第3話 裂声
夕暮れの街に、赤と青の光が微かに揺れる。
リムを手に乗せた俺とレナは、事件の中心と思われる建物の前に立っていた。
『……ここ、こわい……』
リムの青色が濃く揺れる。
「落ち着け、リム。俺たちが一緒だ」
手を軽く握り、安心させる。
建物内部は暗く、静寂が支配している。
声を失った人々の残り香が、空気に漂い、リムの光が強く反応する。
『……悲しい……怒ってる……誰か、苦しめてる……』
奥へ進むと、黒い影が待ち構えていた。
屋上で見た存在が、ここで姿を現す。
赤黒く歪んだ光をまとい、周囲の空気をねじ曲げている。
「……来たか」
影は低く唸り、言葉を発しない。
だが、リムの光が赤く燃え、怒りと恐怖を示す。
『……ぼく、負けない……!』
俺は拳を握り、心を落ち着ける。
「よし、リム。行くぞ。俺たちは、絶対に守る」
レナも頷き、手帳をしっかり握る。
黒い影が動くたび、被害者たちの声が微かに響く。
その声を辿り、リムの光を合わせると、空間にひび割れのような赤い光が走った。
――裂声。
声が裂け、影が暴く感情の真実。
『……ここで、守る……!』
リムが体を震わせ、光を最大に放つ。
俺とレナも力を合わせ、影に立ち向かう。
小さな事務所での訓練とは違う、真剣勝負の初体験だった。
夜空に響く裂声は、希望の光でもあり、黒い影への警告でもあった。
――三人の絆が試され、同時に深まる瞬間。




