第12話 焔声
夜空を切り裂く紅紋の光。
リムの体は小さく震えながらも、青と金の光を最大に放つ。
赤黒の影と交錯し、街全体に熱を帯びた光が広がる――まるで焔そのものだった。
『……みなと、行くよ……!』
「ああ、行く!」
レナも手帳を握り、冷静な指示を叫ぶ。
「紅繭を狙って! 三人の力を合わせるのよ!」
黒い影は最終形態のように膨張し、紅繭を中心に赤黒い光を撒き散らす。
周囲の街は暗く支配され、声を失った人々の残滓が漂う。
『……ぼくたち……守る……!』
リムが光を炸裂させ、青と金が紅の影を押し返す。
俺も拳を握り、全力で影の隙を突く。
レナは解析を続け、光のタイミングを指示する。
紅繭の中心に三人の力が集中すると、影が揺れ、赤黒の光が裂ける。
裂けた隙間から封じられた声が一気に解放され、街に響き渡る。
――焔声。
声と光が融合し、黒い影を押し戻す力となった。
『……できた……! 街の声、戻った……!』
リムの光が爆発的に広がり、街全体を温かく照らす。
黒い影は最後の力を振り絞るも、徐々に赤黒の光が消え、崩れ落ちる。
「やった……!」
レナも安堵の声を上げ、手帳を握り締める。
俺はリムを抱き、深く息をついた。
街は静かさを取り戻し、人々の声が戻る。
しかし、黒い影の核心――紅繭の奥に眠る真実はまだ謎のまま。
三人は初めて影を退けた達成感と、次なる戦いへの覚悟を胸に、夜空を見上げた。
――焔声。
光と声が交わり、街を救った三人の絆を永遠に刻む。
そして物語は、第3章への新たな幕開けを予感させた。




