腑抜け
遅れてごめんなさい。そして一言:うーん、雰囲気変わったな。
<5話:腑抜け>
金色に輝く魔法陣の中心に、目を瞑る、静謐な雰囲気を湛える美しい女性。まるで彫刻か何かのように微動だにしていない。
「女神様」
そんな不思議な空間に唐突に現れた、白い翼を持ったこれまた美しい女性が、今、目を開けた美女に話しかけた。
「ああ、熾天使レルジョアですか。何かありましたか?」
この空間の雰囲気に負けない美しさに熾天使レルジョアは敬意を抱いた
「此度の勇者召喚の儀は、失敗してしまいました。」
「……なぜでしょうか?」
失敗したというのに叱らない姿にレルジョアは敬意を抱いた。
「どうやら、儀を行った者共のいざこざが大元の原因のようです。」
「魔王城は結界で封鎖しましたか?」
「もちろんです。」
即座にすべきことに気付いた女神様の深謀遠慮に敬意を抱いた。
「また魔神のような存在を許すわけにはいきませんからね。」
「理解しております。」
「勇者の魂は輪廻の輪から外れております。すぐに探し出しなさい。」
「もう既に捜索のため天使達を派遣しております。」
「それならよいのです。迅速な対応に感謝いたします。」
感謝をもらってしまいレルジョアは空を飛ぶような心地になった。
「当然のことです。」
熾天使レルジョアは顔色をピクリとも変えずにそう言った。
「――あと少しでクエストの小規模なゴブリンの巣穴にたどり着くぞ。」
「肩慣らしも済んだし。ちゃっちゃと片付けようぜ。」
森の中を進む四人の集団があった。
「ダリトさん油断は禁物ですよ。」
「俺より若い奴に言われたくないな。」
「関係ありません!」
武装しているが、統一感がない。彼らは冒険者のパーティーだ。
低レベル層でも狩れるモンスターしか出てこないこの辺りの地域には釣り合わないレベルの冒険者で構成されている。
彼らは冒険者ギルドに依頼されてこの地域に留まっている。
なぜならば、特殊な進化をした魔物に備えてだ。
最近、現れたのは、およそ10年前。ゴブリン・ロードの出現だ。
その際は周囲のゴブリンの集落をすべてまとめ、ここケイル共和国の唯一の都市に攻めてきた。
偶然その都市に、若き英雄と名高い冒険者が滞在していたので何とかなったらしいが、そのことから冒険者ギルドは危機感を持っている。
と、リーダーであるカルロは振り返っていた。
こういう時、無駄ともいえる思考をしてしまうのは緊張を和らげるためか。
「おい、カルロまたボーっとしてんな、集中しろよ。」
片手斧と小盾を装備する姿は山賊の親玉みたいだが、ダリトは冒険者のようだ。
「お前が言えたことではないだろう。」
「本当に、そうなんですよ。」
「ええ、ルチアさんの言う通りです。」
長杖を持つローブ姿の魔法使い風の少女はルチアというらしい。さっきからダリトを説教している。
そして後から賛同したのは、修道服を着て、短杖を持つ女性だ。
「そして、最後のリーダー然とした奴がカルロと言うのか...。」
自分はその集団から少し離れた所から聞き耳を立てている。
最後の蔓を縛り終えて、土を払いつつ立ち上がる。
やっぱり遠距離から攻撃しないと勝ち目がない。しかし、弓や銃なんてものはないからどうするのかというと、投石だ。
一抱え程の石を丸太を運ぶのに使っていた蔓で、荷物を運ぶときにするような、十字になる結び方をして、ハンマー投げのように投げれるようにしてみた。
蔓が切れるのが怖いので、縄のように複数の蔓をねじって使っている。
さあて、準備は終わったし、覚悟が決まったわけではないが、なんとかなるだろう。
火を放たれても大丈夫なように、自分達の家の周囲の防壁には水を掛けてもらっている。
火は嫌いだ。
「おい、クエストの巣穴ってあれのことか?」
「あれは...。」
なんだか、驚いている。
これ、明らかな隙だよな。
投石を開始するか一瞬悩む。どうにか話し合いで解決できないだろうか、と。
だが、この迷いが自分の運命を大きく変えた、と思う。
ゴブリンが一人入り口から姿を現した。水を木の端材で作った器に入れている。斧で粗くえぐった物だが結構いい感じなのだ。
「カルロさん、攻撃するべきです。」
「あ...ああ。そうだな。イレギュラーが無ければ負けるはずがない、イレギュラーがあってもなんとでもなるはずだ。」
「わかりました...【短火弾】」
十秒にも満たない速度で攻撃が開始されてしまった。
一人のゴブリンが一瞬で火に包まれる。
甲高い悲鳴を上げながらもがき苦しむが火は消えない。
すぐに黒く焦げてしまう。
人に比べて小さな体が地面に転がった。
その時心が分からなくなった、
混乱と冷静と怒りと落ち着きと、様々な矛盾した感情が駆け巡る。
何が起きた?自分に問いかける。考えがまとまらない。
「があぁあぁぁぁぁぁ――」
死んだのか自分のせいで?
後悔か?古傷か?
何がしたい?何をしている?そもそも自分は何なのか?
――もう、どうでもいいかもしれない。
地を蹴り前に進む。
読んでいただきありがとうございます。




