四十五斬
弥咲の妖刀の力を攻略したと思った真助だったがその考えを覆すかのように弥咲は更なる闇を纏うと黒衣をその身に羽織るように纏い、本番はここからだと言わんばかりに妖刀を構える弥咲を前に真助は面倒くさそうに舌打ちをする。
「ちっ……二段式だったのかよ」
(東と西の野郎の妖刀はその力が単発だったから一応で看破してみたが二段式の方だったとはな。空牙に髑髏武者を任せてるから女の言う初期能力とやらは何とか止めてられるが問題はあの黒衣を纏ったあとの力だな。あの余裕……それだけを考慮するなら)
「オレ相手に優位になる力ってことだろ!!」
真助は黒い雷を纏うなり新たな力を纏った弥咲を倒そうと駆け出し、真助が動き出すの空牙は髑髏武者の相手をする中で黒い雷を放射して先程真助が投げ捨てた刀にぶつけて弾くと真助の方へと飛ばして彼へ受け取らそうとする。
「受け取れマスター」
「最高の援護だぜ空牙!!」
空牙を弾いた刀は見事に真助の手に掴まれて彼はそれを構えると黒い雷を纏いながら弥咲に斬り掛かるが、真助が斬り掛かると弥咲はその全身を闇に変えて消えてしまう。
「!?」
「これが私の力」
目の前から弥咲が消えたことに真助が驚いていると彼の周囲に弥咲が現れる……が現れた弥咲は1人ではなく4人おり、4人の弥咲に囲まれた真助は彼女の妖刀の力についての可能性に気づいてしまう。
「コイツの力……願望の具現化なんてのは嘘か。コイツの妖刀の力は……幻覚か!!」
「よく見抜いたわね」
弥咲の妖刀の力が幻覚に関するものだと真助が見抜くと4人の弥咲は一斉に彼に襲いかかり、4人の弥咲が襲ってくると真助は黒い雷を纏いながらそれらを躱すと反撃しようと一閃を放つ……が、放たれた一閃が命中した4人の弥咲は闇となって消えてしまう。
「この……!!」
(この女、人の事を野蛮だの何だので格下に見てるかと思わせといてしっかりと自分のやりやすい状況に持ち込みやがった!!多分あの髑髏武者と骸骨は願望の具現化という名の実体を持つ幻覚の使役、つまり現れてから今に至るまでこの流れにしてオレを追い詰めるのが作戦だったってことか!!)
弥咲の狙い、それについて気づいた真助は彼女のここまでの用意周到さを思い知らされながらも倒すべき敵をこの手で倒すために刀を構えようとするが、真助が構えようとすると今度は5人の弥咲が現れて真助に対して妖刀による波状攻撃を仕掛けてくる。
波状攻撃が迫る中で真助は刀で防ぎながらも躱して反撃していくがこの5人の弥咲も真助の反撃を受けると闇となって消えてしまう。しかし真助はここで攻撃の手を止めなかった。真助は5人の弥咲が闇となって消えると即座にその場で回転すると自身の周囲に黒い雷を纏った斬撃を何度も飛ばし、真助が斬撃を飛ばした直後に彼を囲むように5人の弥咲が現れる。
「なっ……!!」
5人の弥咲は現れるもすぐに真助が出鱈目に放った斬撃を受けて闇へと変わって消えてしまい、真助が回転を止めて刀を構え直すと彼から離れた位置に弥咲が1人現れる。
「おっ、今度は本体か?」
「さぁ、どうでしょうね?
それより、今の博打戦法はもう使えないわよ?何せもうやり方は把握したから」
「だろうな。こんなやり方で終わらせられるなんて思ってもねぇから安心しな」
「そう……なら、もう少し楽しませてもらおうかしら」
「楽しむ余裕があるならな。とりあえず……次でこっちも仕掛けることにする」
「戯言を口にするな!!」
真助の言葉に強い言葉で返した弥咲は闇を纏うと走り出し、彼女が走り出すと真助の周囲に4人の弥咲が現れて彼に襲いかかる。
襲い来る4人の弥咲の攻撃を躱した真助は刀による攻撃で反撃し、反撃を受けた4人の弥咲が闇となって消えると真助は残る1人に向けて斬撃を飛ばして直撃させる。
直撃を受けた弥咲はこれもまた闇となって消えてしまうが、真助は5人の弥咲を倒した直後に刀を逆手に持つとすかさず自身の後方を穿とうとするかのように素早い突きを放つ。
真助の背後には何も無い、はずだったが真助の放つ逆手持ちによる突きは何も無いはずの空間で鈍い金属音を鳴らすと火花を散らせ、そして火花が散ると共にそこに妖刀で突きを防ぐ弥咲が現れる。
「どうして、私の動きが……!?」
「同時に現れるのは5人まで、って認識させてからの本体だろ?
お生憎様幻覚の類いについてはオレの知ってる情報通のおかげで詳しいんだよ」
「だとしてもありえない……私の《不獄》の現段階での力は気配も何もかも惑わすほどの力を持つのに何故反応出来たのよ!?」
「簡単な話だ……オレがオマエより強いってだけだ!!」




