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七十斬


 終わらせる、過去からの因縁と妖刀のために命を弄びしかつての友の命と友の信じる妖刀(希望)を砕くべく真助は《狂鬼》に黒い雷を纏わせながら弥勒を斬るべく走り出した。

 

 終わらせるために走り出した真助に対して弥勒は《神災》の力を高めて増幅させながら妖刀を構え、構えた妖刀に高めたその力を纏わせると真助を迎え撃つべくその力をさらに高め、真助は弥勒が自身を倒すべく力を高めていることを理解しながらも敵を討つべく走るその足を止めずに迫ろうとしていた。

 

「鬼月真助ぇぇぇ!!」

 

 自らの命と野望を潰そうとする真助に対して邪魔しようとする彼に対する怒りと過去から抱かれていたであろう彼への憎しみが弥勒の力の増幅を加速させるかのように禍々しい力を彼の全身と妖刀から溢れ出させ、溢れ出たその禍々しい力が触れた地面は枯渇したかのように朽ち始めていた。

 

「マジかよ……!!」  

 

 禍々しい力はさらに広がろうとしながら大地を朽ちさせ、大地が朽ちる様を目の当たりにしたクライスは慌てて後退し、刀哉も危険を感じ取ると美琴のもとへ駆けつけると前に立って彼女を守るかのように構えた。

 

「千剣刀哉、アレは……」

「アレが《神災》の持つとされる生命を滅ぼす力だ。完成してしまえばその瞬間にここら一帯の生命が滅びるはずだったが鬼月真助の努力がそれを止めていた。だがそれを止めていたものがあの男の中の憎悪が増幅されたことで消されて溢れ出ているんだ」

 

「ではこのままでは……!!」

「いずれあの力は拡がり続けやがてオレたちも飲み込まれてその生命を奪われることになる」

 

「なら鬼月真助を止めなければ……

「心配ない。今のオレのマスターは負けない」

 

「え……?」

 

 刀哉の話を受けた美琴が弥勒を倒そうと迫っている真助を止めるべきだと発言しようとすると彼女のそばにいた空牙が何やら自信があるかのような言い方をし、空牙の言葉に美琴が困惑している中で真助は弥勒の中より溢れ出る禍々しい力の中へ自らの身を投じるように駆ける。

 

「鬼月真助!!」

 

 触れれば生命を滅ぼす力の中に入ろうとする真助の名を叫ぶ美琴、その声が聞こえていないのか真助は止まることなく駆け続けた。

 

 禍々しい力との距離はもはや目と鼻の先程度、引き返すことなど間に合わない。それほどまでに近づいた真助が《狂鬼》を振るとその刀身は禍々しい力を消し飛ばし、そして消し飛ばされた禍々しい力の残滓が闇になると真助の妖刀はそれを刀身に取り込むようにして黒い雷を強くさせていく。

 

「何、だと……《神災》の力を、消し飛ばしただと……!?

ありえない……オマエの能力では妖刀の力は消せないはず……!?」

「悪いな弥勒……オレの妖刀はその力すら進化させるんだよ」

 

 生命を滅ぼす禍々しい力を消し飛ばされた弥勒が激しく動揺している中で真助は彼の前に立つと妖刀を振り上げ、振り上げられた妖刀は纏う黒い雷を轟かせながらその力を高めさせるとその刃の鋭さをも強くさせていく。

 

「オレの力は魔力や能力を断ち切る黒の雷、壊れ消えた妖刀《血海》の力は『血を得る度に斬れ味を増す力』、この刀を手にするために打ち直した霊刀《號嵐》は『1の力を100の力へと増幅させる力』……この3つが合わさることで生まれたこの《狂鬼》の力は魔力と能力、そして妖刀の力すらも断ち斬り喰う力になったんだよ!!」

 

 《狂鬼》の力を明かした真助が黒い雷を轟かせながら勢いよく妖刀を振り下ろすと弥勒の体はその一閃で体を大きく抉り斬られ、そして真助の一閃が放つ力は弥勒の持つ《神災》へと迫るとその刃を斬り砕き破壊してみせた。

 

 破壊された《神災》の刀身は瞬く間に粉々に砕け散ると欠片も残すことなく塵となって完全な消滅を辿り、そして《神災》を手にしていた弥勒の体は真助の一閃で酷く負傷して血を流す中でその全身に亀裂にも似た不気味な痣のようなものを浮かばせると苦しそうに悶え始める。

 

「がぁぁぁぁぁあ!!」

 

 苦しみ悶える中で《神災》を手にし扱った罰を受けるかのように徐々に肉体が消滅し始める弥勒。弥勒の姿を前にした真助は彼の最期を見届けるようにしながら終わりを告げようとするが、そんな真助に対して弥勒は体が消え行く中で強く問い掛ける。

 

「……生命を軽く見てきたオマエへの罰だ弥勒。これまでオマエが駒のように雑に扱ってきた部下の苦しみを味わいながら消えろ」

「何故……何故だ真助!!私の描く世界が実現すればキミは心行くまで戦いを愉しめるのだぞ!?キミが求める強さを……強者たちと満たされるまで戦い続けられる世界が誕生するのに何故理解してくれない!?」 

 

 弥勒の理想世界、戦国乱世を築こうとした弥勒を何故理解しなかったのだと彼が問う中で真助は何を言うでもなく《狂鬼》を持ち直すと素早い突きで弥勒の額を貫き、弥勒の額を《狂鬼》が貫くと同時に彼の肉体の消滅が加速すると真助は冷たい眼差しを向けながら告げる。

 

「真の強さを知った今、オマエの言う理想世界にオレは価値を見出せない。それに今オレは既に満たされている……誰よりも強い1人の男に勝ちたいという願いで満ちているんだよ!!」

 

 真助は自身の言葉を告げる中で頭の中に一瞬だがヒロムの姿を思い浮かべると《狂鬼》に黒い雷を纏わせ、《狂鬼》が纏った黒い雷は力を高めて炸裂すると消滅していく弥勒にとどめを刺し、そして弥勒の体は彼の断末魔と共に完全に消滅してしまう。

 

 弥勒が消滅したその後、《斬鬼会》の主様として暗躍していた彼の立っていた場所に球体状の石が落ち、落ちた石はその衝撃で半分に砕けてしまう。

 

「……じゃあな、弥勒」

 

 かつての友であった弥勒、妖刀を旋すれ違いで1度殺めた者の完全な消滅を見届けた真助は静かに《狂鬼》を下ろし、そして……


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