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四十斬


 美琴が祖父・柳絃を埋葬し簡易的な墓を設けて直ぐにその場を去った真助たち。

 

 刀哉の話通りに集落にいた人たちは戦闘による騒ぎを聞きつけて大勢でやって来て何やら騒がしくしていた。真助、刀哉、美琴はその様子を離れた位置から見届けるようにしてその場を去るとここに来る際に利用した《一条》の遣いを頼って刀哉が妖刀を生み出すためにと目的地に指定した場所に移動しようとしていた。

 

 その《一条》の遣いが走らせる車の中……

 

 柳絃を飲み込んだ呪具の鬼を倒した真助は戦いによる疲弊からか爆睡しており、真助が眠るそばで美琴は刀哉に先程の真助の力について尋ねていた。

 

「先程の鬼月真助の力……アレは何なのです?アレも妖刀の力なのですか?」

「そうだと言えばそうなるが正確に言うなら違うことになる」

 

「どういうことです?」

「今の鬼月真助はまともな妖刀を持ち合わせていない。持っているのはせいぜいかつての愛刀だった妖刀《血海》の欠片、その程度では妖刀の力など発揮はされんのだよ」

「ではアレは鬼月真助の能力によるものだと?」

 

「その言い方をすると違うと言いたくなるな。そもそも……鬼月真助の能力が異質だ」

「異質?あの黒い雷がですか?」

 

「オマエさんはあの黒い雷の力を知っているか?」

「いえ……アナタは知ってるのよね?」

 

「彼が仕えている姫神ヒロムに聞かされて、な。あの男言わくこの男の能力は触れたものの魔力による繋がりを断つ力を持つ黒い雷を操る《狂》の力 、その力が纏った攻撃は魔力による防御を容易く削ぎ、肉体の内側に流せば魔力の流れを乱れさせて能力発動の源たる魔力を塞き止めることが可能となるだけでなく自らに流せばやり方次第では敵に施された能力による低下作用や枷等を破壊出来る。魔力を断ち切る、単純な言い方をするならそれで済むがやっていることは能力者の域を逸脱している」

「魔力を断ち切る……!?そんな能力聞いた事無いわ」

 

「世の中には色んな人間がいる。十数人の精霊を宿しその力を恩恵として授かれる人間、触れたものを引き裂く炎を操れる人間、現実と虚構を統べ現と冥をも操る人間、未来の結果をその瞳で視ることが可能な人間、退魔の光により悪意に染まった攻撃を無力化する人間……武具を生み出し異空間に収納可能なオレや、雷鳴と引力を操れるオマエさんのように能力は様々だ」

「……っ!!

私の能力を知ってたの……!?」

「あの武器、かなりの重さだ。それを容易く操れるのなら肉体強化の線で見るべきだがオマエさんの戦い方から自身は引力による重量の相殺を行い、敵に対してはあの武器の重量による重い一撃を行う。そして相手によっては衝撃を伴う一撃をぶつける……これは雷鳴を起こし炸裂させたものだと考えている」

 

「……正解よ。私の能力は重力と雷撃の合わせ技の《天重》、重力によるメイスの重さの無視、敵に重さを倍加させてぶつける鈍撃、そして重さだけを重視した戦い方をカバーするための雷撃による炸裂破壊攻撃が私の力です」

「そうか」

 

「……って私の力はいいんです。鬼月真助の能力についてです」

 

 そうだったな、と刀哉は本題にもどれと言いたげな美琴の言葉に微笑みながら返すと真助の右頬の痣を横目で見ながら続きを話していく。

 

「あの黒い痣、姫神ヒロムの話では鬼月真助が気づいた頃からあったらしい。そしてこの男は戦闘種族の末裔《月閃一族》の血筋として戦いを求めるだけでなく何かに導かれるように妖刀と巡り会い、数年に渡り妖刀の使い手として妖刀と共に過ごしていた……だけならまだしもこの男は本来は枠組みが異なる霊刀に適合するだけでなくその霊刀に妖刀の欠片を重ねることで本来はありえない新造の妖刀を完成させた」

「《斬鬼会》が目をつけた一時的な融合進化、でしたね?」


「解釈としては合っている」

「あの……実際に可能なんですか?彼はそれを成し遂げたかもしれませんがそんな……

「普通の人間なら不可能だろうな。妖刀は使い手を選び適合出来なければその力で命を喰らう。《斬鬼会》の新造した次世代の妖刀は誰にでも扱えるように作り直してはいるがその代償として使用者の生命力の低下とともに存在そのものを消し去る罰を与える」

「罰、ですか?」

 

「そうだ。この罰が妖刀の在り方を変えるような真似をしたことに対するものだとすれば鬼月真助も例外ではないはずだ。だがこの男はその罰を受けていないし、2本で1組とされる霊刀の片方が壊れるまで繰り返し行っていた。そしてここまでの《斬鬼会》を追うオマエさんたちの話を聞いて知った鬼月真助が気配を感じ取れたという話……オレは鬼月真助が産まれ持って妖刀の力を宿した特異体質だと考えている」

「特異体質……!?」

「刀に詳しいオレでも妖刀の気配は簡単には追えないき、仮に出来たとしても正確には追えないからな。言うならば鬼月真助のやってる事は妖刀のもとは己を導いているといっても過言では無い。そして長年妖刀を手にして戦え、あの異様なまでの力を発動出来るのは……

「……来るぞ」

 

 美琴に対して刀哉が語っていると爆睡していたはずの真助が目を覚ますなり何かを呟き、真助の言葉を受けた刀哉と美琴は車の窓から外を見ようとする。

 

「鬼月真助、何が来るの?」

「この感じ……東と西の門のやつらが持ってた妖刀と同じ気配だ」

 

「つまり……新手の妖刀使い、東西南北の名を冠する残る2人のどちらかか?」

「ああ、違いねぇ。迎え撃つか? 」

 

「……その方が懸命だな。オマエさんの妖刀の完成の邪魔はされたくないし、ここで済ませるか」

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