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五十六斬


 ヒロムに教えられたとされる技で斬甲を仕留めた真助。その一撃を受けた斬甲は全身に痛みを感じるとさらに血を吐き、さらに激痛が走ると苦しそうに息を吐きながら倒れそうになる。

 

「こ、こんなこと……」

「驚くよな?発勁ってのがこんなのかどうか知んねぇけど覇王式って付いてるくらいだからヒロムの独自のものなら技の意力だけで十分だわな。すげぇだろ?相手の内部に衝撃を叩き込むと同時に体内の水分と血液を刺激し、魔力の流れが最も集まる場所を刺激して魔力の流れをも乱す荒業。覚えておいてよかったぜ」

 

「……ありえない……!!

こんな技、あったとしても……当てるなんて普通、無理だろ……!?」

 

「生憎、オレの中で普通とかそういうのは無いんだよ」

「くっ……」

「そろそろ決着つけようか。今ので内側はかなりボロボロだろ?これ以上オマエが動けないならもう続ける意味は……

「……いいや、まだこれからだ」

 

 真助の言葉を遮るように斬甲が言うと消えたはずの彼の不気味な力が消えかけた焔が再燃するように斬甲の体から溢れ出し、さらに斬甲から強い殺気が放たれると天から闇と共に何かが飛んできて斬甲を守るように真助に襲い掛かる。

 

「っ!!」

 

 何かが飛んでくると真助はすぐに避けて得体の知れぬ何かを警戒するように距離を取り、真助が距離を取ると斬甲は先程の一撃を受けたはずの体で立ち上がると飛んできた何かを掴み取る。

 

 斬甲が掴み取ったもの、闇と共に飛んできたのは青い太刀だった。

 

 斬甲はその太刀を手にするなり抜刀し、太刀が抜刀されると斬甲の全身は禍々しい気を纏いながら凄まじい力を放出し始める。

 

「……あれがアイツの妖刀か」

(この殺気の強さ……ヒロム直伝の内部破壊を受けて立てなくなったはずなのにそれすら覆してやがるな。殺気の感じからして魔力の乱れは戻ってアイツの変異させる力は戻ってるはずだから厄介なことになったな。能力と妖刀、かつてのオレが戦いにおいて軸にしていた戦い方を目の前でされるとはな)

 

「ったく……ここからが本番ってか」


 斬甲が手にしたのは妖刀、それを理解した真助は斬甲の力はここからさらに高まるとして戦いが激しくなるだろうと考えると黒い雷を強く纏いながら走り出し、走り出した真助は斬甲が動くよりも先に攻撃を仕掛けて敵を制圧しようとした。

 

 しかし……

 

 真助が斬甲に接近すると突然彼の纏う黒い雷が斬甲の持つ太刀の方とへ流れていき、流れていく黒い雷はそのまま敵の太刀の刀身へと吸収されていく。

 

「!?」

 

 何かおかしい、黒い雷の異常にそう感じた真助は突然足を止めると警戒して動きを変えようとし、真助が動きを変えようとすると斬甲は太刀を素早く振って大地を穿つほどの強い一撃を放って真助を仕留めようとした。

 

 瞬時に危険を察知した真助は動きを変えようとしたことでその一撃を受けることなく躱すことが出来たが大地は酷く抉られ、その光景を目にした真助は斬甲の太刀の秘める力の強さを実感させられる。

 

「ただの一振りでこの威力かよ……!!」


「まだ驚くなよ」

 

 斬甲の一振り、その一撃を目にした真助が驚いていると斬甲はまだこれからだと言わんばかりに太刀に力を集めると勢いよく振り下ろし、太刀が振り下ろされると大地を破壊するほどの威力の一閃が放たれて真助に迫っていく。

 

「この……っ!! 」

 

 真助は迫り来る敵の攻撃を迎え撃つべく黒い雷を全身に纏い直して構えようとするが真助が纏い直した黒い雷はまたしても彼の体から離れるように斬甲の方へ向かって流れ始め、真助から離れた黒い雷は斬甲の放った一閃に取り込まれるとその一撃の力を高めさせていく。

 

 纏い直した黒い雷すら自身から離れた以上迎え撃つのは不可能と判断した真助はすぐに地を蹴って高く飛んで避けようとするが斬甲の一閃が迫った際に生じた衝撃波が直撃して真助を吹き飛ばし、吹き飛ばされた真助は勢いよく倒れるも転がるようにして受け身を取って立ち上がって構え直した。

 

 一閃の直撃は免れたもののその余波で生じた衝撃波を受けたことで真助は少し負傷してしまい、手も足も出ない真助を前にした斬甲は太刀を構えると冷たく告げる。

 

「最初に教えたはずだ。新たな刀がなければオマエの勝利する筋書きは訪れないってな。今オマエの手に新たな刀である妖刀は無い。周囲の魔力と能力を喰らって力に変えるこの妖刀《真滅》を手にした以上、もはやオレの勝ちは揺るがない!!」

 

 太刀……太刀の妖刀《真滅》を手に自身が優位であることを語り殺気を強く放つ斬甲。斬甲の言葉に真助が返せずにいると斬甲は妖刀を強く握りながら戦いを終わらせようと振り上げようとした。

 

「今度こそ終わりだ鬼月真助。オマエは……

「勝手にオマエの勝ちにしてんなよ」

 

 斬甲の言葉を遮るように真助は言葉を発すると右手を天に掲げ、真助が右手を天に向けて突き出すと彼のもとへ黒狼の精霊・空牙が現れる。

 

 そして……

 

「まだ、オレの勝利への可能性は途絶えてない」

「刀の無いオマエには何も……

「いいや、刀ならある。行くぞ空牙……抜刀!!」

 

 斬甲の勝利への確信を覆そうとするかのように真助が叫ぶと空牙は声高く吠えながら黒い雷となって真助の周囲を駆けて彼の右手へと向かっていき、黒い雷となった空牙が向かってくると真助はそれを右手で掴み取って勢いよく振り抜く。

 

 真助が振り抜くと彼の掴んだ黒い雷は柄部分に狼の意匠を持った刀身の黒い刀へと変化を遂げていく。

 

「なっ……刀、だと……!?」

「言い忘れてたな。オレの精霊の空牙はただの狼じゃねぇ。オレの力に呼応して刀へと変化する精霊……霊刀《空牙》としてオレの力となる精霊なんだよ!!」


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