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三十七斬


 美琴の祖父・武上柳絃は既に故人であり、今目の前にいるのはその魂無き肉体を乗っ取っている呪具が操っているものだとして武上柳絃の肉体を取り戻すべく戦うことを決めた真助、刀哉、美琴。3人のやる気を感じ取ったと思われる呪具は禍々しい闇を柳絃に纏わせると鬼へと変貌させ、姿を変えたそれは雄叫びを上げると真助たちを殺そうと動き始める。

 

『がァァァア!!』

 

「来るぞオマエら!!」

 

「鬼月真助はオレとヤツを引きつけるぞ!!武上美琴は……

「まどろっこしいのは無しだ!!最初から3人で仕掛ける!!

機会を見て誰かが仕留める、それでいいだろ!!」

 

「……間違いないな!!オマエさんたち、やるぞ!!」

 

 任せろ、と真助と美琴は同時に駆け出すと鬼へと迫って攻撃を仕掛けようとし、2人が攻撃を仕掛けようとすると鬼は闇を纏いながら高く飛んで2人の攻撃を躱す。

 

 が、真助は黒い雷を脚に纏わせると地を蹴って鬼を追うように高く跳び、高く跳んだ真助は鬼に追いつくと黒い雷を纏わせた刀で攻撃を放っていく。

 

 空中で繰り広げられる真助の連続攻撃が迫る中で鬼は闇を纏いながら地上にいるかのような動きで全て躱し、攻撃を躱した鬼は真助に回し蹴りを放って地に落とそうとした。

 

 回し蹴りを受けた真助は地に落とされそうになるも体勢を立て直して受け身を取ると黒い雷を左手に纏わせ、纏わせた黒い雷を鬼に向けて撃ち放つと雷に形を与えるかのように帯のように変えながら鬼の右足に巻き付かせる。

 

『!?』

 

「オラァ!!」

 

 鬼の右足に形を与えた黒い雷が巻き付くと真助は力任せに引っ張って鬼を自らの方へ引き寄せ、抵抗出来ずに鬼が真助に引き寄せられる中で美琴はメイスに魔力を纏わせながら真助の前に立つと手に持つ武器に力を溜めていく。

 

「はぁぁぁぁ!!」

「派手に行くぜ!!」

 

 美琴が力を溜める中で真助は右手に持つ刀を強く握ると黒い雷を纏わせて刃を鋭くさせ、真助と美琴は武器に力を集めると引き寄せられてくる鬼に狙いを定めて一撃を放とうとする。

 

「決めるわ!!」

「喰らいやがれ!!」

 

 鬼が近づくと美琴はメイスを渾身の力で振り抜き、真助は黒い雷を轟かせると刀を振り抜き黒い斬撃を飛ばす。

 

 2人の攻撃が放たれると鬼は何とかして防ごうとするも真助の黒い斬撃は鬼の体を抉り、美琴のメイスは振り抜かれると凄まじい衝撃を鬼の肉体に叩き込み、2人の攻撃を受けた鬼は右足に巻きついた黒い雷を引きちぎるようにして吹き飛んでいき、地面に何度も叩きつけられるようにして吹き飛ぶと一度倒れ、倒れた鬼は闇を纏いながら立ち上がると全身に受けた傷を闇で消していく。

 

「ちぃっ!!」

「やはり呪具を壊さなきゃダメなのね」

 

「そういうことだろうな」

 

 真助と美琴が鬼の傷が消えるのを見て確実に仕留める方法が呪具だと認識する中で刀哉はどこからか出現させた弓を構えると手にしていた刀を矢の如く射ち放ち、射ち放たれた刀は風を纏い雷を纏うと流星の如き勢いで鬼に迫って胸部を射抜こうと襲いかか……るが、鬼は刀哉が自らの胸部、そこにある呪具を狙ったと予知したのか両手に炎を滾らせるかのように漆黒の闇を纏わせて白刃取りをする形で刀哉の一撃を防ぎ止めてしまう。

 

「ほぅ……あの呪具、それ相応の知能があるようだな」

「感心してる場合か!?

てかジジィに直撃したら肉体が消し飛ぶ勢いだったぞ!!」

 

「呪具が闇で飲み込んだ時点で柳絃の体は呪具の中に内包されている亜空間に取り込まれているはずだ。呪具を介して外にあった柳絃の肉体を内側に入れて中にいた鬼が外に出てきた……その鬼を半殺しにしたとしても問題は無い。核となっている呪具を壊せば呪いの在処を失った鬼が消えて閉じ込められた柳絃が戻ってくる、それだけだ」

「祖父の体など気にしなくていい!!呪具に飲まれてるのならばもう帰ってくる見込みは薄い……ならば、苦しみから解き放つためにも早々に鬼を葬るだけよ!!」

 

「ったく……血縁関係にあるオマエがそう簡単に割り切ってんじゃ躊躇ってらんねぇってか!!」

(さっさと決めるなら……これしかねぇ!!)


 今目の前にいる鬼は柳絃では無いから問題ないと説明する刀哉の言葉に対して祖父のことは構わずに敵を倒すことだけを優先しようとする美琴の言葉、その言葉を聞いた真助は自分の中で何か吹っ切れたかのように黒い雷を強く纏い、真助が黒い雷を強く纏うとそれに呼応するかのように右頬にある黒い痣が彼の体を侵食するかのように顔の右半分と右腕に広がっていく。

 

「ぐっ……!!」

 

「鬼月真助!?オマエさん、何を……」

「……千剣刀哉……!!もし何かあったら、あとは任せるぞ……!!」

 

 痛みのようなものに悶える真助と彼の痣の広がりを目にした刀哉は何が起きてるか問おうとするも真助はあとは任せたと言うと黒い雷を轟かせるようにさらに強く纏うと刀を強く握り、真助が強く握った刀は刀身が砕け散ると黒い雷を刀身として代用するように形を与えていく。

 

「……終わらせてやるよ、武上柳絃……!!

アンタの人生、そんな結末を迎えさせねぇ!!」

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