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結婚は神様に誓って

※剣と魔法の異世界の贅沢な結婚式です。

 ーーーーーーーー

 星月一日ほしづきついたち


 今日から1年後に結婚式だから、珍しく日記をつけてみようと思った。

 私、ルビアナ・フロレンティアと婚約者のジュリアン・モンターニュ様の結婚式だ。


 ジュリアン様は、結婚式に興味はないらしく、全部私の好きにしていいらしい。

 ジュリアン様のサインの入った委任状もあって話が早い。

 フロレンティア侯爵家とモンターニュ伯爵家の予算もふんだんにある。

 もちろん、我がフロレンティア侯爵家の予算の方が多いけれど。

 折角だから贅沢を極めた盛大な結婚式にすることにした。


 神様に「富める時も貧しき時も健やかなる時も病める時も互いを敬い愛することを誓う」結婚式だ。

 神様に失礼がないようにしなくてはならないと思う。

 自然と背筋が伸びる思いだ。


 両家に話をしたら、喜んで賛成してくれた。

 ーーーーーーーーー

 月月七日つきづきなのか


 日記をつけ始めてから一か月ちょっとが経った。

 私とジュリアン様が通う学園に、男爵家の庶子のマリアンヌ・デュトワさんが編入してきた。

 聖魔法の適性がある人で、ピンクブロンドの髪に蜂蜜色の瞳がかわいらしい。

 私の青銀の髪に紺色の目よりも華やかな気がする。


 何故そう思うかと言えば、一緒に居たジュリアン様がデュトワさんに目をやっていたからだ。

 少し不安になってお友達のミレーヌ様(同じ侯爵家令嬢の王太子様の婚約者)に相談してみると、


「本には、『男の人は結婚前には不安になって意図的ではなく他の女性に目移りする方もいます。必ずあなたの元に戻ってきますので、優しく見守ってあげましょう』と書いてありましたわ」


 との事だった。


 確かにそうだわ。

 必ず私の元に戻ってくる。

 それは間違いない。


 私はジュリアン様を信じて待っていよう。

 ーーーーーーーーーー

 陽月二十日ようげつはつか


 日記を書き始めてから四か月。

 最近、真夏らしくとても暑い。


 それなのに、我が侯爵家の監視部隊から、ジュリアン様がデュトワさんと中庭のベンチに座って手を繋いでいたと報告があった。


 大丈夫、ジュリアン様は必ず私の元へ戻ってくる。

 小さいころ、フロレンティア侯爵家を継ぐことを不安に思っている私を、何度も根気よく励まして下さった。


「僕もしっかり勉強して、一緒にフロレンティア侯爵家を支えるよ」


 と仰ってくださった。


 最近は少しそっけないけれど、月に一回のお茶会には必ず参加してくださるし、そっけないけれど夜会のエスコートもちゃんとしてくださる。

 ジュリアン様はいつまでも私を助けてくださる救世主様のようなものなのだ。


 最近は男女の友人でも手を繋ぐことは珍しくないとお友達の男爵令嬢であるマリナも言っていた。

 不安に思う事はないと私を励ましてくれた。


 そう、だって、来年の春には結婚式をあげるのだから。


「モンターニュ伯爵令息様の真実の心はルビアナにあるのよ」


 とマリナは言っていた。

 そう、皆にも結婚式の招待状を送ったから分かっている。

 来年の春には神様に愛を誓うのだ。

 それをジュリアン様も了承してくださっている。

 私に任せてくださっている。

 それは私を愛する、という事だ。

 ーーーーーーー

 霜月三日しもつきみっか


 日記をつけ始めてから八か月。


 今日、クラスの殿方から嫌な話を聞いてしまった。

 ジュリアン様が、


「ルビアナを愛することはない」


 と堂々と周りの殿方に言いふらしているというのだ。

 しかし、私が、『来年の春には招待状も出している通りに結婚式を挙げる予定だ』と言うと、


「あれ、じゃあ気の迷いか」


 とクラスの殿方はすぐに引き下がって謝ってくださった。


 そう、招待状には贅をこらした結婚式がどんな結婚式なのかも書いてある。


 ジュリアン様は私に結婚式を任せてくださっているのだ。

 私はジュリアン様を信じる。

 そして、神様を信じている。

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 ーーーーーーーー


 結婚式当日だ。

 王都の大聖堂に、招待したお客様たちが大勢集まっていた。

 私は純白のウェディングドレスを着て、父上にエスコートされ、赤いじゅうたんの上を歩く。


 祭壇の前にはこの日の為に多額の献金を積んできてくださった教皇様と、愛しのジュリアン様が居る。

 教皇様はこの国の宗教の頂点の方。

 フロレンティア侯爵家から大量の献金を積んて、この日の為に神力を貯めてくださっている。


 そして、私が祭壇にたどり着くと、早速、教皇様が貯めていた力を解放して神言を唱え始めた。


「神よ、この者たちの誓いをお聞き届けください」


 教皇様の言葉の後、祭壇の教皇様の後ろに神様が顕現けんげんなさった。


 ジュリアン様が、事前にお話はしていたはずなのに、神様を見て驚いている。

 でも、気持ちは分かる。

 私も心構えをしていたものの、実際に神様を見て、しかも私たちの誓いを聞き届けようとしている神様と目が合っている。


 私は用意していたメモをドレスの隠しから出して、ジュリアン様と朗読した。

 私の声は震えていたし、ジュリアン様も緊張なさっているのか声が震えていた。


「私たちは富める時も貧しき時も健やかなる時も病める時も互いを敬い愛することを誓います。死が二人を分かつまで」


 神様が現れている時間はとても短い。

 シンプルな誓いだ。


 でも、私はこれで十分だった。

 ジュリアン様もきっと同じ気持ちだ。


 現れていた神様がわずかに頷いて、そしてかき消えた。


 招待したお客様たちが(王族の方たちもいらっしゃっている)、顕現した神様への緊張から解けて口々に息を吐いた。


 教皇様が、


「神に誓ったことは真実でなくてはならないし、真実である。二人の愛に祝福を」


 とおっしゃて下さった。


「愛してるよ、ルビアナ」


 ジュリアン様が式の途中だったが、小さく呟いて私の肩を抱き、口づけを下さった。

 私は驚きのあまり心臓が口から出てしまうかと思った。

 顔が一気に熱くなる。


「嘘よ!! ジュリアン様は、私を愛してると言ってくださったわ! そんなのうそっ…………むぐぐぐっ!!!???」


 大聖堂に大きな声が響いて、振り返ると、すでに誰か女性らしき人が口をふさがれて警備兵に連れていかれるところだった。


 一瞬だけれど、見えた顔は……………………あのピンクブロンドはマリアンヌ・デュトワさん?


 私はそれでも毅然とした態度で、私を愛してくださっているジュリアン様と結婚式を続けた。


 その後の結婚式は披露宴も含めて、盛大に大成功の内に終わった。

 一番お金がかかったのは、神様の召喚へのお礼としての教皇様の献金だったわ。

 我ながらとても贅沢だった。何が贅沢って、私たちは愛し合っているのにそれを神様に改めて誓うために大金を積んだところかしら。


 でも、ジュリアン様は私を愛してくださって、死ぬまで私たちは愛し合う事を神様に誓えて、良い式になったと思う。


 結婚式は女のロマンですもの。


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 星月二日ほしづきふつか


 昨日は記念すべき結婚式だったのに、日記を書くのを怠ってしまった。

 けれど、素晴らしい一日だったもの。


 式ではジュリアン様の愛をきちんと言葉で確認できた。


 それに夜はたっぷりジュリアン様が愛してくださった。


 神様に感謝をささげて今日の日記を短く終わりにしたいと思う。

読んで下さってありがとうございました。

もし良かったら評価やいいねやブクマをよろしくお願いします。

また、私の他の小説も読んでいただけたら嬉しいです。

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