六十五斬
弥勒の攻撃を防いだ光の中より現れた青年。青い髪を逆立て、その身に動きやすさを懸念したであろう形状の鎧を纏い突然現れた青年に真助が驚きを隠せずにいると青年は真助の手を掴むと彼を立ち上がらせて言葉をかける。
「間に合ってよかったぜ鬼月真助」
「……オマエは、誰だ?」
「オレ?オレはクライス・ガーディアス。姫神ヒロムによって選ばれた《センチネル・ガーディアン》の1人だ」
「例の新設された防衛戦力のことか?」
「おうよ。で、オレは姫神ヒロムに認められた最高の装甲として参加して……」
青年……クライス・ガーディアスが話している最中で 弥勒は闇を放ってクライスを消そうとするが、クライスは光を纏うなり右腕の鎧を可変させて 盾へ変えると闇を防ぎ止め、さらに左手の装甲を可変させて銃門を吐出させると光弾を放って反撃していく。
光弾が迫り来ると弥勒は禍々しい気を放って相殺し、クライスが現れたことに何か思うことがあるのか舌打ちをするなり冷たい眼差しをクライスに向けるなり何故現れたのかを問おうとする。
「……何故ここに現れた?オマエにはここに来る理由も目的も無いはずだろ?」
「まぁねぇな。オレからしたらオマエの目的とやらはどっか適当な場所で勝手にやってろ程度な事だしな」
「ならば何故……
「仕方ねぇって話だ。与えられた職務、役割を果たさなきゃ上に何されるか分からねぇからな」
「役割だと?」
「この国を危険に晒す脅威を迎え撃つ、それがオレのやるべき事だからな。ここでやらなきゃオレを選んだ姫神ヒロムに顔合わせ出来なくなる」
「あの男……あの覇王が関与してたのか!!」
「おう、アイツにここに向かうよう言われてな。けど来てよかったぜ……おかげで姫神ヒロムに貸し作れそうだしな」
「貸しだと……?ふざけたことを!!」
クライスの言葉を聞くなり怒りを顕にした弥勒はクライスに向かって闇を無数に放って彼を真助共々葬ろうとするが、弥勒が闇を放つとクライスは対抗するように光弾を無数に放って敵の攻撃を相殺し、さらに銃門に光を集めると強力な光弾を撃ち放って弥勒に直撃させる。
光弾の直撃を受けた弥勒は直撃の際に発生した戦塵によってその姿が見えなくなってしまうが、そんなこと構うことも無くクライスは何やら液体の入った小瓶を取り出すと真助に投げ渡した。
真助はクライスに投げ渡された小瓶を受け取ると中の液体が何なのか不審に思いながら見てしまい、見かねたクライスが液体の正体についてに明かしていく。
「そいつは黒川イクトが手配してくれた治癒促進剤だ。一般には出回ってない即効性の高い薬品でかなり高値らしいが、姫神ヒロムがオマエにって躊躇いなく大金出して手に入れてオレに渡すよう手配したんだよ」
「アイツ……こんなものを」
「今回の《斬鬼会》の件、アイツは忙し過ぎて加勢したくても微力な支援くらいしか出来ないらしくてな。オマエが個人的な理由で首を突っ込んだにしても仲間として助けてやる必要はあるとして最悪の事態を避けるための手配をしてたのさ」
「……これを使って必ず潰せってことか」
「そういうメッセージもあんだろうな。でも、オマエならやり遂げられるってあの男に信用されてるってことでもあるだろうよ」
「……そうだな」
(いつもそうだな。アイツはいつもオレたち仲間を信じてくれている。だからこそこうやってオレのやることに口出しせずに行く末だけを見届けようとしてくれている)
真助はクライスから受け取った小瓶の蓋を開けると中の液体を飲み干し、真助がそれを飲むと彼の体に少しだけ傷みが走り、痛みが走ると真助の体の傷は少しだけ残る程度にまで瞬時に回復していく。
傷が軽度にまで治まると真助は霊刀《空牙》を強く握って構え、真助が構えるとクライスは嬉しそうに笑みを見せると真助の隣に並び立って構えて弥勒を倒すための作戦を話していく。
「あの男の事はオレよりもオマエが詳しいし、攻撃面でならオマエの方が優れてるだろうからアイツを斬るのは任せる 。代わりに防御面ではオレが優れてっからアイツの攻撃は全てオレが防ぎ止めてやるよ」
「いいのか?そんなこと……」
「オレは《センチネル・ガーディアン》において最高の装甲として圧倒的な防御力を有している能力者だ。こんな野郎の攻撃くらい余裕だぜ」
「……そうか。なら任せていいよな?」
「任されてやるよ。その代わり……とっとと斬り倒せよ!!」
弥勒からの攻撃を一身に受け止めると申し出たクライスが光を纏うと全身の装甲が強度を増し、さらに頭部には騎士のような意匠の仮面が 装備される。
真助は黒い雷を強く纏うと戦闘態勢に入ったクライスと共に弥勒を倒すべく走り出し、2人が動き出すと弥勒は苛立ちながら闇を放とうとする。
「何人集まろうが無駄なことを!!」
「無駄かどうかは試してやるよ弥勒!!」




