第12話 始歩
朝の光が事務所の窓から差し込む。
雨上がりの街は、濡れたアスファルトが反射し、柔らかく輝いていた。
リムは小さく揺れながら、淡い金色の光を放つ。
『……みなと、今日は……新しい日……』
「そうだな、リム。俺たちの、本当の一歩の始まりだ」
事件は小さかった。
少女のぬいぐるみを取り戻しただけ。しかし、それで得たものは大きい。
――守る喜び、信頼、絆、そして自分の弱さを受け入れる力。
リムが跳ねるように光を揺らし、青から金へと変化する。
『……ぼく、守るの楽しい……!』
その光は、まるで未来への希望そのもののようだった。
俺はリムを掌に乗せ、窓の外を見つめる。
屋上の黒い影――まだ動かぬ存在はあるが、
今は気にしない。まずは自分たちの力を信じ、歩き出すことだ。
「これからだ、リム。俺たちの探偵としての歩みは、今日から始まる」
『……うん、みなとと一緒なら……どんなことも……!』
その言葉に、俺は深く頷いた。
――この“始歩”が、物語の本当のスタート。
リムとの出会い、絆、守る喜び。
すべてが、次の事件への布石になる。
事務所の小さなランプが揺れる光の中で、
俺とリムは、未来へ向けて一歩を踏み出した。




