第3話 滲声
雨が小降りになり、街は水滴の残る蒼い光に包まれる。
リムの光が小さく揺れ、青と金が混ざった色で街の波紋を映し出す。
『……みなと、なんか……声が……おかしい……』
「声?」
俺はリムを手にのせ、周囲に注意を向ける。
レナも手帳を開き、解析用の目を光らせる。
街角の水たまりから、微かに人々の声が滲み出すように聞こえる。
しかしその声は不自然で、感情が薄く、どこか曖昧だ。
――蒼色の水滴が、人々の感情や記憶を浸食しているのだ。
「リム、ユウキ、波紋の中心を特定するぞ」
『……ぼく、行く……!』
リムが光を強く揺らし、街の異常を視覚化する。
ユウキも静かに頷き、光の波紋を追う。
二人の力を合わせ、街の蒼色の波を追跡すると、
廃工場の屋上に小さな光の核が浮かんでいるのを発見する。
――蒼色の現象の源だ。
「ここか……」
レナが手帳に書き込み、分析を続ける。
「間違いない。あそこが現象の中心……近づけば危険だが、確実に正体が見えるはず」
リムが光を強く放ち、赤黒い影の記憶を呼び起こすように反応する。
『……あいつに……似てる……?』
「そうだな……前章の黒い影と、何か関係があるかもしれない」
街の声はまだ戻っていない。
――滲声。
蒼色の現象は、街全体を覆う静かな脅威であり、
三人は初めてその正体に迫ることになる。
雨に濡れた街の光の中、三人の覚悟が固まる。
次の行動が、街の未来を左右する――




