表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/71

十二斬


 ……少し過去を話そう

 

 

 オレが妖刀《血海》と出会ったのは偶然だった。

 

 今から5年前、11歳だったオレはこの頃から自分の強さを高めることを目的に自分よりも体格の大きく強い相手を見つけては挑んで倒していた。時には躊躇いなく殺しもした。

 

 幼少期にオレの母親は何者かに金品を奪われた果てに惨殺され、父親もその2年後に山賊に殺された。残されたオレは住んでいた家を誰かに焼かれたことで住処を失い、気がつけば野盗のような生活を繰り広げることになっていた。

 

 当時の行いを悪い事だとは思っていたが、強さの為に仕方の無いことだと割り切るために『強さを高めるために強いやつを倒す』という思考に切り替えた。

 

 そんな生活を続けていた11歳の夏、オレは食料を頂戴すべく忍び込んだ金持ちの屋敷で殺人現場を目撃した。

 

 金持ちの夫婦が体を真っ二つに斬られて殺害され、その夫婦の子供と思われる2人の息子は四肢を斬られて動けぬ状態で多量の血を流し失血死しており、1人いた娘は大量の血を流して倒れていた。

 

 最悪の現場に居合わせることになってしまったオレ、そんなオレに気づいた殺人鬼が持っていたのがオレの愛刀になる妖刀《血海》だった。

 

 当時のオレの手持ちは刃こぼれしたナイフだけ。赤黒い刀身を怪しく光らせる妖刀に適うことは不可能だというのはすぐ理解した。だが、自分が戦闘種族の血を受け継いでいると知っていたオレは逃げることは死ぬことと同じだと認識していた。だから逃げるなんて選択肢はなかった。

 

 やるからには本気で仕留める。勝って殺人鬼から奪えるものを奪う……そう考えていたが殺人鬼は突然血を吐くと妖刀を落とした。

 

 殺人鬼はオレにこの屋敷に住んでいた夫婦は近隣から金を騙し取っていた犯罪者だと教えられ、妖刀については別の場所で脱税を平然と行っていた悪人の家から盗んだものだと語った。そして妖刀である《血海》で人を殺める中で殺人鬼は持ち主に相応しくないとして拒絶されていたとも語られた。そんな殺人鬼はオレに告げた。

 

「小僧……妖刀を手にしたオレには分かる……。この妖刀は、オマエを求めている……」

 

 殺人鬼はその言葉を最後に息を引き取り、オレは殺人鬼の言葉を奪われる真に受けたとかではないが妖刀を……《血海》を頂戴して屋敷を去った。これが《血海》との出会いと入手について……

 

 そこからは少し世界観が変わった。

まるで生まれた時からずっと時を過ごしてきたかのように妖刀はオレに馴染み、オレは自然とこの妖刀の力を最初から知らされていたかのように使いこなせていた。ともあれ、強くなっていることを実感する中で無闇に人を殺すのは何か違うことを感じたオレはいつの間にか警察ですら手に負えないような悪人に裁きを与えるかのような真似事を始めていた。

 

 弱いやつはどうでもよかった。ただ、オレよりも強そうな悪人を襲ってオレの強さの糧として殺していた。

 

 そんなオレの姿を目撃したどこかの誰かが鬼のように狂った剣士が暴れていると噂したことで『狂鬼』という異名で広められていくようになった。

 

 

 手に入れてから2年が経った頃……海岸近くを根城にしていた真夜中、奇襲を受けた。手製の爆弾による爆撃、下手くそな射撃で襲われるもオレは躱し、オレは奇襲を仕掛けてきた野郎と邂逅した。

 

 奇襲を仕掛けてきたのは妖刀を手に入れる前に数ヶ月ほど生活を共にした同い歳くらいの男だった。そいつは誰かに家を襲われ親を殺され、世間からは親殺しとして犯罪者扱いされたことでオレと同じように陽の当たらぬ裏世界で生活を強いられたやつだった。妖刀を得る少し前に別れて以降会うことは無かったこの男に久しぶりに会った……が、オレは親の仇だと言われた。

 

 この男の親は脱税をしたとして何者かに告発され、身を隠すべくどこかに逃げようとした先で不審者に襲われ殺害されたという。そして不審者は男の親がどこかで入手した妖刀を持ち出した、と……

 

 馬鹿でもない限り察しがついた。

 

 オレが妖刀を手にした日に目の前で息絶えた殺人鬼が男の人生を壊しその親を殺した張本人であり、オレはその殺人鬼から妖刀を頂戴したことでそれを知らぬ一時生活を共にした男に仇と認識されたのだと。

 

「待て、オレは違う!!話を聞け!!」

「誰かの命を奪えば必ず誰かに奪われる……その理を思い知れ!!」

 

 男はオレを殺すべく本気で襲ってきた。オレは言い訳をする気もなかった。ただ、悪人を殺し続けるオレと同じように手を汚さぬようにする他ないと思い、オレは男を……妖刀で斬った。海岸近くでの戦闘だったため男は斬られた後海に落ち、数日後少し離れた浜辺で男の遺体が流れ着いているのを確認した。

 

 妖刀を手にした経緯を説明すればどうなったんだろうと思いながらも過ぎたことはどうにもならないとオレは男の……一時は苦楽を共にした友人たる弥勒のそばに花を添えてその場を去った……

 

 

 月日は流れて去年の春頃、オレはヒロムと出会い戦い、アイツの仲間になった。その直後、オレは強大な力を持った敵に《血海》を破壊された……

 

 妖刀を失ったその時、オレは破壊されながらも残った欠片を回収したわけだが……

 

 欠片を回収出来るのはその時しかなかった。あの時、あの場に《斬鬼会》の人間がいたのか?それとも……《血海》を手にした時からオレは誰かの手の上で踊らされていたのか……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ