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【3】ドラゴンナイト『剣』  作者: 生丸八光
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4話 伝説の剣

 マリアの機嫌(きげん)は益々悪くなって行く。スピックに金貨を戻す様に言うと巾着袋を取り上げ


「剣闘士にとって剣は命も同然よ!よく吟味して、これって思うのを買うの!」

と言い、今度は店主を睨み付ける。


「もっといい(やつ)を出しなよ!これ戦場から拾って来た剣でしょ!高いしボッタクってんじゃないわよ!」

 店主はマリアの剣幕を鼻で笑い


「ワシは、この商売を儲けの為だけにしとる訳じゃないぞ!拾った剣でも、ちゃんと修復して使えるようにしてあるし、値段が高い方が大事に(あつか)うじゃろ。いい剣が欲しいなら、もっと腕を磨いて強くなってからじゃ!初心者なら、この位が丁度いい!」


「誰が初心者って言ったのよ!この男は、強いの!無敵なの!だから、この店で最高の剣を見せろって言ってるのよ!」

とスピックの顔を見て

「でしょ!」

と言い、スピックは「そうだ!俺は無敵だ!」と言った。


「そうか・・すまんのう・・ワシは、てっきり初心者とばかり思っとったでな・・」

 店主は、スピックの顔をもう一度よーく見ると


「よし!分かった。最高の剣を持って来てやる!」

と店の奥に消え、2つの綺麗な布に包まれた剣を(かか)えて戻って来た。


 1つ目の布を広げると、細やかな彫刻に幾つもの宝石が埋め込まれ、キラキラ輝く剣が姿を現し、スピックの目も釘付けになる。


「おぉ!凄い・・」


「この剣は、もう数百年も前に滅んだメイランドって国の王子が持っていた剣でな・・」


と言いながら店主が鞘から剣を抜くと、細い片刃の刀身にまで埋め込まれた宝石の輝きにスピックの目も輝く・・・


「かつて地上が魔物に攻め込まれた時に、この宝石の輝きで魔物をおびき寄せ、次々と切り裂いたと言われる伝説の宝剣じゃ!」


 店主は得意げにスピックの目の前で何度も手首を返し、宝石をキラキラ光らせる・・


「どうだ~いいだろ~・・」


 スピックは目を輝かせ、すっかり虜になっていたが、マリアは

「ウソくさ・・」


 マリアは話を全く信じてなかった・・


「これに決めた!いくら?」

「ガナッシュ金貨50枚じゃな!」


「ごっ50枚って!」

 マリアと小僧が余りの高値にビックリしたが、スピックはマリアに払う様に言った。


「あんた本気なの!50枚よ!」

「うん!」

 迷いなく応えるスピック!


「まぁ・・あんたの金だし・・」

 仕方なしにマリアは巾着袋の金貨を数え出すが・・


「ちょっと、全然足りないわよ!35枚しか無い・・・」

「えっ?そうなの・・足りないのか・・」


 スピックは、残念そうに店主を見て

「・・35枚にまけてくれる?」

と聞いてみた・・

「う~ん・まぁ、いいじゃろ!」


 店主があっさり値引きを認め、巾着袋に手を伸ばしたが、マリアは渡さなかった・・


『おもいっきりボッタクられてる気がする・・』

「これ本当に伝説の宝剣なの?拾って来たんじゃないの・・」


「本物じゃわい!最高の職人達で造り上げた最高の剣じゃ!」


 マリアは(しばら)く考えると・・


「・・もう1本の剣を見てからにする!」

「そうかい!まぁ、それもいいじゃろう!」


 店主は、もう一方の布を広げ、3人は身を乗り出して覗き込む・・・


 出て来たのは、ただの古びた剣だった・・期待が外れ、がっかりした小僧は


「この剣の何処が最高なんですか?」


「コイツはなぁ・・伝説の聖剣じゃ!」


「伝説の聖剣!」

 言葉の響きに小僧の胸が高まる・・・

「どんな伝説です?」


「その昔、冥界から出て来た魔物によって地上は次々と支配されて行ったが、突如現れた男によって救われる事となったんじゃ・・その男は竜の子と呼ばれ、聖魔道士が作った剣で不死の冥王相手に勝利を収めた。その時の剣がこれじゃ」


 店主の話を聞いて改めて古びた剣を見た小僧は

「冥王を倒した剣・・凄い剣なんですね・・」

と感激していたがマリアは

「不死の冥王をどうやって倒したのよ!」


 疑っていた・・


「それは、この聖剣の力じゃ!」

と言って剣を手にした店主は、剣を見つめ


「聖魔道士の力が込められ、聖剣となった剣で切られた傷は(ふさ)がること無く血を流し続けたんじゃ。不死とは言え、深い傷を追った冥王の体は大量の血を流し続け、力が出せず姿を隠したと言われておる!」


と話し終えた店主は、小僧に聖剣を渡して


「どれ、その剣を抜いて見るかい?」

「いいんですか!」


 小僧は嬉しそうに剣を抜こうとしたが、抜けない。更に、力を込めたが抜けずにいるとマリアが

「私に貸して」

と力を込めたが抜けなかった・・


「ダメね、中で錆びて固まってるのよ・・」


 そう言って、スピックに剣を渡すと店主に

「この錆びた剣をいくらで売るつもり!」

と聞いた。


「その剣に金はいらん!剣を抜いた者にタダで譲るんじゃ!」

と応える店主の目の前で、スピックが剣を抜いて見上げていた。


「なっなっなっな~っ!おっお前さん!抜いたのかい!」

「うん!」

と鞘に納め店主に返す。


 受け取った店主が慌てて剣を抜こうとしたが全く抜けずに、もう一度スピックに渡し


「す・すまんが、もう一度抜いて見てくれんか・・」


 スピックが剣を抜いて見せると店主は呼吸を荒げ

「ハァ・ハァ・・素晴らしい・輝きじゃ・・」


 数百年の時を超え、錆びる事なく切れ味鋭い光を放つ剣に感動し、時を忘れ暫くじっと眺めていたが


「まさか、剣を抜く者が現れるとは・・」

と呟き

「その聖剣をお前さんに譲る!」

と言った。


「え?俺、要らないよ!欲しいのはそっちのピカピカ光ってる方だし!」


「なっ!いっ要らないって!たっタダで貰えるんじゃぞ!聖剣を!」


「要らない!」

と聖剣を鞘に納め店主に渡す。

「なっ!」


 まさか、断られると思わなかった店主は、気が動転し、目眩(めまい)におそわれ、フラ付きながら胸を抑える・・


「くっ・・苦しい・・」


 青ざめていた・・・






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