四十八斬
弥咲を倒した真助は刀哉と美琴と共に移動を再開しており、《一条》の車によって刀哉が刀鍛冶として妖刀を生み出すための目的地に到着すると真助たちは車から降りていた。
「ここか……」
「そう、ここでオマエさんの妖刀をつくる」
真助たちが来たのは周囲に繁華街や量販店すら無い古民家が数軒ある程度のかなりの田舎で、真助と美琴は刀哉に案内される形で古民家を通り過ぎるように歩いて近くにある森へと向かっていた。
古民家はあるものの人がいる気配はなく、真助と美琴は人がいないことを不思議に感じながら歩き、2人が人のいないことについて不思議に感じていることに気づいた刀哉は2人が感じていることについて説明していく。
「ここにはもう人は居んよ。昔は妖刀や霊刀について語り合った仲間がいたが気がつけば老体となって隠居するためにここを去ったよ」
「隠居ならここで十分じゃないのか?」
「オレがここを離れてることが多いってのもあるが、知識があるってだけで狙われる可能性がある。ここに居ることを悟ってる奴らがいるからオレが安全な地域に移動させたのさ」
「そういえばアナタは何故あちこちを移動してるのです?」
「刀鍛冶として鉱石が要るから探し回ってる、てのもあるが封印されている妖刀の確認のためだ」
「確認?封印されているのならそのままにしておけばいいのでは無いのです?」
「ふむ、それで済むならオレも楽なのだがね。妖刀が封印されたのは大昔、それ故に封印が施されていることや妖刀の存在についての認識が時の流れと共に薄れてしまうものだ。だからそれについて把握してる人間が封印のことが人々の記憶から消えようと維持できるようにしているのさ」
「ふーん……。で、それを《斬鬼会》の馬鹿共が解いてってるってわけか」
「解かれた封印の全てが奴らとは限らんがな。世の中力を利用する悪党は山のようにいる。そんな人間は封印の解き方を意地でも調べようとするもんだからな」
「で、そんな妖刀を封印して守ろうとして活動してるオマエがオレの妖刀をつくるってのは問題無いのか?」
「構わん。実を言うと妖刀の封印を続けていたオレの中で1つの迷いがあってな。オマエさんの戦う姿を見ていて解決策を思いついた」
「解決策?それが妖刀を新しくつくることなのか?」
「そうだ。そしてその妖刀の構造もオマエさんのための新たなものに変えるつもりだ」
「新たなもの……」
「それはどんなものなのです?」
「鬼月真助、オマエさんは霊刀である小太刀《號嵐》に妖刀《血海》の欠片を合わせることで新たな妖刀を一時的に生み出していた。オレはそれを常に維持している状態にする」
「それって……」
「オマエさんの霊刀1本を欠片と一緒に打ち直して完全な1本に合わせるのだよ。一時的なものではなく完全な一振として生まれ変わらせる……そしてオレの見立てではその一振は《斬鬼会》だけでなく妖刀を悪用しようとするものたちを倒し妖刀を守る力になる」
「妖刀を……守る……?」
******
弥咲が倒された頃に時を戻す……
弥咲が倒れ妖刀《不獄》が砕け散り妖しい光が天に打ち上げられたその時、港に船を停め上陸していた《斬鬼会》の主様は部下となる兵士たちを大量に引き連れて歩いていた。
「弥咲、キミも私から離れたのだね……」
主様と《斬鬼会》の兵士たちは上陸した港から離れた町へと来ており、兵士たちは何かを探しているらしく手当り次第にものを破壊していた。
「きゃぁぁぁ!!」
「うわぁぁぁ!!」
兵士たちの突然の襲撃に怯え恐怖で逃げる町に暮らす人々。そんな人々の事など構うことも無く主様は何かを求めるように歩き続け、主様は歩を進めたまま拍手をするなり兵士たちの士気を高めるような言葉を語り始める。
「キミたちの行いが新世界の完成を加速させる。私の統べる世界でキミたちが安息を得るためにもここにある妖刀を見つけ出してくれ」
「「はっ!!」」
「この町には新世界に残す価値などない。跡形もなく壊して……
「ならオマエも消えろ」
主様が兵士たちに指示を出そうとしたその時、その指示をかき消すように声がし、その声に主様が反応すると数人の兵士がボロボロの姿に変わりながら主様のもとへ吹き飛ばされていく。
何が起きたのかと主様は声がした方、そして兵士たちが吹き飛んできた方に視線を向けるとその先には1人の少年がいた。
「キミは……」
「オマエの狙いは知らねぇが読みは当たってたらしいな」
赤い髪に桃色の瞳、運動しやすい服装として纏っているであろう青いジャージの少年の姿を目にした主様はため息をつくと彼に話していく。
「どういう風の吹き回しかな?キミが介入するのは想定外だ」
「だろうな。元々オレは関与する気も無かったからそうなるわな。けど……色々あって気が変わった」
「気が変わった?気まぐれで現れた理由は何だ?」
決まってる、とジャージの少年……姫神ヒロムは首を鳴らしながら主様を睨むと敵に向けてここに現れた理由を告げる。
「オマエみたいなバカを潰したくなったからだよ」




