三十五斬
美琴の祖父が本性……《斬鬼会》と協力していたことを明かしたことで波乱の幕開けとなり絡繰呪装機が現れて真助たちを仕留めようと動き出す。
真助は小屋に入った際に警戒心から手にした包丁を捨てて手刀を構え、刀哉は軽く息を吐くと音も気配もなく刀を構えていく……のだが、真助は刀哉が構えるその刀に違和感を感じてしまい絡繰呪装機が迫る中で尋ねる。
「……オマエ、いつ抜刀した?というか刀持ってたか?」
そう、刀哉は刀を携行していた訳では無い。真助と美琴のもとに現れた際に刀を手にしていたから構えたことについて見逃しそうになっていたが彼はここに来るまで所持品には刀など無かった。なのに刀を手にして構えている。そこが気になったのだ。
真助に問われた刀哉は何か言うでもなく構えていた刀を真助に投げ渡すと右手に雷のような魔力を纏わせるとそれを刀へと変えて構え直す。
「刀が……作れんのか!?」
投げ渡された刀を受け取りながらも驚きを隠せない真助は声に出して驚きながらも迫り来る絡繰呪装機を迎え撃とうとし、真助が敵を攻撃する中で刀哉は全身に魔力を纏うなり絡繰呪装機に攻撃を仕掛けながら自身の刀と魔力を刀に変えたことについての詳細を話していく。
「オレの能力は刀剣だけでなくオレの知る武具の生成する力とそれらをオレしか認識出来ない異空間に内包する《装天》だ。オマエさんの求める妖刀のような特異な力を有したものは作れぬがそれなりの性能の武具なら容易いものだ」
「マジかよ……刀鍛冶とか言いながら能力で作ったのを売り捌いてたのか?」
「生憎、この力で作れるものはオレから一定の範囲内でしか形を維持出来ない。オマエさんの思うような商売は出来んのさ」
「……なら聞くがオレとアイツを絡繰呪装機から助けた際に使ってた刀は?アレは普通の刀じゃなかった、アレも能力で生み出したのか?」
「アレは特別、オレの能力とは縁の無い代物故説明が面倒になるが……今ここで使えるものでは無い故に異空間に入れている、とだけ伝えておこう」
「そうかよ。けど……それを聞いたら安心できた」
刀哉の能力について知らされた真助は不敵な笑みを浮かべると刀哉に投げ渡された刀に黒い雷を強く纏わせると一閃を放って絡繰呪装機を1体斬り倒し、絡繰呪装機を倒したと同時に刀が砕け散ると真助は刀哉に自身の思惑を伝えながら駆け出す。
「オマエの能力があるならオレの能力で刀が壊れる心配も無くなる!!オマエの能力で作れる刀を寄越せ!!」
「人使いの荒い注文だな……しかし、快諾しよう。オマエさんの望む刀を作れぬ分の詫びとして引き受けよう!!」
真助の思惑を聞き入れた刀哉は刀に魔力を纏わせながら敵を斬り倒すと指を鳴らして真助の手元に新たな刀を出現させ、新たな刀を手にした真助は黒い雷を纏わせると敵を薙ぎ払い、刀哉と並び立つと殺気を同時に放って絡繰呪装機を威圧していく。
自我も何も無い道具でしかない絡繰呪装機は真助と刀哉の放つ殺気を受けると恐怖でも感じたのか退き始め、美琴の祖父は2人の殺気に退く絡繰呪装機に苛立ちをぶつけるように叫び始める。
「何をしておる!!さっさとやつらを殺せ!!
道具風情がそんな小僧共に臆するなど何事か!!さっさと殺せ!!あの方のためにさっさとやれ!!」
「それが本性なのね……!!」
美琴の祖父が絡繰呪装機に不満をぶつけ怒りに満ちていく中でいつの間にか迫る敵の流れから抜け出したとされる美琴がメイスを手に祖父の背後に現れ、美琴の存在に気づいた祖父が振り向くと彼女はメイスを強く握り冷たい眼差しで睨みながら問い詰める。
「何故私たちを騙した?何故悪逆非道の《斬鬼会》に手を貸した?何故……私の父を殺した?答えろ!!」
「……利用価値があると期待していたが勘違いだったようじゃな。あのバカ息子……遊弦の孫なら相応の素質があるかと期待していたが嫁の無才の方を強く受け継いだようじゃな」
「お父さんだけでなくお母さんの事まで愚弄するのね……どこまで堕ちてるのよ、アンタは」
「口の利き方に気をつけろよ小娘が。ワシはオマエら若僧共より長生きしている、オマエらに見下される覚えなど無いわ」
「見下すつもりは無い……だけど、私の家族をバカにするのだけは許さない!!」
祖父の言葉に対して美琴は怒りを抑えきれず魔力を強く纏うと祖父に近づいてメイスを振り上げ、振り上げたメイスを強く握った美琴は祖父に向けて勢いよく振り下ろす。
相手は祖父、だが美琴は怒りによって身内であることに対する抵抗も消えており、美琴はその怒りに身を任せてメイスを振り下ろすしかなかった。美琴の振り下ろすメイスが迫る中、祖父がため息をつくと彼女の振り下ろしたメイスは祖父に迫る中で何やら壁のようなものにぶつかりでもしたかのように弾かれてしまう。
「!?」
「やれやれじゃの」
「何……それ……!?」
メイスが弾かれた、美琴がその事に驚いていると祖父の衣服がはだけ、衣服のはだけたその下から姿を見せた祖父の体を見た美琴は動揺を隠せず、絡繰呪装機を相手にしていた真助と刀哉も何かあったと察して祖父の方に視線を向けて彼女が何に動揺してるのかをその目で確かめると驚きを隠せなかった。
「んだよアレ……!?」
「まさか……そのパターンがあったのか……!?」
真助と刀哉が目にし美琴が動揺を隠せなくなったもの、それは……祖父の胸部に埋め込まれるように姿を見せている禍々しい色の水晶のようなものだった……




