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三斬


 村正を見つけると決めてから2ヶ月とちょっとが経過……

 

 見つからねぇ。

 

 ガイは簡単ではないことを話してくれてはいたが、流石に見つからなさすぎて笑えない。手当り次第、手掛かりになりそうなところに行っては聴き込むなり力技で吐かせたりと色々試しているが進展はなし。

 

 2ヶ月とちょっとが経過してんだからオレの手元に何かしら情報があってもおかしくはないのに……

 

 

「見つかんねぇ……」

 

 もはや手掛かりに繋がりそうなところが思いつかない。アテのないオレは諦めかけていたが……最後の賭けに出ることにした。

 

「よしっ、恥を忍んで聞く他ねぇ!!」

 

最初から素直にこうしておけば良かったかもしれないが、一応は戦士としての誇りがあるから頼りたくなかった。というか、ここに頼るのは立場的に後ろめたさもあったわけで……

 

 オレは最後の賭けとしてある場所に来た。広い敷地を有した大きな屋敷。黒いスーツを着た使用人やら配下の能力者が敷地内にいるそこに来たオレはこの敷地と屋敷を所有する男に会おうとしていた。

 

 名は一条カズキ。この間説明を割愛した《十家騒乱事件》に大きく関わってた人間で、現在の日本をより良く変えようとしている名家とかいう類で扱われる《一条》の当主を務めてる男だ。

 

 オレより3か4ほど年上の男で青い髪に金色の瞳の男、黒い丈の長い上着をを室内でも構うことなく着ているその男が執務をする中でオレは邪魔しに行き、執務中だろうとお構い無しに村正のことを尋ねた。

 

「村正って野郎のことを教えてくれ」

 

 開口一番、世間話など挟むことなくオレは尋ねた。すると……

 

 

「貴様で勝手に探せ。その程度のことでオレを頼るな。こちらは事件の後処理を急かされてるせいで忙しいんだ」

「冷てぇ野郎だな、オマエ。これでもオマエの傘下の能力者共と組んで悪党狩りをしてんだ。お礼代わりに情報を寄越してくれても……

「貴様は何か勘違いしているな。まずテロリストの殲滅についてだが、これに関しては貴様らが勝手に参加してるだけのことだ。こちらとしては日本のためにしていること、個人の感情を優先されても関係ないことだ。大体、見返りに関して言うなら貴様らが好き勝手に暴れても法に触れずに済んでいるのは姫神ヒロムの頼みを反映しているからだ。あの男の頼みがなければ……貴様らは能力を無闇に使う危険分子として取り締まられている。その点を忘れるなよ?」

 

「脅しかよ……」

「正論だ。現に姫神ヒロムからの例の騒動に対しての功績の見返りとしてその頼みを聞き入れているから貴様らの能力者としての尊厳は保たれている。忘れるなよ?貴様らは本来法の下で守られるべき国民、わざわざ危険の伴う世界に踏み入れずに済む立場にあるにもかかわらず命を無に帰すような真似をすることを黙認されるような対応をされていることをな」

 

「……そうかよ」

 

 この一条カズキという男がオレは苦手だ。名家の当主、単なる金持ちの肩書きかと思えば相応の責任感と使命感のもとで責務を果たそうとする。16歳のオレと3か4ほどしか変わらないような野郎が国のためだとか大義のために動いてんだからご立派としか言えねぇ。

 

 で、コイツがさっきから何度か名前を出してる姫神ヒロムってのはオレの仲間で、村正のことを教えてくれたガイやオレが仕えてる能力者だ。厳密には能力を持たないんだが、能力者と言わないと色々と割り切れない部分がある……。ヒロムに仕えてるってのはヒロムをリーダーにした能力者チームである《天獄》にオレたちが属してるからの言い方である。オレとしては人に仕えるとかは性にあわないんだが……ヒロムってのは色々と規格外過ぎて頭が上がらねぇってのもあんだよ。

 

 そんなヒロムは《十家騒乱事件》の黒幕を撃破した立役者であり、現在は事件後の日本のために何かしようと動いている……らしい。

 

 そのヒロムのことを話に出されたらあんまり物言えないんだが……

 

「アンタの言いたいことは分かる。けど……万が一に備えてオレは用意しておきたいんだ」

「壊れた妖刀の代わりか?」

 

「その件について把握してんだな」

「その現場に部下が居合わせていたからな。報告は来ている。

貴様らがどう対処するか見物しようかと思ったが部下の1人が殲滅作戦での礼として刀の手配をしてもいいのではないかと進言してきた」

 

「ってことは新しい妖刀が……

「貴様のために手配などするわけないだろ?」

 

「腹立つ言い方だな!!

つうか変な期待させるくらいなら言うな!!」

「貴様が早とちりしたのが悪い。どうせこの2ヶ月弱、まともな情報もなく村正を探していたんだろ?」

 

「悪いか?」

 

 そもそも村正を見つける以前にその村正を見た事がある人間がいないんだから情報が有る無いなんて関係ないようなものだ。どうせこの男も同じだ。情報なんて……

 

「刀の手配はしてやらんが、村正に繋がるであろう情報なら殲滅作戦の褒美として与えてやらんでもない」

「へいへい、そうですか……ってあんのか!?

誰も会ったことがない見たことの無い村正に情報が!?」

 

 まさかまさかの展開だ。刀剣の界隈の情報に詳しいガイが名前しか知らない刀鍛冶に繋がる情報をこの一条カズキが持っていたなんて……わざわざここに来た甲斐があった!!

 

「で?その情報ってのは?」

「急かすな。村正の素性を明かすのは不可能だとして別角度から情報を集めた。村正に関しての噂に『村正は妖刀、霊刀が隠されているであろう場所に出没する可能性もある』というものがあったのでその方向性で調べた結果……面白い話が出てきてな」

「村正が見つかったのか?」

「いいや、村正に関して何か知ってるだろうってやつらだ。組織名は《斬鬼会》、各地に封印された妖刀を強奪するためならどんな手も使う荒くれ者がここ最近妙に活発に動いていると報告が入った」

 

「んだよ……テロリストの類か。

村正は関係ないじゃねぇか」

「そうでもない。この《斬鬼会》の暴れたいくつかのエリアの近くにある集落にそれぞれ聞き込みをさせたところ、全ての集落で面白い目撃情報が得られた。腰に刀を携えた刀鍛冶、そいつが聞き込みした集落全てで目撃されている」

 

「じゃあ……」

 

「妖刀を狙い暴れる《斬鬼会》、その《斬鬼会》を追うようにして現れているとされる刀鍛冶……どうだ?情報としては十分だろ?《斬鬼会》の行動パターンから次に向かうとされるエリアの予測も出来ているが……聞くか?」

 

 思わぬ収穫……!!

 アテもないまま探すしか無かった村正に繋がるかもしれない情報が手に入った。村正とどんな関係があるのかは分からないが何かしら関わりがあるであろう刀鍛冶、その刀鍛冶が目撃される場所で問題を起こす悪党の《斬鬼会》、その《斬鬼会》の次に狙う場所の目星がついているなら……

 

「案内しろ。オレが村正探すついでに潰して来てやるよ」

「オレとしては《斬鬼会》の狙いを探るためにもう少し調べようかと思ったが……オマエのおかげでオレの仕事が減るなら好都合、いいだろう。報酬の情報提供に追加で部下を手配してやる。そいつが《斬鬼会》の担当だから詳しくはそいつに聞け」

 

「あっ、ついでで悪いけど刀頼めるか?

無銘でもいい、とりあえず武器になるならどんなのでもいいからよ」

「手配させておこう。手配予定の部下は別件で数日後にしか戻らん。よって貴様が出立するのは数日後だ」

 

「そんときまでに用意済ませて来てやるよ!!」

 

 話はまとまった。アテもなく無闇に探すしかないと思っていた村正に辿り着く機会を得たオレは新たな妖刀の為に行動を起こすこととなった。

 

 その数日後、オレはガイたち仲間に長旅に出ると何となくの説明だけをしてどうにか納得させた後で一条カズキの部下と合流して目的地へ向かい、そして最初の男2人を追いかけていたってことになる。ここまでがオレに関しての回想ってことだ

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