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一斬


 世の中、悪事を働くやつは後を絶たねぇもんだ。

 

 きっかけなんて多分些細なことだ。

 

 歩いててぶつかったのに謝らなかったとか、悪口を言われたとか、馬鹿にされたとか、頭を叩かれたとか、大切な物を盗まれたとか、挙げ始めたらキリがない。

 

 けど、今の世の中ではそんなことをきっかけに悪意を抱き悪事を働く側の人間になるようなやつがいるのは確かな事だ。

 

 その悪事も一時の感情に流されて起きることがほとんどだからタチが悪いことこの上ない。1番厄介なのは……それが止まらずに肥大化することだ。

 

 謝らなかったから殴った、悪口を言われたからやり返した、頭を叩かれたから怪我をさせた、大切な物を盗まれたから奪ってやった……悪意を抱いたきっかけに対して気持ちを晴らせた時、そこで我に返る者もいればその先に踏み込むものもいる。それが止まらなくなるとやがて悪意そのものとなり、犯罪者となる。

 

 奪い壊し潰す側、そうなってしまえば心は歪んだも同然だ。

 

 

 とくに力を持ったやつがこうなると手のつけようがないところにまで育つ危険がある。そうなれば、命が容易く奪われ、平和が壊される……

 

 

 例外もある。たとえば……自分の強さを高めるために強い相手を見つけては倒し続ける狂人のような人間だ。

 

 

 そう、それがオレ……鬼月真助だ

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 12月の中旬からさしかかろうとしたある日。世間ではある事件について騒がれていたがこの時には関係の無いこと……

 

 都市部から大きく離れ、過疎化が進んでいると言い切っても構わないであろう状態にまで活気が衰退している田舎に分類されるべき状態にある地域……

  

 今や稼働してる形跡のない工場の資材置き場の中を2人の男が走っていた。

 

 

「ど、どうなってやがる!?

なんで取引の情報が漏れてんだよ!?」

「知らねぇよ!!

とにかくやつらを撒くぞ!!こんなところで捕まったりしたら……兄貴に殺される!!」

 

 何やら慌てて走る2人の男。息を切らし体力も限界に近いはずだが何かを恐れているからかそんなことを気にかけることもせずに足をとめず走り続けていた。

 

 何から逃れようとしてるかは分からない、だが何かを恐れている。そんな2人の男が資材置き場の中を走り入ってきた扉とは別の出入口から抜け出そうとした……その時だった。

 

 突然何かが炸裂するような音が外で響くと資材置き場の天井が崩落し、崩落した天井の瓦礫が2人の男が通ろうと目指した出入口を塞いでしまう。

 

 出入口が瓦礫で塞がれると2人の男は走る足を止めるしかなく立ち止まってしまい、2人の男が立ち止まると崩落した天井の先、つまりは資材置き場の屋根の上から誰かが飛んで降りて現れる。

 

 少しボサボサの茶髪、もう冬になるというのに季節感の無さを感じ取らせる袖のない黒色の道着のような衣服を着た高校生くらいの少年。腰には刀を携行し、右の頬に黒い痣のようものを有した少年は着地して2人の男の前に立つと彼らを見ながら話し始める。

 

「鬼ごっこはお終いでいいよな?そろそろ飽きてきたんだけど……他の遊びはないのか?」

 

 

「こ、このガキ……!!」

「何で追いつけたんだよ……!?」

 

「……オッサンが遅すぎんだろ。あまりに遅すぎて遊んでんのか遊ばれてんのか分からなくなりそうになったからな。どうしてくれんだよ?」

 

「し、知るか!!」

「大体オマエには関係ないことだろ!!部外者のくせに……何で邪魔すんだよ!!」

 

「理由なんて関係ねぇよ。とりあえず……手頃な相手を求めてただけだからな!!」

 

 少年は腰に携行した刀を勢いよく抜いて右手に構えると走り出し、少年が走り出すと2人の男は携帯していたとされる銃器を構えて少年に狙いを定め、引き金を引くと弾丸を一斉に放っていく。

 

 放たれる弾丸、本来なら視認することなど困難なはずなのだが少年はそれが見えているらしく刀を上手く振ることで全て切り払い、弾丸全てを見事な剣技で捌いた少年は地を強く蹴って勢いをつけると一気に男1人との距離を詰め、距離を詰められた男が驚きにより判断が遅れると少年は躊躇うことなく刀を振ると共に男の身体を抉るような傷を与える。

 

「あっ……」

 

 まず1人、少年はそう呟きながら刀を素早く振って刀身についた血を払い飛ばし、少年が血を払うと斬られた男は血を流しながら仰向けになるように背中から倒れていく。

 

「あ、ああああ!!」

 

 仲間が倒されたことにより錯乱したであろうもう1人の男は少年に向けて銃器を構えると狙いを定めることなどせずに叫びながら無闇矢鱈に発砲していくが、少年は当然のように刀で弾を切り払いながら男の様子を観察するような目を向ける。

 

 男が無闇矢鱈に乱射する一方で当たり前のように刀を上手く使いながら全て切り払う少年。すると流れを止めるかのように男の銃器が弾を放つのを止めてしまう。

 

「何でだ、何でだ!!」

 

 弾が放たれず焦る男、弾を放たなくなった銃器をよく見ると空の薬莢が詰まっており、それが原因で機能しなくなったのだと少年は察するが、取り乱す男はそんなことに気づけるほどの冷静さはなく単純に早く治れと言わんばかりに銃器を手で叩くことしかしなかった。

 

「やれやれだな」

 

 少年は男の取り乱す様子に呆れながらため息をつくと刀を高速で振り、刀が振られるとその勢いにより生み出された斬撃が男に向かって飛んでいき、斬撃は男に迫ると先ず銃器を両断し、そして男が逃げる間も与えることなく直撃すると右肩から腹部にかけてえぐるような傷を負わせていく。

 

「あぁぁぁぁぁっ!!」

 

 斬撃に襲われた男は痛みにより悲鳴を上げながら倒れ、痛みを何とかしようと左手で傷口を押さえるがそんなことをしても意味はなく血が流れていく。

 

 男が痛みに苦しむ中、少年は男に近づくと刀を突きつけ、刀を突きつけられた男は痛みを耐える中で涙を浮かべながら少年を睨むと彼に問う。

 

「どこの誰に……雇われた!?」

 

「雇われたってのは?」

「とぼけんな……!!

兄貴が最近……嗅ぎ回ってるやつがいるって……!!

オマエのことなんだろ……!!」

 

「知らん。それより、斬られたいか斬られたくないか選べ」

「答えろ……!!」

 

「……どうでもいい」

 

 少年は男の問いに答えるようなことはしようとせずに突きつけた刀を振り上げ、そして振り上げた刀を男の首に向けて勢いよく振り下ろす。

 

「や、やめろぉぉぉぉ!!」

 

 振り下ろされた刀は男の首を切断しようと迫り、命の危機を感じ取った男はみっともなく命乞いをするかのように叫んでしまう。

 

 が……

 

 少年の振り下ろした刀は男の首を切り落とそうとする寸前でその刀身が砕け散ってしまい、刀身が砕け散り損失されたことにより少年の一振が結果を残すことなく終わってしまう。

 

 刀が壊れたことで男の首は斬られずに済んだが、助かった男は死の恐怖に晒されたからか負傷した痛みなど忘れたかのように泡を吹いて気絶していた。

 

「……こんなもんか」

 

 男の気絶を確認した少年は壊れた刀を投げ捨て、少年はその場に座り込むと深いため息をついてしまう。そして少年は何やら黒い欠片のようなものを取り出すとそれを見ながら呟いてしまう。

 

 

「……やっぱ、オレの手に馴染む刀はオマエしかないよな」

 

 欠片に向けて呟く少年。その少年の言葉にはどのような意味があるのか……

 

 そして男たちが口にしていた『兄貴』とは何者なのか……

 

 少年は……鬼月真助はこの先どうなるのか……

 

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