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第5話 怒色

少女のぬいぐるみを無事に取り戻した夜。

事務所に戻った俺とリムは、しばらく沈黙していた。


リムの光が淡い金色から、突然、赤みを帯びる。

『……みなと……ぼく……こわい……!』


「……え?」

俺は思わず声を上げた。

スライムが怒りや恐怖を“色”で表すのは珍しい。

これほど赤くなるのは初めてだ。


リムの怒色は、少女を傷つけた父の心ではなく、

――屋上の黒い影が放った悪意に反応したものだった。


「誰だ……俺たちを見てた奴……!」

俺は慌てて窓の外を確認するが、雨に濡れた街には人影はない。


リムが体を震わせ、光が一瞬、炎のように赤く揺れた。

『……あいつ……ずるい……』


「落ち着け、リム」

しかしスライムの怒りは止まらない。

感情が色として溢れ、事務所の空気まで熱を帯びるようだ。


少女の涙を思い出す。

――悲しみを与えたくない、守りたい。

その気持ちが怒りとなって現れたのだ。


俺は深呼吸して、リムの体をそっと包む。

「わかった、誰がやったか調べる。絶対に解決する」

『……うん……みなと……が……』


赤色が徐々に淡くなり、落ち着きを取り戻す。

リムは初めて、自分の感情を制御する経験をした。

怒りを知り、同時に、守る意志も学んだ瞬間だ。


俺も思った――

――この小さな事件が、俺たち二人をただの拾ったスライムと落ちこぼれ探偵から、

本物の相棒に変えつつある、と。


だが屋上の黒い影は、まだ動かない。

――次の瞬間、何か大きな試練が降りかかる予感がした。


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