四十一斬
迫り来る妖刀の気配を感じた真助の言葉を受け、ここで迎え撃つことを決めると車を停めさせて真助たちは降りて敵を待ち構えようとしていた。
敵が迫り来る中で美琴はメイスを構え、刀哉は2本の刀を自身の能力で生み出すと1本は自らが手に持ち、もう1本は真助に投げ渡すのだがその際彼に忠告した。
「無理はするな。先程の無理な力の発動で疲弊しているはずだ。状況次第では下がれ」
「笑わせんな。この程度で倒れるほどヤワじゃねぇよ」
「……そうか。だがアレは使うなよ?
限界に達して苦しんだとしても助けられんだろうからな」
「肝に銘じておく。……来るぞ」
刀哉の忠告を軽く返した真助は敵の気配が近づいてくる方に視線を向け、真助の言葉に刀哉と美琴も気を引き締めると風と共に天より1人の女が現れる。
軍服のような意匠の装束に身を包む黒髪の女、1本の刀を携行するその女が地に降りると真助は刀哉より預かった刀を敵に向けると強気に言葉を放つ。
「よぉ女、オマエが3人目の門か?」
「……南門を司る者、弥咲と名乗っておくわ」
「名前なんてどうでもいい。とりあえず……斬らせろ!!」
「無粋な男……小手調べと参りましょうか」
女……弥咲は冷たく言うなり指を鳴らし、弥咲が指を鳴らすと彼女の周囲に闇と共に刀を持った幻影が複数現れ、さらに幻影のそばに絡繰呪装機が現れる。
現れた幻影は鎧を纏ったような人の影をしており、幻影を目にした刀哉は刀を構えると首を鳴らしながら真助と美琴に伝える。
「……あの幻影はオレが引き受けよう。実体が無さそうだがオレの刀で斬れるか試させてもらう」
「では絡繰呪装機は私が引き受けます。散々動きを見せられましたから相手くらいは容易です」
「なら任せよう。では鬼月真助、オマエさんはあの女を倒せ」
「そのつもりだ。さぁ……始めようぜ!!」
幻影の相手を引き受けることを刀哉が話すと真助は黒い雷を纏いながら駆け出し、美琴も続くように魔力を纏うと勢いよく走り出して絡繰呪装機に襲いかかり、刀哉も静かに刀を構えると幻影たちへと迫って攻撃を仕掛けていく。
美琴の振るメイスが迫ると絡繰呪装機は刀を構えて迎撃しようとし、幻影たちは刀哉へと迫っていくと次から次に攻撃しようと動き2人は戦火を激しくさせていく。
そんな中で真助は弥咲に迫るとその勢いのまま刀を振って敵を斬ろうとするが弥咲は華麗な身のこなしで避けると真助に掌底を叩き込んで怯ませ、さらに弥咲は素早い動きと共に掌底の連続攻撃を放って彼を追い詰めようとした。
「この女……!!」
真助は黒い雷を全身から放出させるかのように強く纏うと共に攻撃を行って弥咲の連続攻撃を止めようとするが弥咲は黒い雷が放出されるよりも先に後ろに跳んで躱すと落ち着いた様子で真助に視線を向ける。
「……余裕ですってか?」
「誤解されるのは嫌なので話しておきますが私は野蛮な貴方とは違って無駄を避けているだけです。余裕ではなく順当に対処している、必要なことを必要な範囲で行っているだけです」
「そうかよ。なら……その必要な範囲に引きずり込んでやるよ!!」
真助は弥咲の言葉を受けるなり黒い雷を左手に強く纏わせるとそれに形を与えて黒い雷の刀を完成させ、刀哉の刀と黒い雷のみで形成された刀の二刀流となった真助は地を蹴り加速すると高速での連撃を放って追い詰めようとする。
「能力による造形術……野蛮なだけかと思っていましたがそれなりに器用なことが出来るようですね。ではこちらはこうさせていただきます」
真助の黒い雷の刀を見た弥咲は魔力を纏いながら指を鳴らすと何処からか薙刀を出現させて装備して真助の二刀流の連撃を全て受け止め、連撃を止められた真助は黒い雷の刀にさらに雷を集めると鋭くさせながら太刀へ変化させて構え直すが、構え直した真助は薙刀を構える弥咲に疑問を抱いていた。
「コイツ……妖刀使わねぇつもりか?」
(それにコイツの動き、まるでこっちの動きを知り尽くしたかのように対処してくれるし……それにあの薙刀と絡繰呪装機を呼び出した力が気になる。まるで……)
「千剣刀哉の能力を見ているよう、ですか?」
「あん?」
「心が読まれた、と考えてますか?」
「……だったら何だ?」
「分かりやすい人ですね、貴方は。こんな人が主様と私の敵だとは思えませんね」
「んだと……!!」
「……呆れましたよ、貴方には。妖刀の使い手に選ばれた純粋な戦士だと言うのに頭が悪すぎる。こんな男に私は仇を殺されるなんてね」
「仇?」
弥咲の言葉、話している内容がいまいち分からない真助が聞き返すと弥咲は薙刀を強く握るなり真助へ襲いかかり、薙刀の一撃が迫ると真助は黒い雷の太刀で防ぎ止めて反撃しようとした。が、その反撃の瞬間に弥咲は真助に驚きの事実を明かした。
「貴方が妖刀を手にしたあの日、妖刀を持っていた男に家族を殺されて倒れていた娘が私なのですよ」
「……は?」
「貴方が妖刀《血海》に選ばれたあの日、私は全てを失った……家族も居場所も、仇も。だから決めたのですよ……私の仇を殺した貴方を私が殺すことを」
弥咲から明かされた予想すら出来ぬ真実、それを明かされた真助は……




