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十九斬


 霊刀《號嵐》により砕千を圧倒し追い詰めた真助。倒れた砕千に何かをしようとしたその時、邪魔をするかのように誰かが叫んできた。

 

「ちょっと待ったァァァ!!」

 

 誰なのか、何故邪魔をするのかと少し不満を抱く真助が声の聞こえた方を向くと……

 

 少し離れたところに華奢な体に似合わぬ大型メイスを担いだ少女が立っていた。巫女服にも見える袖の無い装束を着た白髪の少女の声に真助の手が止まる中で彼女は真助に近づいてくると彼に向けて告げていく。

 

「その男を殺すのは後にして。今はコイツから情報を聞くのが先よ」

「……殺すの止めに来たんじゃないのか?」

 

「コイツの生死は情報を聞き出せたらどうでもいいわ。それより、アンタは?」

「名前聞きたいなら先に名乗れ」

 

「ああ、いいわ。私の名は武上美琴、ある男を追って情報を集めてるのよ」

「ある男?まさかだがコイツが身を置いてる《斬鬼会》に関係してるのか?」

「そんなところよ。だから情報を聞き出してから殺すなり好きにして。まずは……

「無理だと思うがな」

 

 少女・武上美琴が砕千から情報を聞き出したいという旨を伝えるなり真助は何か察したように冷たく言い、真助が美琴につめたく伝えると同時に砕千が手にしていた妖刀に大きな亀裂が生じた後に砕け折れ、妖刀が砕けると砕千は苦しみ悶え始める。

 

「ァァァァァァア!!」

 

「何、これは……!?」

「ちっ、やっぱりな……」

 

 突然の事に美琴が驚く中で真助は予測していたような反応をすると共に溜息をつき、砕千が苦しむ中で彼の妖刀から妖しい光が天へと打ち上げられ、光が天で炸裂すると砕千と妖刀は闇に包まれて跡形もなく消えてしまう。

 

 突然消えた、砕千と妖刀の消滅を目にした美琴が困惑していると真助は《號嵐》を鞘に収めるなり彼女に何が起きたかを伝える。

 

「どうやら口封じのためにコイツに妖刀を与えてる野郎は使い手が死に近づいた時に妖刀諸共消えるように仕向けてるらしい。ここに来るまでに倒した東門って名乗る野郎と今消えた西門って名乗ってたアイツは口封じで仲間に殺されたんだよ」

「……じゃあ、私がアンタを止めなくても消えてたってこと?」

 

「そうなるな。あっ、名乗り忘れてたな。

鬼月真助だ」

「鬼月真助!?あの《天獄》のメンバーの!?」

「ああ、その……

「姫神ヒロムは来てるのか!?」

 

 真助の名を聞いた美琴は急激な切り替えとと共に少し興奮気味に彼に詰め寄ると姫神ヒロムの名を口に出すとこの場にいるか否かを勢いよく尋ねる。

 

 あまりの勢いに真助は驚かされるが、彼女の勢いに飲まれまいと咳払いをすると真助は美琴に向けて姫神ヒロムの事を話していく。

 

「ここにアイツは来てない。厳密に言うならここには妖刀探しってオレの独断で来てるからヒロムが知る術はない」

(まぁ、ファウストが報告してしまったら話は別だが……)

 

「そ、そうなのか……。それは残念だ。

一度会って手合わせを願いたかったのに」

「ヒロムと戦いたいのか?」

「いや、私は強くなるために《天獄》に加入したいんだ。だから《天獄》のリーダーである姫神ヒロムに会って……」

 

 やめとけ、と真助は美琴の言葉を遮るように冷たく言うと背を向けるなり移動しようとし、移動しようと歩を進めながら真助は彼女の言葉について意見を述べていく。

 

「アレはお遊戯とか仲良しごっこで集まってるわけじゃない。それぞれが譲れないものを秘めているからこそあそこに集まり、そしてその中心にアイツが立っている。憧れや理想なんかで入れるような所じゃねぇ。アイツの覚悟と決意を背負える人間だけが集まるところだ」

 

「私も遊びで入りたいわけじゃない。自分の力を試すために彼と手合わせをしたかったんだ」

「ならその辺の賞金首で当たりを引け。アイツは今色々忙しい、オマエの個人的な欲求のために付き合う余裕はないんだよ」

「だけど……

「くどい。素直に諦めろ。女だようと聞き分けのない相手ならオレは容赦しない。これ以上同じことを口にするならオレが斬り倒してやる。それを理解した上で次の言葉を話せ」

 

 真助の言葉で緊張感が走る中で言葉を口にしたくても口に出来ない美琴。美琴が何も言わずにいると真助は歩を止めることなくその場を去ろうとするが、美琴は何か思い出したかのように走ると真助の前に立って彼にあることを話し出した。

 

「鬼月真助、新しい刀を探してるならアテを紹介できる」

「あん?オレは妖刀探してるんだが……」

 

「その妖刀を知ってるかもしれないんだよ。この辺に暮らしてる刀鍛冶がいるらしいのだけど名前はたしか……村正って言ってたわ。少し前に会った時に刀鍛冶だって自己紹介してたからもしかしたらアンタの役に立てるんじゃない?」

 

「……ッ……!!」

 

 美琴の口から出た『村正』の名前。その名を聞いた真助は思わず足を止め、背を向けていた美琴の方へと振り向くと少し間を置いた後、彼女に対してある質問を発した。

 

「聞き忘れてたんだが……さっきの男から何を聞こうとしてた?」

「え?」

 

「村正のことを気になるし聞きたいのは確かだが、オレとしてはそれ以上にオマエが《斬鬼会》のあの男から情報を得ようとしてたかが気になってたことを思い出した。オマエに道案内をさせる前に……教えてもらおうか?」


 

 

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