十三斬
現在……
彼岸村
《斬鬼会》の男2人に攻撃を仕掛けた真助。突然の真助で攻撃に男2人は迎え撃つことも逃げることも出来ずに為す術なく倒され、身動きが自由に取れない程度の傷を受けて倒れていた。
倒れる男2人のうち片方は気を失ってるらしく微かに呼吸をしてるだけの静かな状態だったが、もう片方は意識がはっきりとあるらしく真助の攻撃で受けた傷による痛みに耐えようと呼吸が荒くなっていた。
そんな男の胸ぐらを真助は掴むなり無理やり立ち上がらせ、自立が難しいであろう負傷した男がふらついている状態を確認した真助は胸ぐらを掴んだ状態のままで男に質問していく。
「……オマエらの大将は誰だ?何で妖刀《血海》の欠片を探している?」
「し、知ら……ねぇ……!!」
「しらを切るつもりならやめとけ……オレは今、虫の居所が悪い。
返答次第では指の数本、腕の1本は引きちぎるつもりだ。無駄にちぎられたくないなら答えろ……オマエらの大将はどこのどいつだ?」
手段を選んではいられない、最悪の場合は男の指か腕を引きちぎると脅しながら背後の敵について吐かせようとする真助。真助の脅しに男は彼から受けた負傷、彼の気迫から冗談でないことを理解したのか声を震わせながら真助の問いに答えていく。
「あ……あの方の顔は見た事はねぇ。声もボイスチェンジャーか何かで弄ってるような機械みたいなのしか聞いたことねぇんだ……」
「そいつの名前は?」
「名前は……オレたちみたいな下っ端には明かされない……。
あの方が信用できると判断され幹部に選ばれた人間だけが名を聞かされる……」
「幹部……それは東門とかの肩書きを持つ男のことか?」
東門、それは真助が少し前に倒した矢如月が口にしていたものだ。真助はそれを耳にした時は何も思わなかったのだが、今のこの男の話から何か関係があると感じて問うたのだ。
案の定、《斬鬼会》の上に立つ『あの方』と呼ばれる者が名を明かす幹部と関係があるらしく男は震えながら小さく頷くと真助に矢如月が語ったそれについて話していく。
「あの方が信頼しておられる幹部の地位にある者は東門、西門、南門、北門のそれぞれの肩書きを言い渡される。そして肩書きを言い渡された者は証として妖刀を授けられる」
「都合のいいように力を使えるように打ち直された妖刀をか?」
「そ、そうだ……!!」
「それについても聞きたいんだが……何で妖刀を打ち直す?」
何故《斬鬼会》は封印された妖刀を集め、そして集めた妖刀を破壊して様々な妖刀の欠片と組み合わせて打ち直すのか。矢如月は使い手に使いやすいようにという理由を明かしたが、真助は他に理由があるとして男から聞き出そうとした。
真助に問われた男は少し間を置くと真助を見ながら彼が尋ねた事の真相を知る限りの範囲で明かしていく。
「お、オマエが……始まりなんだ……。異なる刀に妖刀の欠片を同化させて新たな刀を生み出す……オマエがそれを成し遂げたからあの方はその方法に独自のやり方でたどり着こうとした……それが妖刀の打ち直しだ」
「どういうことだ?」
「オマエが成し遂げたことは……無から有を生み出す本来はありえないことだとあの方は語っていた……。数多の剣聖が手にした妖刀は多くの怨念や呪いが鍛冶師により器となる刀に込めたことで生まれたもの、だがオマエが新たに生み出した妖刀は本来はありえない無から生まれたものだ」
「無から生まれた?妖刀の欠片と霊刀を重ねて妖刀に進化させたんだから無から有を生み出すってのは違うだろ?」
「いいや、あっている。何故なら……」
真助の言葉について訂正しようと男が何か言おうとしたその時だった。突然烈風のような強い衝撃が飛んできて男を襲い、衝撃に襲われた男は胸ぐらを掴む真助の手から解放されるように吹き飛ばされて倒れてしまう。
どこから飛んできた?
男が語ろうとした言葉を遮られた真助は男を吹き飛ばした衝撃が飛んできた方向を向くと構え、真助が構えると向いたその方向から身の丈はある巨大な剣を担いだ男が歩いてくる。
矢如月よりは少し若いかという程度の見た目の男、腰には軍刀を携行しており、所々破れた和装に身を包んだ銀髪の男は不敵な笑みを浮かべると真助に話しかける。
「遠路はるばるようこそ、彼岸村へ。何もねぇだろ?
人の姿も気配もない……つまらないよな?」
「オマエ、《斬鬼会》の……幹部か?」
「なんでそう思った?」
「矢男と同じにおいがするからだ」
「矢男?矢如月のことか?
アイツ、弱かったろ?《飛幽》を授けられた東門の立場だってのに妖刀がなきゃ能力もない戦闘経験のある人間程度だったから手応えなんてなかっただろ?」
「その言い方なら……オマエは強いってことでいいよな?」
「矢如月よりは遥かに強いってことは保証してやるよ。西門の砕千……祭りを始めるぜ!!」




