守城の名将:袁崇煥:第5章:北京の章①
◯1628年(明朝・崇禎年間)の幕開け
1628年、中国では新しい皇帝が北京にやってきました。彼の名前は崇禎帝。
前の皇帝が亡くなった後、国のリーダーになったばかりの若い人でした。
前の皇帝の時代は、政治がうまくいかず、国中が大変なことになっていました。
農民が反乱を起こしたりして、国はもうボロボロだったんです。
そんな中で、新しい皇帝は「何とかして国を立て直したい!」と強く思いました。
そこで、頼りになる武将や役人を集めて、国の改革を始めることにしたのです。
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・名将 袁崇煥の覚悟
特に期待されたのが、袁崇煥というすごい将軍でした。彼は軍を率いて、何度も戦いに勝って国を守ってきたベテランです。しかし、国を救うという大きな責任に、彼の心は重く、これからの戦いに強い覚悟を決めていました。
袁崇煥の周りには、個性豊かな部下たちが集まっていました。
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・個性豊かな仲間たち
祖大寿:皮肉屋で、何を言われても冷静です。
「やれやれ、また面倒なことになりましたな。どうせ俺が何とかするしかないんでしょうが。」
満桂:いつもハイテンションで、ちょっとハチャメチャな副将です。
「将軍、まかせとけって! オレ様がド派手にやってやるぜ!」
趙率教:おもしろいおじさんで、みんなを笑わせてくれます。
「いやー、将軍、ワターシの部下に任せてくれりゃ、もう大砲ドッカンドッカンですな。」
何可綱:気弱で、いつもお腹を空かせている補給担当です。
「ひぃ〜、将軍、また戦ですか? 補給、間に合うかなぁ…お腹空きましたね…。」
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袁崇煥の言葉
袁崇煥は、みんなの顔をじっと見つめ、静かに話しました。
「崇禎帝が俺たちに託した使命は、重い。国は乱れ、民は苦しんでいる。だが、俺たちが力を合わせれば、必ずや平和な未来を取り戻せるはずだ。」
満桂は興奮気味に言いました。
「将軍! 任せてください! ドンと構えていてくださいよ! オレ様が全部ぶっ壊してきますからね!」
祖大寿はため息をつきながら答えました。
「ふん、命を懸けて守るしかないですな。どうせそうしないと、閣下はまた無茶するでしょうからな。」
趙率教も声を上げました。
「将軍、ワターシ、どんな敵でも退かなかった事に気づきました! 意外とゴリゴリ系だった自分発見ですぞ!」
何可綱は不安そうに続けました。
「将軍、あの、その、焦らず慎重にいきましょうね。補給も、その、大変なので…。」
袁崇煥は深く息を吸い込み、拳を握りしめました。
「お前たちの言葉、胸に刻む。暗く長い時代を終わらせ、明るい未来へ進む。共に戦い抜くぞ。」
部下たちの決意が一つになり、新しい戦いが始まったのでした。
◯1628年――長城を遠回りして北京を狙うホンタイジ(ほん・たいじ)
冬の寒い風が吹く草原を、清の皇帝であるホンタイジが馬に乗って進んでいました。彼は、中国全土を自分のものにしようと考えている、とても決断力のあるリーダーでした。
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・ホンタイジの奇襲作戦
ホンタイジは馬に揺られながら、静かに言いました。
「万里の長城を遼東から突破するのは不可能だ。あの袁崇煥の奴がいる限りな。」
彼の隣にいたのは、いつも元気で明るい部下のマングルタイです。彼はホンタイジを深く信頼しています。
「じゃあ、どうするんですか、陛下?」マングルタイは興味津々で尋ねました。
ホンタイジは冷たい目で細めました。
「長城を避けて遠回りする。西側は守りが手薄だ。そこから急に攻め込んで、北京を狙う。」
近くには、冷静だけど少し心配性な参謀のダイシャンがいました。
「でも陛下、長城を遠回りするのは危なくないですか?」ダイシャンは心配そうに眉をひそめました。
ホンタイジは首を振りながら言いました。
「危険も計算に入れている。正面から攻めるよりも、この方が効果的だ。戦いは時に、賭けのようなものだと覚えておけ。」
ダイシャンは不安そうにうなりましたが、マングルタイは笑って肩をすくめました。
「心配しても仕方ないですよ。皇帝は一度決めたことは絶対に曲げませんからね!」
ホンタイジはその軽口を無視し、地図を広げて指を置きました。
「北京の城壁はとても頑丈だと知られている。だが、長城を正面から攻めても、たくさんの兵を失うだけだ。」
彼の目は、遠くの地平線を見つめていました。
「まずは守りが手薄な西側の隙間を突いて、北京にプレッシャーをかける。それが、俺たちの勝利の鍵となる。」
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・モンゴルとの連携
ホンタイジはさらに目を細め、草原の向こうに広がるモンゴルの土地を思い浮かべました。
「それに、モンゴルの色々な部族と仲良くなって、彼らの土地を安全に通ることができれば、俺たちの軍はもっと楽に進めるはずだ。」
マングルタイが感心した声で言いました。
「陛下、その作戦は本当にすごいですね!モンゴル族の力を味方につければ、敵も油断できませんよ!」
ホンタイジはかすかに微笑みながら答えました。
「そうだ。力で奪うよりも、仲間として引き入れる方が、はるかに効果的だ。これが、俺たちの戦いの秘策となる。」
冬の冷たい空気の中に、ホンタイジの強い決意が響き渡りました。広い草原を舞台に、歴史を変える大きな一歩が今、動き始めていたのです。
◯1628年
広大なモンゴル高原には、いくつもの遊牧民の部族が暮らしていました。彼らは馬に乗り、草原を移動しながら生活していました。しかし、部族同士の争いが絶えず、まとまることはありませんでした。
一方、北方の地では、ホンタイジ(ほん・たいじ)という勇敢なリーダーが率いる清という新しい国が力をつけていました。ホンタイジ(ほん・たいじ)は、いつか南にある大きな国、明を倒したいと考えていました。
ホンタイジ(ほん・たいじ)は、明の都、北京を攻めるための作戦を練っていました。しかし、明の国を守る万里の長城はとても堅固で、正面から攻めるのは難しいと考えていました。
「フッ…正面突破は愚策だ」
ホンタイジ(ほん・たいじ)は、静かにそう呟きました。彼の目は、遠くの空を見つめていました。
そこでホンタイジ(ほん・たいじ)が考えたのは、長城を大きく迂回して、モンゴル高原を通って北京に近づく作戦でした。しかし、そのためにはモンゴル族の協力が不可欠でした。
かつて、ホンタイジ(ほん・たいじ)の父、ヌルハチ(ぬるはち)はモンゴル族と何度も戦っていました。そのため、モンゴル族は清に対して警戒心を持っていました。ホンタイジ(ほん・たいじ)は、このわだかまりを解き、彼らと手を組む必要があったのです。
◯1628年
草原に吹く風と、皇子の野望
広い広いモンゴル高原――。そこには、いくつもの遊牧民の部族たちが馬とともに暮らしていました。
昼は空を翔ける鷹のように、夜は星の光に包まれて、彼らは草原を移動しながら生きていました。
しかし、そんな自由な民たちもまた、争いと無縁ではありませんでした。部族同士で馬や羊を奪い合い、ときには血を流すことさえあったのです。
そんな中、北の地で静かに力をつけていた者がいました。清という新しい国の王子――その名はホンタイジ(ほん・たいじ)。
父ヌルハチ(ぬるはち)の遺志を継ぎ、強い意志を胸に秘めた若き君主です。
彼の夢はひとつ。南にある巨大な国――明を倒し、天下に新たな秩序をもたらすことでした。
けれどその前に立ちはだかるのは、あの長い長い万里の長城。正面から突破するのは、あまりに愚かです。
「フッ……ワシが何も馬鹿正直に袁崇煥の奴と戦うしか能がない君主と思ったら大間違いだ。」
ホンタイジ(ほん・たいじ)は草原に立ち、遠くの空を見上げながら小さく呟きました。
その眼差しは、まるで地図の先を見通すよう――。
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やがて、彼はある策を立てます。
「長城の向こうを回り、北京へ至る道がある。モンゴル高原を通るのだ」
それは、まさに大きな迂回路。けれども、それができれば明の不意を突くことができます。
しかし――そこには大きな問題がありました。モンゴル高原は、多くの部族たちの領地。それぞれに独立心が強く、外の勢力には敏感です。
かつてホンタイジ(ほん・たいじ)の父、ヌルハチ(ぬるはち)は、彼らと何度も戦火を交えた因縁がありました。
それだけに、彼らを説得するのは並大抵ではありません。
でもホンタイジ(ほん・たいじ)は、違いました。彼は力だけでなく、言葉と心でも人を動かせる人物だったのです。
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ある日、清の陣にふたりのモンゴル族の代表がやってきました。
ひとりはホルチ――ホルチン部という東モンゴルの有力な部族の若き首領。
もうひとりはバヤル(ばやる)――たくましく寡黙な騎馬の達人です。
「やあやあ、ホンタイジ(ほん・たいじ)様。ご機嫌いかがです?」
ホルチ(ほるち)は、まるで長年の友人にでも会ったかのように軽やかな口調で言いました。
「……貴殿は、そのような世間話をしに来たのか?」
ホンタイジ(ほん・たいじ)は表情を変えず、静かに返します。
「いやいや、まあそう堅くならずに。バヤルの兄貴も、そう思うだろ?」
「ん?ああ……まあな」
バヤルは肉をかじりながら、曖昧にうなずきました。
ホンタイジは微かに笑い、話を切り出します。
「我々(われわれ)は、あなた方と協力したいと考えている」
ホルチの眉がぴくりと動きました。
「協力?女真族と俺たちが? へえ……面白い冗談だ」
「冗談ではない。我々(われわれ)は、あなた方の領地を通らせてもらいたい。そして……明を共に討とう」
その言葉に、ホルチとバヤルは顔を見合わせます。
「もし協力してくれれば、交易の自由も認めよう。馬や羊、塩や鉄も不足なく与える。
さらに……我が一族と、婚姻を結びたいと考えている」
ホンタイジ(ほん・たいじ)の言葉に、ふたりの目が鋭くなりました。
「婚姻、だと?」
「そうだ。我が族の娘を、あなた方に嫁がせることも厭わぬ。そして、我が妻として、モンゴルから姫を迎えたい」
その後、ホンタイジはモンゴル・ホルチン部の首長ジャイサンの娘――
のちの孝荘文皇后を妻に迎えます。
彼女は聡明で美しく、ホンタイジの信頼も厚く、
やがて彼の息子、順治帝を生みました。さらに、その孫・康熙帝の治世にも深く関わることになります。
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ホンタイジは、剣ではなく心で草原の英雄たちを懐柔してゆきました。
その策は、やがて北京へと続く大きな道を開くことになるのです。
草原の風が、彼の野望を運んでいくように――。




