【1分小説】村の秘密
小さな山村、雪月村は四方を深い森に囲まれた静かな場所でした。村人たちは皆、長い年月をこの地で過ごし、静かで平穏な生活を送っていました。しかし、村には誰もが知っているけれど、話すことを禁じられた秘密がありました。
ある日、桜は祖母から伝え聞いた古い伝説を思い出し、森の奥深くへと足を運びました。伝説によれば、森の中には「永遠の泉」と呼ばれる不思議な泉があり、その水を飲めば永遠の命を得ることができるというのです。
桜は祖母から伝えられた道を辿り、森の中を進みました。幾度も迷いそうになりながらも、やがて彼女は静かな湖畔に辿り着きました。そこには確かに、澄んだ水を湛える美しい泉がありました。
彼女は躊躇せずにその水をすくい、一口飲みました。すると、心地よい温かさが全身を包み、彼女の身体は次第に透明になっていきました。桜は永遠の命を得たのです。しかし同時に、彼女はこの地に留まることを強いられ、村の守護者となりました。
雪月村の人々は桜の不在に気付きましたが、誰一人としてその行方を追おうとする者はいませんでした。村の秘密は、次の世代へと静かに受け継がれていくのです。
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