四十三斬
弥咲の妖刀《不獄》により倒しても倒しても生み出される髑髏武者の群れを止まること無く倒し続ける真助。黒い雷を強く纏いながら刀哉より授かった刀と自身の力でつくった黒い雷の太刀による二刀流で攻撃を続ける真助、その真助の黒い雷を纏いながらも刀哉の刀は壊れることなく真助の手で扱われており、真助は刀が壊れず使えていることに少しばかり驚いていた。
「はっ、あの刀鍛冶め。やるじゃねぇか」
(流石と言うべきか、この使い勝手の良さ。それにオレの能力に耐え続けるだけの強度も確保されている……最高じゃねぇかこの刀!!)
「こんな刀作れるんなら期待も出来るぜ!!」
刀哉の刀の出来を賞賛する真助は黒い雷の太刀と共に連撃を放って髑髏武者を次から次に破壊していくが弥咲が闇を纏っている限りなのか彼女が妖刀を持っているからなのか髑髏武者は止まることなく現れ続け、さらに髑髏武者の動きが勢いを増すと真助への攻撃も過激さを増していく。
真助は敵の攻撃を躱しながら次々に破壊し続け、真助が髑髏武者を破壊し続ける様を見る弥咲は呆れたように息を吐くと彼に告げる。
「無駄な抵抗はやめなさい。貴方の力では私には勝てない。
どれだけ努力してもこの力の前では何も出来ずに終わるだけ、せめてそれを受け入れながら抵抗せずに死になさい」
「お断りだな。戦闘種族の末裔、《月閃一族》の血を流すものとしての誇りってのがそれなりにある。簡単に死んでやれるほどオレは優しくねぇんだよ」
「無駄なことを……どれだけ努力しようと貴方はこの無限に生まれる髑髏武者には勝てない」
「さて、その無限と豪語するその力が何時まで続くのか……試してみるか？」
「試す必要も無い……貴方の死で幕は降りるのよ!!」
真助の余裕のある言葉を受けた弥咲が強く叫ぶように言葉を発すると髑髏武者は闇を強く纏いながら真助へと突撃しようと駆け出し、髑髏武者の動きが派手になると真助は黒い雷の太刀を振り上げてその力を強くさせると轟音を響かせながら勢いよく振り下ろし、黒い雷の太刀が振り下ろされると無数の黒い雷の刃が撃ち放たれて突撃してくる髑髏武者の群れを貫き倒していく。
黒い雷の刃が放たれたその直後に真助の黒い雷の太刀は消滅してしまい、左手が手隙になった真助は指の関節を鳴らすなり刀に力を集めてその力を高め、高めた力を黒い雷へと変えると弥咲に向けて巨大な黒い斬撃を飛ばして彼女を仕留めようとする。
が、弥咲が妖刀を地に突き刺すと巨大な骸骨が彼女の前に現れて黒い斬撃の身代わりになるかのように真助の一撃を受けながら消滅してしまい、真助は攻撃を防がれた身でありながら彼女が今呼び出した巨大な骸骨について思考する。
(骸骨……やっぱあの妖刀にも制限があるらしいな。千剣刀哉が武具だったようにあの妖刀は髑髏武者や骸骨といった屍に関するものしか生み出していない……けどさっきのあの薙刀と絡繰呪装機を呼び出した件の説明が出来ないな。仮に抜刀してから生み出してるものと抜刀前にものを出したのがそれぞれ異なる力が作用してるのなら分かるけど……)
「考えてても仕方なさそうだな」
思考がまとまらない真助は諦めたかのように刀を構え直し、真助が構え直すと黒い斬撃を受け消滅した骸骨のいたその場に闇が集まるとまたしても髑髏武者の群れが現れて刀や槍を構え始める。
「さてさて……どうしたものかな」
(正直斬り飽きた。斬っても大した手応えねぇし何ならあの妖刀使うあの女と剣術でやり合いたいって気持ちもあるしな。それにあの女はオレのことを調べに調べてるみたいだからオレの動きは……)
「……待てよ？」
髑髏武者は斬り飽きたと思いながら弥咲と戦いたい。しかし彼女はこちらの手の内を把握してる、そんな風に思っていた真助はふと彼女のある言葉を思い出した。それを思い出した真助は刀を投げ捨てると拍手をし、そして弥咲に向けてある話をした。
「いやはや、オマエには驚かされてばかりだ。まさか言葉巧みにオレを操って思考をかき乱そうとしたんだからな」
「何を言うかと思えば……貴方の手の内は把握している。そして貴方がこのままでは勝てないことも……
「確かに把握されてるな。というよりは東西の門を担ってた2人との戦闘時の事も知られてるってのは驚きだ」
「……意外ですね。私の言葉からそれをも見抜いたとは」
「まぁ、今の今までその考えにはたどり着けなかったから情けねぇったらありゃしねぇ。というより、通信機器を持ち歩いてなさそうなやつらだったからその辺のことは思考から外してたってのが正しいけどな」
「それをわざわざ今になって思考するとは……どういう風の吹き回しです？」
「オマエ……さっき言ったよな？オレの隠してる手がもう無いって」
「ええ、貴方のことは調べてますからね。だからこうして……
「奥の手ってのは最後まで取っとくものだぜ、女？」
弥咲の言葉を遮るように言った真助は指を鳴らし、真助が指を鳴らすと彼の纏う黒い雷が轟き、そして獣の雄叫びのような音を響かせると黒い雷が変化して彼の前に黒い狼が現れる。
雷で狼の形をしているのでは無い、この黒い狼は実体を持つ狼だ。その狼を見た弥咲はそれが信じられないのか驚きを隠せず先程までの淡々とした振る舞いが一転して動揺が確認できるものへと変わっていた。
「そ、そんな……!?ありえない!?
私の知らない手があるなんて……!?」
「知らねぇってんなら教えてやるか……オレの宿してる頼れる相棒をな!!」
