十四斬
西門の肩書きを語り、砕千を名乗る大剣を担いだ男は名乗ると担いだ大剣を右手で軽々と持ちながら構えると走り出して真助に攻撃しようと動き始め、敵が動き始めると真助は首を鳴らすなり拳を構え迎え撃とうとした。
(見た通りならコイツはさっきの矢男とは違って敵を翻弄するとかの知恵使うよりは力押しで来るはずだ。コイツからも微かに感じ取れる妖刀の気配……怪しむならあの軍刀だが、その軍刀よりも前にあの大剣を何とかしないとな)
「どらぁ!!」
妖刀の存在を探ろうとする真助を倒そうと砕千は大剣を振り上げながら真助へと接近すると勢いよく振り下ろし、大剣が振り下ろされる瞬間に真助は大きく右へと飛んで大剣の凶刃から逃れる。が、真助が躱した大剣は勢いそのままに地面に叩きつけられると叩きつけられた面を大きく抉り削り、さらに振り下ろされた際の勢いが強い衝撃を生み出して砕千の前方へと勢いよく飛ばされ、軌道上にある建屋を跡形もなく粉砕してしまう。
「マジか……」
(馬鹿力にも限度があるだろ……!!地面抉るだけならまだしも振り下ろした勢いを殺すことなく衝撃に変えて飛ばすとか化け物かよ!!)
規格外の怪力を発揮する砕千に驚かされる真助は敵を警戒して死角に回ろうとする……が、真助が自らの死角に回ろうとするのを察した砕千は大剣を両手で持つなり勢いよく回転するかのように薙ぎ振るい、大剣が円を描くように力強く振られると砕千の周囲全方向へ衝撃が飛ばされる。
「嘘だろ!?」
予想すらしていなかった砕千の全方位攻撃に驚きの言葉が口から出た真助は慌てて地面を強く蹴って高く飛んで逃げようとし、間一髪で回避の判断が間に合った真助が高く飛ぶとその下を衝撃は通り過ぎ、そして全方位攻撃となった衝撃は次々に彼岸村の建屋を薙ぎ払っていく。
「怪力通り越してインチキだろ……!!」
(正面は大剣の得意領域故に今のまま接近しても回避を強いられるだけだってのに死角に回り込もうとしたら隙のない全方位攻撃に切り替えるとか……矢男よりは強いとは言っていたが、コイツの強さは矢男なんかとは比較にならねぇ!!)
砕千の全方位攻撃を高く飛ぶことで躱した真助は砕千の力が如何に強いかを思い知らされながら着地し、着地した真助は現状でどう攻めればいいかを思考しようとしていた。すると砕千は突然大剣を地面に突き刺すと真助が彼岸村へ来てから襲撃してその後ずっと気絶している男に近づくとその男が腰に携えている刀を抜くなり真助の方へと投げ、投げられた刀は勢いよく真助のもとへと飛んでいくと彼の少し前の地面に突き刺さるように着地する。
「!?」
突然の砕千の行動に戸惑いを隠せない真助。そんな真助が戸惑っていると砕千は先程地面に突き刺した大剣を引き抜き装備し直し、大剣を構えた砕千は真助に告げる。
「使え」
「何?」
「丸腰相手は倒してもつまらないからな。それ使わせたらどっちも武器持ってることになって平等だろ?」
「平等、か。ついさっきお仲間を吹っ飛ばして口封じした人間とは思えない言葉選びだな」
「口封じのつもりはねぇよ。単にオレは阻止してやったんだぜ?オマエが誤った情報を鵜呑みにするのをな」
「誤った情報だと?」
砕千の言葉を思わず聞き返してしまう真助。仕方の無いことだ。何せ今砕千は敵であるはずの真助が先程衝撃により吹き飛ばされた男から間違った情報を教えられそうになっていたとでも言いたげな旨の言い方をしているのだ。
事実と異なるにしても敵にそれを明かすなんて明らかにおかしい。砕千の言葉を警戒しながらも自らが問い答えさせた情報の何が間違いなのか気になる真助は砕千が投げて地面に刺してきた刀を抜いて手に持ち構えながら真意を問おうとした。
「オマエの言う誤った情報ってのは何だ?東西南北に関連した名を与えられる幹部のことか?妖刀の封印を解いて集めてる理由のことか?それとも……オレが所持していた《血海》が壊れたことで生まれた妖刀の欠片を探してることか?」
「その辺は訂正しなくても構わないが、無から有を生み出すってところは少し違う」
「オレが妖刀を一時的に生み出したやり方のことか?」
「そう、それだな。無から有を生み出すなんてのは理解が追いつかない人間の言葉、下っ端風情が考えそうな短絡的な答えだ。正しくは……壊れて復元不可能な状態の妖刀を更なる力を与えながら復元した、だ。本来なら復元不可能な状態になれば別のもので補う他ないのにオマエは復元するだけでなく新たな力を与えて進化させたんだ。ただでさえ優れた力を持つ妖刀を進化させるだけの力がオマエにはある……その一端を担ってるのが《血海》だと考えられてるのさ」
「《血海》の欠片があれば妖刀の復元と進化を成し遂げられるかもってか?」
「まぁ、そういう事だ。
持ってるなら出せよ……まぁ、出さないなら出さないで殺して回収するだけだ!!」
妖刀《血海》の欠片を探す真の理由を明かした砕千は大剣を強く握ると動き出し、自身の持つ欠片を奪われるわけにはいかない真助は敵に施される形で手にした刀を構えると迎え撃つべく動き出す。
「殺される前に……殺してやるよ!!」




