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第2話 静風
朝の街は穏やかだ。
微かに吹く風が、建物の隙間をすり抜け、リムの光を揺らす。
しかし、その風には何か異質な静けさが混ざっていた。
『……みなと……あの風……変……』
「気のせいじゃないな」
俺はリムを手に抱え、ユウキとレナと共に街を見回す。
カフェの外で、街の人々は普段通りに動いている。
だが、遠くのビルの影や路地に、微かな揺らぎ――影のようなものが見え隠れする。
「蒼色現象の余波じゃない……何か新しい力の兆候だ」
ユウキが静かに分析する。
レナも手帳に書き込みながら頷く。
「街の感情や空気に微細な変化が出てる……慎重に調べる必要がある」
『……ぼくたち、また守る……!』
リムの光が跳ね、街に温かさを取り戻そうとする。
「そうだな。まだ序章に過ぎない、油断はできない」
三人は視線を合わせ、再び警戒の姿勢を取る。
風に乗って、遠くの街角で黒い影が微かに揺れる。
――静風。
その名の通り、静かでありながら確実に街に変化をもたらす兆候だった。
微かな不安が胸をよぎるが、三人の絆と決意は揺るがない。
新たな事件――未知なる力との戦いが、静かに始まろうとしていた。




