
「俺は見目が良かったから、このシュヴァルツ歌劇団にスカウトされてね。それからずっとこの劇団でお世話になっている」
「大変だったのですね」
ラファエルのディープブルーの瞳から涙が溢れ出した。
「それでね。弟が、俺の唯一の家族が、この前、魔力枯渇症という難病だとお医者様に言われたんだ」
「魔力枯渇症ですか?!」
魔力枯渇症は原因不明の奇病。それで命を落とした人が貴族でも少なくない。
「……医者は、隣国の魔法薬しかその難病には効かないというんだ」
隣国の魔法薬は高い。今、ビアンカが差している目薬だって、平民にはそうそう手が出せないだろう。
「お願いだ。ビアンカちゃん。弟を助けてほしいんだ」
「分かったわ! ラファエル様! 私、原価で魔法薬を譲ってもらえないか、卸に相談してみますわ」
魔法薬と言えば、グレーテの商会だ。彼女に相談してみよう。
「……え、いやそうではなくて!」
「任せてください! ラファエル様! 弟さんのお命、必ず救ってみせますわ!」
ビアンカはラファエルと固い握手を交わした。ラファエルは少し戸惑った様子だったが、ビアンカは善は急げと、通用口を走り抜け、出待ちを終えたグレーテに事の次第を話した。
「なるほどね~。ラファエル様のあの噂って本当だったのかしら。まあいいわ。こちらで『準備』するから、ビアンカ様は何もしないでね。あと彼に何か言われても絶対に『現金』を渡してはダメよ」
「わ、分かった」
いつになく、グレーテが怖い顔をしたので、ビアンカは彼女との約束を守ろうと誓った。
それからラファエルはビアンカを楽屋に呼び出しては、弟の治療費が足りない、弟に栄養価の高いご飯を食べさせたいと困り顔で言って、ビアンカを見つめた。その度にグレーテがニコニコしながら話を逸らし、ラファエルの『お願いごと』をかわし続けた。
「ねえ、グレーテ。ラファエル様は弟さんのことをすごく心配しているじゃない? 毎回無視してはかわいそうだと思うんだけど」
グレーテと二人きりになってから、ビアンカがぼそりと言った。グレーテが怒った。
「ビアンカ様、いい? 私の推しのディートハルト様はね、多分私のことを裕福な家の娘だと知っているわ。でも一度も金銭を要求されたことはない。『推し』と『ファン』には適切な距離感というものがあるの」
「でも私は『推し』が困っていたら助けたい」
「うちにも歌劇団があるから、役者の収入がどのくらいかって大体分かるけど、彼は弟さんを養うのに十分な額をもらっているはずよ。それに……弟が病気っていうのがそもそも『嘘』なの」
「えっ!」
それからグレーテは、ラファエルの裏の顔を淡々と、ビアンカに告げた。
ラファエルは、ファンの中に貴族令嬢や大きな商会の娘を見つけると、『弟』が難病だと泣きついてお金を出させること、そのファンがお金を出すと今度は弟の命の恩人だと言って持ち上げ、告白すること。
「彼は熱いまなざしで『早く君と結婚したい』と言うらしいの。でも、今の自分では不釣り合いだから、役者としてもっと成功したいって。成功して自分の劇団を持ちたいって」
「……」
「それから、あーだこーだ言っては、お金を巻き上げて、これ以上搾り取れないと分かると、最後は親に口止め料を要求して、令嬢の元を離れて行く」
「うそ……ラファエル様がそんなことするはずがない」
「私も初め、ラファエル様の黒い噂を聞いた時は信じられなかった。だって、ラファエル様はずっとディートハルト様に感謝しているし、尊敬していると言っていたから。でも今回あなたが声をかけられたと聞いて、商会の情報屋を使って調べさせたの。……まだ調べ途中だけど、今の話は全部事実よ。ラファエル様はギャンブルが好きで、もらったお給料をギャンブルに溶かしちゃうみたい。借金もあるって聞いたわ」
「そ、そんな」
グレーテは下町の菓子屋に用があると言い、五番街手前で別れた。ビアンカの頭の中でグレーテに言われたことがぐるぐる回る。どうしても神格化した『推し』の暗部を認めたくなかった。
――そうだ! 本人に直接聞いてみればいい。
ビアンカはもと来た道を戻った。忘れものをしたと、さっきラファエルの楽屋まで案内してくれた門番に言って、再び楽屋に通してもらった。
「あれ? ビアンカちゃんどうしたの?」
「あの……ラファエル様、単刀直入に聞きます! 弟さんが病気って嘘なんですか? お金がないのはギャンブルのせいなんですか?」
「えっ……、誰からそんな話、聞いたの? 嘘だなんて残念だよ」
「……そ、それは」
「実は俺、昔付き合っていた子に変な噂を流されていて困っているんだ。俺が駆け出しのころに助けてくれた大切な人だったのに、ショックでさ」
「そ、そうだったんですか」
やっぱり本人に確かめないと何も分からないじゃないかと、ビアンカは思った。
「ビアンカちゃん、そんなに『弟』のことが気になるなら、今から俺の家に来る?」
「え? 家ですか?」
「ああ、大丈夫! 家と言っても、劇団の寮だから。共用スペースには女性もいるし。実は弟がビアンカちゃんに会って、クッキーのお礼がしたいって、前から言っているんだ」
「劇団の寮って、ファンの私が入っても大丈夫なんですか?」
「もちろん! でもビアンカちゃんは特別! 弟もビアンカちゃんに会ったら、絶対に元気になると思うから」
ビアンカは悩んだ。
ラファエルの弟に会えば、グレーテの掴んだ情報が間違いだったと分かる。それにラファエルがいつも楽しそうに話していた『弟』に会ってみたいと思った。
「私もぜひラファエル様の弟さんにお会いしたいです」
「じゃあ、決まり! さすがに俺とここから出ると他のファンの子たちがびっくりしちゃうから、東町手前の路地で待っていて。シュラハト像の前」
「分かりました」
ビアンカはニコリと頷いた。
劇場を出て、侯爵家の御者に知人と夕飯を食べてから帰ると伝え、シュラハト像に向かった。
「あったわ! シュラハト像」
シュラハトの生家がこの地にあったことに因んで建てられたものだ。ビアンカは普段あまりこの区画まで来ない。物珍しく、マジマジと像を見上げた。像の横顔が夕日に染まる。先陣を切って敵軍へ向かうシュラハトらしい躍動感がある。
「ラファエル様、遅いなぁ~」
像の周りで遊んでいた子どもたちも、それぞれの家に帰っていった。沈みかけの夕日を眺めていると、突然後ろから羽交い絞めにされた。
「え、何!? アクアランス!」
ビアンカは慌てて、攻撃魔法を撃った。しかしそれは大きく逸れ、シュラハト像を水浸しにして終わった。そのまま口に薬を含ませた布を当てられ、ビアンカは気絶した。
***
次にビアンカが目を覚ますと、暗くてジメっとした部屋にいた。ここは地下室だろうか? 窓がない。
「……!」
手と足を縄で縛られ、口も縄でふさがれている。声が出せない。耳を澄ますと、上階から声が聞こえた。
「あの女、まさかヒルデブラント侯爵家の令嬢とはな」
張りのある艶やかな声。……ラファエルだ。
「侯爵家に身代金を要求しました。これで一生遊んで暮らせますぜ、ラファエル『兄貴』」
「ははは! 俺に『弟』なんていないっつうの!」
「でも乙女たち、あの泣き芝居に弱いっすよね」
「これもスラムで覚えた処世術さ」
そうか自分は騙されていたのか。ビアンカは、ラファエルに言われるがまま、シュラハト像の前で待っていた自分を恥じた。
「歌劇団の連中は、いつもディートハルト、ディートハルト! 実力だって、人気だって、今は俺が一番だ! なのに奴らは俺を認めない。金さえ手に入ったら、あんなところ、とっとと辞めてやる」
「で、あの乙女はどうするんです? 金をもらったら、侯爵家に返すんですか?」
「うーん。余計なことを言ったらまずいしな。野盗に襲われたように見せかけて殺すか」
背筋に冷たい汗が走った。ただ『推し』を、ラファエルを、信じたかっただけなのに。ポロポロと涙が零れ落ちる。その時、爆音とともに聞き覚えのある声が聞こえた。
「ファイアーボール!」
「な、何者だ!」
「君たちの企みは、このユリウス・レーヴェンタールと、ここにいる憲兵隊が聞かせてもらった。俺の婚約者、ビアンカは返してもらう」
「そ、そうはさせるか」
上階に通じる扉が開き、階段を降りてくる足音が聞こえる。逃げようとするが、縄で縛られていて、動けない。
「……!」
「お前を盾にここから出る。大人しくしろ」
ビアンカのポニーテールをラファエルが乱暴に掴もうとした。
「汚い手で、俺のビアンカに触るな! ファイアーランス!」
炎の槍が的確にラファエルを射抜き、その衣服を燃やす。
「熱い! 熱い! 誰か水を! 火を消してくれ」
「大丈夫か! ビアンカ! 今解いてやるからな」
火だるまになったラファエルは、憲兵隊員によって消火され、そのまま彼ら一味はお縄になった。
ビアンカたちは、憲兵隊の取り調べを受けるため、そのまま馬車で詰め所まで連れて行かれた。何故かビアンカは、ユリウスの膝の上に横抱きにされた。
「ユリウス、助けてくれたのはありがとう。でも何故、膝の上?」
「さっきから、お前が震えているからだろう」
「え、どうしちゃったの、ユリウス? 熱でもあるんじゃない?」
「『どうしちゃったの』はこっちのセリフだ! 毎週のように下町で遊び歩いてると思ったら、こんなことになって!」
「でも、シュヴァルツ歌劇団の劇は素晴らしかったし、ラファエル様は演技派の名優なの。まさかあんな悪人だと思わないじゃない」
「そもそもこんな目立つ格好で、下町に出て危ないとは思わなかったのか? 君は侯爵令嬢なんだぞ。何度も家まで送ると言っても聞かないし」
言葉はいつもどおりきつかったが、その声色には不安がにじんでいた。
「え、まさかユリウスは私だと分かっていて、待ち伏せしていたんですか?」
ビアンカはユリウスの緑色の瞳を見つめながら言った。
「はぁ? そうに決まっているだろう!」
「だって、私のことを女神って」
「そ、それは君が眼鏡を外したところを初めて見たから……。でもそんな風に勘違いされていたなんて心外だ! 俺は君と違って『浮気者』じゃない」
「『推し』は信仰です! 浮気とは違います」
「まあ、いい。今回はそういうことにしておいてやる。でもっ! 次はないからな」
まさかの返答にビアンカはのけ反った。
「学園で話しかけるなと言った人がよく言いますね。いつも睨みつけてくるし」
「あれはその……申し訳ない。売り言葉に買い言葉で、つい口走ってしまった。歴史書を読み漁る君も、瓶底眼鏡の君も、俺は好ましいと思っている。ただ、いつもいつも悪友に馬鹿にされて、悔しかったんだ。あの日だって君に似合うドレスを贈ったつもりだったのに『家庭教師』と馬鹿にされて。君に当たってしまったのは、大人げなかった。でも俺は睨んでなどいない! ただ君と仲直りする機会を窺っていただけだ」
「……分かりました。助けてくれたことに免じて今回は許してあげます。でもっ! 次はないですからね! それにしても、よく私の居場所がお分かりになりましたね」
「いつもどおり、君たちを待ち伏せしていたら、グレーテ嬢に会ったんだ。君が先に帰ったと聞いて、変な胸騒ぎがして、下町を探した。そうしたら、シュラハト像の辺りで、水しぶきが上がるのが見えて。本当はもっと早く助けたかったんだが、自分まで捕まるとまずいと思った。だからまずアジトまで後をつけて憲兵に通報したんだ」
「そうだったんですね。ご迷惑をおかけしました」
「グレーテ嬢の話だと、あの劇場、他にもたくさん黒い噂があるらしい。これをきっかけに大規模な捜査が入るんじゃないか」
「そんな! 少なからず寄付したのに残念です」
「社会勉強にしては高い買い物になったな」
「ええ、本当に……」
ビアンカは深い溜息をついた。
憲兵の詰め所では、一通り事情を聴かれ、ビアンカは一つ一つ丁寧に答えた。取り調べが終わると、迎えに来た両親と対面した。ビアンカは案の定、大目玉を喰らい、しばらく学校以外の外出を禁止された。
謹慎生活が始まると、ビアンカは手始めにディープブルーのワンピースを処分した。さすがのビアンカも自分を誘拐した人の色は身に着けたくないと思ったのだ。グレーテとは変わらず、学園で世間話をするが、お互いにあの劇団の話はしなかった。
『推し活』が無くなり、ビアンカの心にぽっかり大きな穴が開いた。
「お嬢様、溜息ばかりついてないで。そろそろユリウス様がいらっしゃいますよ」
フィーネがにっこりしながら声をかける。
「久しぶりにうちに来るって言ってたわね。あのバカ」
一応ちゃんと準備して、迎えてやるか。眼鏡を外し、魔法の小瓶から一滴、瞳に垂らす。メイクを終えると、フィーネが、ガーデンパーティーで着た深緑色のドレスを出してきた。
「このドレス、そういえば一回しか袖を通してないわ」
「デザインも凝っていますし、ユリウス様、もしかしてかなり時間をかけて見繕ったんじゃないでしょうか?」
「あのユリウスが時間をかけてねぇ~」
よく見れば、レースがふんだんにあしらわれ、切り替えも多い。ファッションに詳しくないビアンカでも分かる。これはおそらく高いドレスだ。
早速ドレスを着て、鏡の前に立つ。なるほど、眼鏡姿の私をイメージしたのか、首元が詰まって少し大人びたデザインだ――だから『家庭教師』とからかわれたのか。
ユリウスは約束の時間にやってきた。
「……もしかしてビアンカ、俺のために着飾ってくれた?」
「ええ、そうよ。婚約者ですから」
「うれしい、ありがとう!」
ユリウスの目尻が下がる。お前はそんな表情もできたのかと、ビアンカはドギマギした。
中庭のテラスに案内し、ユリウスが買ってきた最近流行りのショコラケーキをつまみながら、歌劇団のその後について教えてもらった。
「あの歌劇団はラファエルと同じような手口で、ファンからお金を巻き上げる事件が過去にもあった。今まではトカゲのしっぽ切りで、うまくごまかしていたようだがな」
「知りませんでした……」
人気者のラファエルは、金持ちの令嬢を狙ってターゲットにしていたが、末端の劇団員はもっと手荒い真似をして、乙女たちから金を巻き上げていたという。ビアンカは話を聞くだけでゾッとした。
「近いうちに解散命令が出るだろうね」
「……看板俳優のディートハルト様は誠実でプロ意識が高い方なのに。グレーテ様も悲しむわね」
以前グレーテが、ディートハルトは自分が育った孤児院に毎年多額の寄付をしていると、自慢げに語っていた。ユリウスに似てさえいなければ、ビアンカもおそらく彼のファンになっていただろう。
「そうだ! 今日はこの誘いをしに来た。事前に君の両親にも外出許可は取ってある」
ユリウスが白い封筒を一通、上着のポケットから取り出した。
「何ですか、これは?」
「ゲーゲンバウアー公爵家の薔薇を愛でる会の招待状だ。婚約者として参加してほしい。またドレスを送る」
「ふふ。退屈な謹慎生活には、ありがたいお誘いですね。今度はもっと若々しいドレスがいいわ。例えば春の木漏れ日のような」
「善処する」
春風に吹かれながら、ビアンカはクスリと笑った。
それからしばらくして、ヒルデブラント家に約束のドレスが届けられた。
贈られたのは、ミントグリーンのドレス。胸元の花の刺繍が春らしい。ふくらみのあるスカートは、薄いチュールが幾重にも重なり、華やかだが騒がしくない。ビアンカの好みに合った一着だった。
「お嬢様、このお店! 最近令嬢に人気のブティックですよ」
「あら、そうなの? 全然知らなかった」
「大事にされていますね」
「ユリウスの色を纏うのも悪くないかもね」
「当日のご用意、頑張らせて頂きます」
フィーネも何だかうれしそうだ。
***
薔薇を愛でる会の当日は、見事な快晴だった。
迎えが来たと聞いて、ビアンカは日傘を差して玄関を出る。そのドレス姿にユリウスが目を輝かせた。
「ビアンカ、よく似合っている。ナハト王の妹・クノスペのようだ」
「あら! あなたは歴史が苦手なのかと思っていたわ」
「ふん! そのくらい常識だ。俺を舐めるな」
ユリウスが少し照れ臭そうに笑った。
ゲーゲンバウアー公爵家は、先々代の王の弟殿下が興した由緒正しい家柄だ。でもこの薔薇を愛でる会は、格式高い会ではなく、薔薇を楽しみながら、さまざまな交流が生まれる場にしたいという趣旨で開かれている。
美しい薔薇、手入れが行き届いた庭、そして美味しい料理――そこかしこにゲーゲンバウアー家のホスピタリティーが行き届いている。その狙いどおり、招待客の会話も弾む。
「おー、ユリウスじゃねえか?」
振り返ると、ユリウスの幼なじみである二人の令息が立っていた。
「ごきげんよう」
ビアンカが優雅なカーテシーで挨拶すると、彼らは面白そうに笑った。
「おやユリウス、隣の美しいご令嬢は? 今日はあの『家庭教師』を置いてきたのか?」
「恋心は『化石』と違って、春の陽気のごとく移ろぐものだからな。お前の気持ちはよく分かるよ」
この二人が、ユリウスの言っていた『悪友』か。にやにやと気持ち悪い笑みを浮かべる令息たちを、ユリウスが一蹴した。
「お前ら、いい加減にしろ! 俺の婚約者は『化石』でも『家庭教師』でもない」
「どうしたんだよ、ユリウス。お前らしく……」
「――以前もご挨拶したかと存じますが、改めて。私、ユリウス・レーヴェンタールの婚約者のビアンカ・ヒルデブラントと申します。いつもユリウスがお世話になっております。オッペンハイム公爵令息、確かあなたの婚約者は隣国の姫君でしたね。なかなかお会いできないからと、色々な令嬢を侍らせていると、そのうち痛い目を見ますよ」
鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして、令息たちはこちらを見た。
「え、お前まさか『化石令嬢』か!」
「失礼する。行くぞ、ビアンカ」
「はい」
ユリウスに手を引かれ、その場を離れると、ユリウスが申し訳なさそうな顔で謝った。
「すまない。アイツら、無遠慮なところがあるが、まさかあそこまでとは思わなかった」
「いいえ。ユリウスがはっきりと言ってくれて、うれしかったですよ」
ユリウスと薔薇を愛でながら、そのつぼみをモチーフにした砂糖菓子をつまむ。今度はグレーテがにこやかに話しかけてきた。
「ビアンカ様! 素敵なドレスですわね」
「あら、グレーテ様もそのヘアスタイル、よくお似合いです。もしかして今日のパートナーは……」
グレーテの横に、見覚えのある金髪の美男が立っている。なんとディートハルト様だ。
「ほら! シュヴァルツ歌劇団が解散になったでしょう? だから父がディートハルト様を、リヒト歌劇団の演出家としてスカウトしたの。私も学園卒業後は商会の取締役として、歌劇団の経営に携わる予定で、色々大忙しよ」
グレーテがにこりと笑う。ディートハルトとグレーテの関係は、『推し』と『ファン』から『演出家』と『雇用主』に変わったようだ。
「今日は新しい雇い主に頼まれて、劇の宣伝のために参りました。ビアンカ様、ラファエルがあなたに大変申し訳ないことをしたと聞いています。元劇団員として私からも謝らせてください」
ディートハルトが深々と頭を下げた。
「いいえ! 頭をお上げください。ディートハルト様は何も悪くありません」
グレーテから聞いていたとおり、ディートハルトは、誠実でいい人そうだ。新しい仕事にもその情熱を燃やしている。
「リヒト歌劇団の次の演目は『月影の乙女』! あのナハト王の史実に基づく脚本なの。魔法を使った今までにない派手な演出が売りよ。ビアンカ様もぜひ遊びにいらしてね」
「おい、また『推し活』か!?」
ユリウスが慌てたように遮った。
「ユリウス様のご心配には及びませんわ。我がリヒト劇場は、老朽化した王立劇場を買い取って、リニューアルした劇場で、場所は一等地にございます。ファンはファンクラブで管理しておりますし、なんといってもキャストは全員『女性』ですから」
「違う、そういう問題ではなくて」
ビアンカはグレーテの手を取って言った。
「グレーテ様、行きます! ぜひ行かせてください!」
「おい待て、ならば俺も行く」
「もう、ユリウス様! 推し活の邪魔をしないでください!」
木々が芽吹き、つぼみを付け、花を咲かせるように、季節は巡り、移ろっていく。つぼみみたいな彼らの恋が、大輪を咲かせるには、まだもう少し時間がかかりそうだ。
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