六十斬
真助がこれまで倒してきた《斬鬼会》の妖刀使いは彼が《斬鬼会 》の企みを止めるためにとやっていたはずがそれすらを利用した主様の計画だったと明かされ、主様が自身の企みを語る中で真助は敵の言動が許せず怒りを募らせていく。
「オマエ……自分の欲を満たすためだけに仲間になった人間を平然と騙してたのか!!」
「騙してなどいない。私は彼らに《神災》が如何にして出来上がるかを話さなかっただけだ。彼ら彼女らには妖刀を集めることで理想世界が実現すると話していたし斬甲についても成長の仕方次第では姫神ヒロムを打破出来る存在に成り得るだけの素質があった」
「だがオマエは事実を隠してたんだろ!!《神災》のこと、さっきのアイツが最初からオマエの欲のための犠牲になることを!!」
「斬甲に関してはキミも防げたことだ。キミが情けなどかけずに殺していれば器としての価値は無くなり私にとっては大きな損失になっていた。新型の妖刀4本に蓄積された戦闘実績があるだけの状態になってしまい、私は一から器になる人間を探さなきゃならなかったんだ」
「オマエ……!!」
「どうやらキミは姫神ヒロムに仕えたことで戦士としての覚悟が不足してしまったらしい。私の 知る以前のキミなら躊躇いなく人を殺めていたはずなのだが……まさか私の事や《神災》の事、《斬鬼会》についての情報欲しさに躊躇ったのかな?」
「この……っ!!
あぁ……情報のために躊躇って悪いかよ?」
何を言おうと目の前の敵は真助が何を言うのか手に取るように把握していたかのように幾つもの言葉を並べるように流暢に語り、主様に対して反論しようとしても自分の言葉を語ろうとしても所詮は相手の手中に嵌るだけだと考えた真助は内心で怒りを高めながらも冷静を装うようにして話を合わせるように言葉を返そうとした。
「オマエの企みのせいで情報持ってそうな人間は限られてるし戦えば尽く消えて何も聞き出せなかった。妖刀が消えても生きてたアイツが頼りになると思ったからオレは殺さなかったんだよ」
「やはりキミはそう判断したんだね。いや、その判断を責めたり咎めたりするつもりは無いが残念だとは思うよ。剣士としてのキミは落ちるところまで落ちたと感じさせられたのだからね」
「落ちたつもりは無い。そもそも、オマエはオレの何を知っている気で語ってるんだよ?」
「妖刀使いとしてのキミのことも1人の人間としてのキミもよく知っているよ。だからこそ私はキミが落ちたと語ったのさ」
「大きく出たもんだな」
「事実を述べているだけさ。現に今のキミは戦いにおける生殺与奪の権利を手放しているだろう?」
「どうかな。少なくともその権利とやらが必要な時はしっかり持ってるだろうがな」
「それはないな。何故ならキミは……
「「誰かの命を奪えば必ず誰かに命を奪われる」」
「……って言いたいんだろ、主様?」
「……っ……!?」
これまで話を合わせるように言葉を返していた真助がまるで先を読んだかのように主様と一語一句同じ言葉を口にしたことによって主様が想定していなかったかのような反応を見せ、その反応を見た真助はため息をつくと主様に向けてある話を語り始める。
「最初の妖刀使い……矢如月って野郎を倒した後にオマエらが《血海》の砕け散った欠片を集めてることを雑魚から聞き出した。そこから砕千ってのを倒して絡繰呪装機を介してオマエが言葉を発し、千剣刀哉が《神災》のことを明かした。そこまでは別に何も不思議には思わなかったが3人目の妖刀使いの弥咲ってのと出会う前に1つの謎が芽生えた」
「倒した妖刀使いの名前を覚えていたのか……!?」
「オレは人の名前が覚えられないって騙されたろ?生憎だがオレは戦った相手の事はその戦いを通して覚えるようにしてるんだよ。で、話を戻すが弥咲が現れる前に寝てたオレが寝ぼけてる中で千剣刀哉が話してるのが聞こえたんだよ。オレの中には妖刀に惹かれる強い力があって《血海》に巡り会ったって話がな。だからオレはこう考えた……《血海》の力を妖刀越しに受けた人間の体内に偶然残してるって奇跡的な可能性もあるんじゃないかってな。弥咲ってのが現れてその考えがさらに加速させられた。あの女はオレが《血海》を手に入れたあの日の現場で殺人鬼から生き永らえた人造人間だった」
「……それで答えに 辿り着いたのか?」
「ああ、おかげさまでな。あの女は自分の家族を奪った殺人鬼からオレが妖刀を持っていったと思っていた、本来そんなもの知るはずのない女が知ってる理由……それはその時そこにあった刀が妖刀だと知る人物が話したからだってな。それに弥咲が今の言葉を口にしたことである程度オマエが何者かは察しがついた」
「そうか。まさかキミに見抜かれるとは……」
「まさかまさかで驚きだが……その面拝ませろや妖風弥勒!!」




