五十一斬
空牙の案内によって来た道を引き返しながら敵の迫りつつある地点に向かおうとする真助。数分ほど走ると真助の視界に空牙が確認した《斬鬼会》の兵士たちが捉えられ、真助は敵を補足すると距離を詰めるべく加速する。
その真助の接近を敵も目視で確認したらしく移動を止めて武器を構え始め、真助は黒い雷を全身に纏うと敵を一網打尽にすべく早々から仕掛けようとした。
「オマエら雑魚は……お呼びじゃねぇんだよ!!」
真助は黒い雷を撃ち放つと《斬鬼会》の兵士たちを数人蹴散らし、蹴散らした兵士が倒れると真助はそれに近づいてそれらが所持していた武器……とくに刀を選んで拾うと構えて兵士たち斬り掛かり、真助の接近と攻撃に対応しようと構えていたにも関わらず真助の黒い雷による襲撃と刀の奪取からの武相・そして剣技を前にして迎撃すべく構えていたはずなのに為す術なく倒されていく。
こうなったら、と作戦を変えたと思われる兵士たちは真助と共に来た空牙を先に仕留めようと動こうとするがその空牙も黒い雷を纏うと高速で駆けながら爪による攻撃で返り討ちにして倒していく。
「ふん、オレなら楽と思ったかマヌケが」
「オラァ、出て来いや4人目の妖刀使い!!」
力の差は歴然、真助と空牙は瞬く間に兵士たちを一掃しその場に倒させるとこの先にいるであろう《斬鬼会》の東西南北の『北』名を司る4人目の妖刀使いのもとへ向かおうと駆けていく。
「雑魚は飽きた!!やるなら本丸だ!!」
(どうせ近くまで来てオレが来るのを待ってんだろ?ならお望み通りこっちから向かってやるよ!!)
「さっさと見つけ……」
《斬鬼会》の4人目の妖刀使い、それに位置する敵を討つために先に動こうと考える真助だった。が、その真助は空牙とと共に走る中で両者揃って突然足を止めてしまい、そして真助と空牙は足を止めると揃って向かおうとする方向とは違う方へ体を向けて構えてしまう。
真助と空牙が向いたその先には……
なんと焚き火を起こし肉を焼いている青年がいたのだ。ボサボサの黒髪、どこかの民族衣装にも思える青い装束を纏った藍色の瞳の青年、その青年は真助と空牙の存在に気づきながらも肉を焼き続けていた。
「コイツ……!!」
「んん……?なんだ、来たのかよ。ちょっと待てよ」
少し前に戦闘が行われていた場所から離れてるとはいえこんなところで何故火を起こし肉を焼いているのか、青年の行動が謎でしかない真助と空牙は警戒心を高める他なく、こんがりと焼けた肉に喰らいつく青年は真助と空牙の存在に気づくと肉を食べながら彼らに話し始める。
「モグモグ……こっちから行かなきゃとか思ってたのにそっちから来たのか?
腹ごしらえでメシにしようと思ってたのに……食うか?」
「……オマエが《斬鬼会》の4人目の妖刀使いか?」
「4人目?あー……オマエから見たらオレは4人目か。一瞬何の話か分かんなかったわ」
「あ?」
「オマエの言う4人目の妖刀使いってのは『鬼月真助が出会った4番目』ってことだろ?オレはそれを理解出来なかったんだよ」
「あ?だから……
「オレは斬甲、《斬鬼会》の北門を担う妖刀使い……で、四門においては最初に妖刀に選ばれた妖刀使いだ」
「最初に妖刀に選ばれた……!?」
「おう、今言った。てか肉食うか?」
いらねぇ、と真助は青年……斬甲に冷たく返すと右手に黒い雷を纏わせながら手刀を構え、真助が手刀を構えると斬甲は新しい肉を焼こうと段取りをしながら話の続きを進めていく。
「まぁ、あの人に《神災》の完成を企みせるきっかけをつくったオマエだから教えてやるけど、オマエのここまでの戦果はあの人の想定内のことだ。で、オマエとオレが遭遇するのもあの人の思い描く筋書きの中にあるってわけだ」
「ならオマエがオレに倒されて消えることもその筋書きに含まれてんだよな?」
「そうだな。たしかにその分岐の可能性は聞かされているが、今のままならそちらの筋書きが進むことは無い」
「あ?どういう……
「オマエの手に新たな刀があればオマエが勝つという筋書きに進めたがそれが無い以上オマエは敗北から逃れられない。悪いことは言わない、あきらめて降伏しろ」
「……断ったら?」
「仕方ねぇから倒すだけだ。こっちもこっちの仕事があるからな」
肉を食い終えた斬甲は立ち上がると冷たい眼差しを真助に向け、斬甲の眼差しが真助に向けられると燃え盛っていた焚き火は一瞬にして消え、そして真助と空牙はその全身に凄まじい殺気を浴びせられる。
「!?」
(んだよ、この殺気……!!さっきまでこんなのを隠してたってのか!?
それにアイツ……まだ妖刀を抜いてねぇんだぞ!?)
さて、と斬甲は首を鳴らすと殺気に驚く真助を見ながら拳を構え、構えた斬甲は真助を倒そうと走り出す。
「楽しませろよ鬼月真助……オレは他のとは違ぇぞ?」




