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五十五斬


 また、昔の話……

 

 ヒロムに出会ってからしばらく経った頃だ

 

「オマエ、刀に頼り過ぎてんだよ」

 

 ちょうど妖刀を……愛刀にしていた《血海》が砕け散って自分の武器が無くなった時、今後の為にとヒロムやガイたちと模擬戦を行った。模擬戦中は代わりの刀を借りて挑んでいたのだがその模擬戦終わり、ヒロムは疲れた素振りもなくオレに話しかけてきた。その時のヒロムの『刀に頼り過ぎている』という発言の意味を理解出来なかった。

 

「刀に頼り過ぎてる……?そりゃ剣士なら武器を使うんだし当たり前だろ?」

「いいや、オマエのそれは言い分として破綻してる」

「どこがだよ?現に……

「剣士の強みを活かすには刀剣が欠かせないのは事実だがそれでも人間という肉体においてそれらは外付けの付属品でしかない。付属品が無くなれば剣士であれ何であれ依存性が高ければ高いほど無くなった時のダメージは大きくなる」

 

「例え話だろ?」

「ならその例え話だがオマエの手から刀が消え、オマエが素手で武器を持つ人間に挑むとなればオマエはどう対処する?」

「相手の武器を奪えばいい」

 

 刀が無くなった場合にどう対処するか、その答えとしてオレは相手の武器を奪うという答えを提示した。だがヒロムはその答えを聞くとため息をつくなりオレの提示した答えを訂正していく。

 

「これからオレたちが戦う相手は確実に場数を踏んだ経験者、自分の扱う武器を奪われるような油断はしないと考えておくべきだな。武器が無くなったから奪えばいいなんてのは三下の発想だ」

「ぐっ……」

「大体、オマエを相手にするならば敵はオマエにとって相性の悪い武器を手にしてるはずだから仮に奪い取れたとしても扱えないって可能性が大いにある。そういう意味では武器を奪うって発想は短絡的で勝機を捨てるに等しい愚行だ。オレたちは敵にある程度情報が割れてると思っておかないと痛い目を見るぞ」

 

「けど……

「それにこれからオレたちに仕掛けてくる敵はほとんどが能力者だから武器だけでなく相手の能力があることも視野に入れて考えろ」

「忘れてねぇか?オレの能力は魔力を断つ、つまり相手の能力を斬り潰せるってことだ」

「それはあくまで肉体から放出される放射系や肉体に纏う強化術といった外部での話だ。表皮の硬化や軟体化といった体の性質を変える内部系にはまず届かないことを忘れるなよ?」

 

「……人体の中に能力を打ち込めばいいだろ?」

「短絡的だな。たしかに刺突等であの黒い雷を刺し打ち込むなりしてその一部を体内に流し込めば可能だが鋼鉄のように硬化した肉体にどうやって通すつもりだ?」

「それは……

「血を浴びれば斬れ味を増し続ける《血海》のような都合のいい武器は無い。オマエがこれから手にする武器は何の力もない使用者の技量が問われる武器だと思っておかないと命を危険に晒すことになるぞ」

 

「……そこまで言うなら聞かせてもらおうか!!オマエならどう対処するかを!!」

 

 ヒロムの言葉に反論することが出来ず一方的に言われるオレは若干イライラして思わず強い言葉をぶつけてしまった。

 

 少しして言い過ぎたかと心の中で反省しようとしたがヒロムは小さくため息をつくとオレの言葉に対する答えを語り始めた。

 

「武器に頼らない、相手の能力に左右されないものを技術として身につければいい。オマエは今まで『能力』と『武器』という2つの要素で強さを保ってきたがこれからはそれを変えれる新しい要素を取り込めばいい」

「新しい要素……」

「そうだな……例えば、外付けの刀を手にした剣士ではなくその身を刀として戦える技量を持つ剣士になるとかな」

 

「オレの体を……刀に?どうやって?」

「生身でできる範囲として挙げても名に刀とつく手刀でも斬ることは出来ないし打撃で終わる。けど……もし、やり方1つで相手の能力との相性も何もかもを無視して相手の内側から壊す穿つための矛にもなる技を持っていたらどうだ?」

 

「あるのかよ?そんな都合のいい技が?」


 ある、とヒロムは一言即答するとオレの胸に拳を突きつけ、ヒロムはその状態でオレにある技のことを解説していく。

 

「この技は能力の無いオレが能力者の能力を打ち破るために根本である相手の力の源を断つために編み出した技だ。能力は魔力というエネルギーを消費して発動される、その魔力は人の生命力がもっとも強い部分を必要以上に刺激してやれば流れを乱れさせることが出来る」

「じゃあ、オレの能力を外側から傷つけて内側に流し込むのと同じことが素手で出来るってことか?」

「そうだ。しかも外傷なくただ正しくぶつけるだけでいい。打ち込み方が正しくその力が強ければその衝撃は人間の肉体の大部分を構成する水分や体内を流れ走る血をも痛めつける。肉体の内側を壊す、それを完全に成し遂げる技だ」

 

「……っ!!」

「オレとガイに負けない戦闘センスの高さを持ってるオマエなら覚えられるはずだ。この技、名は……」

 

 

 

 ******

 

「オマエ……何を、した……!!」

 

 吐血して膝から崩れ落ちていく斬甲。何が起きたか分からない斬甲が真助を睨む中で彼の纏う不器用な力はその力を維持出来ないのか乱れながら消え、真助は首を鳴らすと彼に何をしたのかを話していく。

 

「驚いたか?いや、驚くよな?

体を内側から壊されるんだからよ」

「何をした!?オマエの能力にこんな力は……」

「能力に頼らない破壊の技、オマエが倒したいと望んでるヒロムの考案した対能力者対策の覇王式発勁、技の名は『覇王刃撃』。アイツが言うには人間なら確実に仕留められる荒業だぜ」

 

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