五十斬
現在……
真助は刀哉から新たに生み出す妖刀が小太刀の霊刀《號嵐》を一度分解した上で彼の持つ妖刀《血海》の欠片を一体化させて完全に新しい妖刀を生み出すと聞かされ、新たな妖刀の生み出し方を聞かされた真助は刀哉が生み出すとされる新たな妖刀に期待を抱いていた……のだが、真助は期待を抱くと同時にある疑問を抱いていた。
「……てか可能なのか?元々別々だったものを1つにするなんて、そんなこと可能なのか?」
「それは既にオマエさんが実証して可能であることを示していることから問題は無い」
「でもよ、妖刀と霊刀は元々相反する存在同士なんだろ?
たしかにオレは一時的にでも可能にしてたか知らねぇけど常に維持させるってなると話変わらねぇか?」
「たしかにオマエさんの危惧している事は見落とせない問題になる。だがしかし、妖刀と霊刀を単に組み合わせるだけで起きるという問題だと分かってしまえば解決策はある 」
「そんな都合のいいものがあるのか?」
「オマエさんだよ、鬼月真助。オマエさんの存在とその身に秘めた能力が鍵となる」
「オレと……オレの能力の《狂》がか?」
「信じられんかもしれんがオマエさんはどうやら産まれた時から妖刀に選ばれた特別な存在らしい。オマエさんが妖刀を手に出来たのは偶然ではなく、オマエさんの中のその素質と妖刀が惹かれあったというべきなほどにな」
「……そうか。まぁいい、運命とかそんなもんは信じねぇけどオレにやれることがあるならやってやるよ」
「うむ、では……」
「ちょっと待て」
刀哉が話を進めようとすると真助の精霊・空牙が現れ、現れた空牙は真助に何かを伝えようと話始める。
「マスター、敵が迫っている。数はざっと50、妖刀の気配は無いが恐らく従えてる人間が奥にいると思われる」
「追っ手か?」
「ここに至るまでの道筋を見つけられていない様子だったしオレの気配にも気づいていなかったからおそらくは千剣刀哉の活動拠点の目星をつけた上での出現と思った方がよさそうだ」
「……どうする千剣刀哉?ここに来られると面倒なら止めるしかないぞ」
「待ちなさい鬼月真助。アナタはここに残って妖刀を完成させなさい」
敵の接近に対して動こうと考える真助を止めるように美琴はここに残れと伝えるが、真助は美琴の言葉を受けるとため息をつくなり反論した。
「じっとしてるのはつまらないから却下だ。それに雑魚を指揮してるのは4人目の門の妖刀使いに違いない、オレとしては東西南と仕留めたからには来たも仕留めておきたい」
「変なこだわりを披露してる場合じゃないわ。それにアナタは刀が無いのよ?千剣刀哉がいないと能力に耐えれず壊れる刀の補充も出来ない、奥の手の霊刀も妖刀の一部になる以上手放さなきゃならない……つまりアナタは丸腰で挑むことになるのよ?」
「だから?」
「私が何とかして時間を稼ぐ。その間にアナタは……」
お断りだ、と真助は美琴に冷たく言うと来た道を引き返そうとし、引き返すように歩き始めた真助は刀哉に自身の新たな妖刀に関して幾つか尋ねていく。
「千剣刀哉、オレが戻るまでに大体の形にまで持ってってくれるよな?」
「大体ってのは、どういう事だ?」
「オマエはオレの存在と力が鍵になると言った。けどそれは言い方を変えるならオレ無しでもある程度なら形に出来るってことじゃねぇのか?」
「可能は可能だが失敗の可能性は高いぞ。何せ《號嵐》を分解して無数の欠片に変えた後に《血海》の欠片を混ぜ込むように一体化させるのだから下手をすれば失敗することも……
「ならオレの存在と紐付られるものがあればいいよな?」
刀哉の言葉、妖刀を生み出す上での危険性について語るその内容を最後まで聞こうとせずに真助は小太刀の霊刀《號嵐》を取り出すとその切っ先で自身の左手の掌を軽く切って血を流させ、その血を《號嵐》の刀身と自身の持つ妖刀《血海》だった欠片に浴びさせると刀哉に投げ渡す。
乱暴に投げ渡されたそれらを刀哉が受け取ると真助は無言で頷き、真助の言いたいことを把握した刀哉は呆れてため息をつくと諦めたかのように話していく。
「……オマエさんには道理も常識も通じんようだな。だが、最低条件は満たしたと思えば失敗の可能性は無いに等しいところに達した」
「なら離れていいよな?」
「……オマエさん、ここまでするからには秘策があるんだろうな?」
「そうだな……少なくともオレの中ではヤツらが《神災》を完成させるよりも先に自分の妖刀を手に入れる算段くらいはついてる感じだな」
「ではその算段とやらを信じるとしようか。武上美琴、オマエさんの手を貸してもらいたい」
「私は鬼月真助に加勢……
「鬼月真助の妖刀を生み出すためにはかなりの力を打ち込まなければならないはずだ。オマエさんの能力があればその力が発揮出来るとオレは思っている」
「でも……」
「心配すんなよ武上美琴。オレが負けるわけねぇんだからよ」
「……必ず刀を取りに戻ってこい、約束だぞ?」
「当たり前だろうが。空牙、案内しろ」
美琴の言葉に当然のように言葉を返した真助は空牙に案内を任せると進んでいき、真助から物を受け取った刀哉は美琴と共に妖刀をつくるための場所に向かおうとする。歩き出そうとした美琴は振り向くと真助の背をじっと見つめ、少しの不安を抱く彼女は彼を信じて刀哉の後を追って行く……




