二十七斬
2体目の鎧武者は出現と共に破壊され、そして新たに刀を手にした男が現れた。
赤い瞳と茶髪、青黒い道着を着た上に白い羽織を肩の上に羽織るように纏った和装の青年は右手に刀を持っており、刀に視線を向けた真助はその刀の発する異質な力を誰よりもはやく感じ取っていた。
「あの刀……」
(この距離からでもハッキリ分かる程の凄まじい力……!!妖刀でも霊刀でも発せられないようなこんな力を秘めた刀を持ってるなんて、アイツは何者なんだ?)
青年の手にする刀が自分の知る刀とは異なる未知のものだと感じ取った真助は同時に彼が何者なのかを警戒してしまう。そんな真助が警戒する中で先程彼に頭部を破壊されて倒れたはずの絡繰呪装機の鎧武者が起き上がり、それが起き上がったことに真助が思わず構えようとするとそれは青年の方を向き、そして『主様』の声が発せられる。
『まさかこんな所で遭遇するとは思わなかったな。いや、私がここに呼び寄せたと言うべきかな?』
「……オマエさんのそれ、絡繰呪装機か」
『流石に詳しいな。この程度の玩具を知らぬはずもないか』
「玩具、か。オマエさんはそれが何から出来てるか知っててそう呼ぶのか?」
『驚いたな。命を奪う道具を生むことを生業にするキミがコレの存在に異議を唱えるつもりかな?現代における最高の刀鍛冶にして両断の剣技の使い手の千剣刀哉……いや、ここでは村正と呼ぶべきかな?』
「村正だと!?」
『主様』の口から青年の名と共に出た『村正』の名に驚きを隠せない真助。真助が驚き声を出すと青年……千剣刀哉は真助を見るなり音も立てずに一瞬で近づくと真助の顔をじっと見つめる。
「オマエさん……その痣、もしや」
「な、何だよ?」
「オマエさん、ひょっとして鬼月真助か?」
「だったら何だ?」
「いやいや、どこかで見た顔だと思ったがそうかそうか……姫神ヒロムの仲間の1人だったなら納得だな」
「ヒロムを知ってるのか!?」
「知っているさ。だが……その話は後だ」
刀哉の口からヒロムの名前が出たことにも驚きを隠せない真助だったが、刀哉は手にした刀に気のようなものを纏わせると素早く振り払って鎧武者に巨大な斬撃を放って破壊しようとする……が、鎧武者が斬撃を受けそうになると何やら障壁が現れてそれを防ぎ消してしまう。
斬撃を防ぎ消した障壁は静かに消え、障壁が消えると『主様』は刀哉に向けて話し始める。
『キミがそちら側につくのは困るのだがな……。私としてはキミの力を借りて最高の品を完成させたいのだが、手を貸してくれないかな?』
「手を貸すことは叶わんよ。オレは姫神ヒロムと共に国の守護者に選ばれた身、悪事に染まりしオマエさんを消すならいざ知れず手を貸すなど天罰が下るわ」
『国の守護者……《センチネル・ガーディアン》か。《一条》が日本を能力犯罪から守る為にと用意しようとしていた最強と呼ぶに値する能力者たちについては情報を得ていたが、まさか姫神ヒロムと共にキミが選ばれていたとは驚きだ』
「個人的にオマエさんと縁があるかは知らぬが村正の名を欲してオレとは無関係の鍛冶師を拐い悪事に加担させるなど見過ごすことは出来ん。それを動かすオマエさんを見つけて法の番人のもとへ差し出してやる」
『流石のキミでも私は見つけられない。見つけられたとしても……私の計画が始動している可能性があるから手遅れかもな』
「それは妖刀を束ね打ち直して厄災の妖刀たる《神災》を完成させることか?」
『……っ……!?』
刀哉の口から出た『厄災の妖刀』、『神災』の言葉を聞いた『主様』はこれまで見せることなどなかった驚きの反応を声出示し、刀哉の口からその言葉が気になる真助は彼に詳しく話させようと説明を促そうとした。
「おい、その厄災の妖刀ってのは何だ?《斬鬼会》は何を企んでんだ?」
「話せば長くなるから簡潔に言うが……この時代において完成させてはならない妖刀だ」
「完成させてはならない妖刀だと……!?」
「完成してしまえば日本はおろか世界は滅びる。おお昔に妖刀の全てをその手で従えたと言い伝えられる村正天明ですら危険だと判断して存在を否定しようとした妖刀だ」
「そんな刀を生み出そうと……まさかアイツらが《血海》の刀身の欠片を集めてるのもそれと関け……
『オマエがその刀の名を口にするな!!』
刀哉の話から真助は《斬鬼会》の下っ端がかつて自分の使用していた妖刀の《血海》の欠片を集めていることを口にした途端に『主様』の声は怒りに満ちたものに変わり、声色が変わると同時に鎧武者は突然体の至る所が炸裂して損壊して倒れてしまう。
何が起きたのか、何故声は怒りを見せたのか……
突然のことに真助は言葉を奪われていたがその中で確かに感じていたものがある。そう、かつて自分の使っていた妖刀は今回の《斬鬼会》と深い繋がりがあることを……




