四十九斬
《斬鬼会》の主様と兵士たちを待ち受けるかのように現れたヒロム。
ヒロムの出現に兵士たちが億しながら武器を構えようとすると主様手を叩きなが前に出て兵士たちを守ろうとし、兵士たちを守るように前に出た主様を冷たい眼差しで睨むヒロムは首を鳴らすと敵に向けて告げる。
「大人しく潰されろ。オマエの目的はここまでだ」
「何も知らぬ人間が何をすると言うのかな?キミは私の目的を知らない、ならば止める理由は無いだろ?」
「まぁ、知らなかったら止める意味もないわな。けど……ウチの狂犬が無駄に暴れ回ってるおかげでこっちにまでオマエの目的が流れてきたんだよ。《神災》、この世にあっては行けない妖刀を完成させるのがオマエの狙いなんだろ?」
「……なるほど、鬼月真助と千剣刀哉か。どちらかが何かしらの方法でキミに伝言したということか」
「おかげであの戦闘バカがどこにいるか分かって呆れさせられたよ。刀欲しさに勝手なことすんだからな。しかもまさかの刀哉まで絡んでんだからなぁ」
「そうか、彼はキミと同じ国の防衛戦力に選ばれたものだったな。どんな気分かな?国の犬になった気分は?」
「犬になった気は無い。アイツら如きじゃオレたちは飼えねぇかな」
「……なるほど、流石は覇王の異名で呼ばれる男だ。その堂々とした態度、自信……王を名乗る器としてたしかなものらしいな」
「器とかどうでもいい……とりあえず潰されろ」
「潰れるのは……キミだ!!」
主様は闇をその身に纏うと高速で駆けながらヒロムへと接近し拳撃を放とうとする……が、ヒロムは主様が駆け出すその瞬間に音も立てずに一瞬で敵に迫るとその勢いのまま蹴り飛ばし、蹴り飛ばされた主様は受け身を取って構えようとするもヒロムは主様が構えることを許さぬかのように一瞬で間合いを詰めると連撃を放って追い詰めようとし、ヒロムが連撃を放つと主様はそれを受けまいと軽快な動きで躱しながら彼から離れることを試みようとする。
が、ヒロムは主様を逃がす気は毛頭無く連撃を加速させ、連撃が加速しながら迫り来ると主様は闇を強く放出するとヒロムに向けて衝撃波を飛ばし反撃して形勢逆転を狙おうとする。
衝撃波が放たれるとヒロムは主様の前から姿を一瞬で消すほどの速度で駆けて容易く躱し、衝撃波を躱したヒロムは主様の背後に現れると回し蹴りを放って敵を再び蹴り飛ばそうとし、対する主様は腰に携行していた軍刀の柄でヒロムの蹴りを受け止めるがヒロムの蹴りの威力が想定を超えていたのか主様は勢いよく吹き飛ばされてしまう。
「くっ!!」
吹き飛ばされた主様は倒れることはなく着地すると軍刀を抜刀し、抜刀した勢いでヒロムに向けて斬撃を飛ばして彼を斬ろうとする……が、ヒロムは首を鳴らすなり右手を強く握ると斬撃を素手で殴り消してみせた。
「何……!?」
「……んだよ、鈍かその刀?この程度の攻撃しか出来ないんなら無い方がマシだぞ」
「……厄介な男だ。やはりキミは何よりも先に始末せねばならんようだ」
「主様、我々も加勢します!!」
「主様は我々を囮に立て直して……
「そんなことはさせねぇ」
兵士たちが主様に加勢しようと勇敢に前に出て構えようとするとヒロムが冷たく言い放ち、ヒロムが言い放つと天より無数の雷撃が飛んできて兵士たちを吹き飛ばし倒していく。
「うわぁぁぁあ!!」
「!?」
「束になっても雑魚は雑魚だ」
何が起きか分からないまま倒れていく兵士たち、兵士たちが倒れるとヒロムのもとへ雷と共に銀色の逆立った髪の赤い瞳の少年が現れる。
さらに……
「流石はシオン、最速で到着だねぇ」
銀髪の少年……紅月シオンが兵士たちを冷たい眼差しで 見下ろしていると彼の影の中より黒い髪の少年が現れ、現れた少年はヒロムの隣に並び立つと彼に話しかける。
「やぁ大将、待った?」
「いや、速かったなイクト。別働隊は仕留めたのか?」
「モチのロン!! いやぁ、妖刀の材料探しの妨害を想定したであろう部隊の兵士たちはオレとシオンで一掃してきたよ!!」
「嘘をつくなイクト。オマエは敵を拘束するだけであとはオレに丸投げしてたろうが。しかもここに来るのもオレの スピードの方が楽だとか言って押し付けやがって……」
「ちょっ……!?それは内緒にしててよ!?」
「…… どうでもいい。とりあえず、これであとは1人だ」
ヒロムのもとに現れた紅月シオン、黒髪の少年・黒川イクトの話しをどうでもいいの一言で終わらせたヒロムは仕切り直すように主様を見つめ、シオンとイクトも敵を倒すべく構えようとする。
兵士たちは全滅、残された主様は追い詰められた……かに思われたがヒロムたちが構える中で主様は 拍手をするなり全身を 霧のように変化させていく。
「アイツ、何を……!!」
「逃げるつもりかよ!!」
「ここでの目的はキミたちを倒すことでは無いのでね。悪く思わないでもらおう」
させるか、とヒロムは主様を倒すべく走り出し、続くようにシオンとイクトが走り出すと3人は主様に向けて一撃を放って仕留めようとした。が、その一撃は霧のように変化する主様の肉体をすり抜けてしまい、攻撃がすり抜けると主様は声高々に笑いながら姿を消していく。
『もう少しキミたちと遊びたかったが時間切れだ。次に会う時は私の全てを受けて朽ち果てることを覚悟しておきたまえ』
「……逃げるのか?」
『最高の舞台を用意してあげるのだよ、キミたちのためにね。期待しておきたまえ……戦火に包まれた新世界の誕生をな』
ヒロムの言葉に強気で返した主様は全てを霧に変えて完全に消え去り、主様が消えるとヒロムはため息をつくと面倒くさそうにつぶやいた。
「……時間稼ぎはこんなもんか」
(ヤツらが妖刀を完成させなければ目的は達成されることは無い。一条カズキの話の通りなら刀哉が真助と合流してお望みの刀を用意しようと動いてるだろうが刀鍛冶の刀哉と言えどアイツが求める妖刀を完成させるのは骨が折れるはずだろうな)
仕方ないな、とヒロムはイクトの方を見るなり彼にあることを依頼する 。
「イクト、手を回しておいて欲しい仕事がある 。頼めるか ?」
「必要なことなら喜んで。何をすればいい?」
「保険を1つ、な。オマエの力を借りられれば最悪は避けられる」
(こっちでやれることはやってやるから任せるぞ……真助!!)




