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第6話 傷痕

夜の事務所。

窓から差し込む街灯の光は、湿った空気をぼんやりと照らしていた。


リムは机の上で、淡い青色に揺れている。

今日の事件は解決したが、赤い怒りの色を見せたことで、まだ落ち着かないらしい。


『みなと……なんだか、つらそう……』


「……そうか?」

俺は少し笑って返すが、声が震えていることに自分でも気づいた。


過去が、ふいに蘇った。

――守れなかった人。

――自分の無力を痛感したあの日。


俺はリムに背を向け、静かに呟く。

「……俺もな……昔、守れなかった奴がいて……」


リムの光が小さく揺れた。

『……みなと……それ、いたい……?』


「……ああ、今も胸に残ってる。

 だから、今回みたいに小さくても守れた瞬間が、俺にとって宝物なんだ」


スライムは静かに揺れ、青と金の混じった光を放つ。

『……ぼくも、みなとの宝物になりたい……』


胸が熱くなる。

――守る意味、守られる意味。

そして、信頼の重さ。


外では夜風が建物の隙間を抜け、かすかな音を運んでくる。

窓越しに見える屋上には、まだ黒い影が潜んでいる。

目には見えないが、感覚で存在を感じる。


「……いつか、あの影も倒す」

リムに言いながら、俺は拳を握る。

赤や青の光が重なり合い、事務所に柔らかな暖かさを作った。


――過去の傷痕を胸に、

俺たちは“守る者”として一歩を踏み出す。


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