六十七斬
真助の手により弥勒を仕留め妖刀《神災》を利用した計画が阻止出来たかのように思われたのに真助の一撃で追い詰められることすら計画に織り込んでいた弥勒の妖刀は完成したと告げられ、そしてその妖刀の力が真助とクライスの命を狩り取ろうと迫って今にも飲み込もうとしていた。
闇が2人を飲み込もうと迫る過程で闇が通ったその道筋にあった草木は枯れ朽ち果て、近くを飛んでいた小鳥は闇に触れた途端に動きが止まって地に落ちてしまう。
その光景を目の当たりにした真助とクライスは闇が危険だと感じ逃げようとするが闇はそんな2人を逃すことなく捕らえようとした。
「ま、まずい……!!」
「まさか話に聞いてた命を奪う力か!?」
「抗うことなど出来ない。この《神災》は生命を宿すものを等しく滅ぼす刀、その力はどんな力であろうと防げずどんな生命体であらうと拒むことは出来ない」
「弥勒……!!」
「凄んでも無駄だよ真助。いくら妖刀と縁が強いオマエでもこのオレの力からは逃れられない。オレの夢は叶わなくなるかもしれないが……この力が確かなものだと示すための礎になることを光栄に思え」
「ふざけん、な……!!」
(どうする!?アレが本当に完成された《神災》だってんならこのまま本当に終わっちまう!!この装甲野郎がヒロムからわざわざ薬を届けてくれて何とか出来ると思ったのに……何も出来ないどころか完全完成の手助けをしたなんて、笑えねぇよ……!!)
「……こんなところで、終わって……たまるか!!」
弥勒の妖刀の放つ闇に飲み込まれる寸前、真助が胸に抱いた言葉を口にすると突然闇がその全てを真助とクライスの前から音もなく消えてしまい、真助とクライスが何が起きたか分からずにいると弥勒の妖刀が突然雷のようなものを帯びると弥勒の体に衝撃を走らせていく。
「な……!?
馬鹿な……!?これは、どういうことだ……!?」
「何だったんだ今のは?」
「何が起きてる……?弥勒、オマエ……」
(何がどうなってる?あの《神災》は完成されてその力が使われたんじゃないのか?生命を等しく狩り取るはずの力が発動されたのにどうして……)
「どうやらオマエさんの能力が機能したようだな」
何が起きたのか、弥勒の身に何が起きてるのかを真助が疑問に感じていると新たな妖刀を生み出そうとしていた刀哉が真助のもとに現れ、現れた刀哉は弥勒を見ながら真助に向けてある可能性について話していく。
「おそらくあの妖刀は完成している。そしてその力はこの枯れ果てた草木やそこの鳥の死体を見れば発揮されてることが分かる。が、その力を容易く扱えることはありえないはずだ。妖刀を扱うにしても使用者の身体状態が大きく関わってくる……ならばオマエさんの一撃を受けたあの男は万全では無いと言えるんじゃないか?」
「まさか、さっき流し込んだオレの黒い雷の効力が出てるってのか?」
「魔力や能力を断つ力、それは体内に流し込まれれば能力を持たずとも魔力さえ宿しているのならば毒でしかない。ましてかつては世界を滅ぼしかけた程の危険な力を持った妖刀、そんな妖刀を扱うとなれば魔力は確実に体内になければ使い手と認められんだような」
「……そうか、オレのやったことは無駄じゃなかったんだな」
「そのようだ。そして……あの妖刀を壊しあの男を倒すのは今が好機ということになる」
「ああ、そのつも……」
そのつもりだ、と刀哉の言葉に向けて真助が返そうとすると彼はフラついてしまい、膝をついた真助は突然全身に痛みを感じ始めた。
「ぐっ……!?」
(まさか、力の増幅の限界が今来たのか!?空牙を霊刀として武装している間は力の増幅による負担が緩和されるはずなのに……)
「どうやらオマエさんの方も限界が来てるらしいな」
「待てよ千剣刀哉……!!オレはまだ戦える……!!」
「ああ、オマエさんならそう言うと思っていた」
「は?何を……
「鬼月真助!!これを!!」
刀哉の言葉を真助が不思議に思っていると美琴が走ってやって来、走ってきた美琴は真助に向かって何かを投げ飛ばし、投げられたそれは真助のもとへ落ちてその姿を彼へ晒す。
投げられた何か 、それは刀の形をしているものだったがその外観は焼け焦げたか錆び付いたかのような如何にも武器として扱えそうにない見た目をしたものだった。
「んだよ、これ……!?」
「鬼月真助!!それが貴方の新しい妖刀よ!!」
「は!?オレの!?こんな汚いのがか!?」
「汚いとは心外だな鬼月真助。それはまだ完全な完成を遂げていない未完の妖刀、オマエさんから預かった霊刀《號嵐》を分解して砕け壊れた妖刀《血海》の欠片を混ぜ合わせて刀の形を与えた器として完成しただけの状態だ。ここまでがオレと武上美琴が手を出せる範囲、そしてここに……オマエさんの力を施せば完成する!!」
「オレの力を……」
刀哉の話を聞いた真助は美琴が投げ飛ばしてきた刀の形をしているだけの異物に手を伸ばそうとし……




